労働、仕事、現代

アーレントは『人間の条件』で、人間の行為を労働(labour)、仕事(work)、活動(action)の3つに分けた。

労働とは、簡単に消費されてしまうものを作る行為である。アーレント自身、私がオムレツを作ることは労働で、タイプライターを打つことは仕事であると述べていたらしい。

仕事とは、耐久性のある物を創造することである。それはアーレントにとって、タイプライターで作成したものを本にまとめ、世に出すことである。

アーレントは、古代ギリシア時代には労働よりも仕事のほうに価値があったのだと述べる。しかし現代ではその地位が逆転し、労働が人間の行為の大半を占めていると言う。

『人間の条件』出版後、70年ほど経ったが、事態は仕事の労働化にあるように思われる。

SNSの登場により多くの人が文章を残すことができるようになっている。それを、人は「仕事」をしているのだと言えるかもしれない。しかし本当にそうなのだろうか。ネット上のみならず、紙媒体であっても、世の中には仕事として残した文章で溢れかえっている。SNSで人気になれば本が書け、それが話題本としてもてはやされる。ただし、それも束の間だけである。

簡単に仕事ができてしまうからこそ、それを労働物として消費しているのではないだろうか。労働からの脱却は、ただ仕事の復活のみで達成されるわけではなさそうだ。

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