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 知っているのに知らぬふり?有名な事件のハズなんだけど。

 「ブレンダと呼ばれた少年」て本がある。 2000年に出版されるとベストセラーになり、センセーションを巻き起こした。 いままで何度かツイしてきたけど、ちょっと詳しく紹介したほうがいいかなと・・・

 この本はジョン・マネーという、一時期は性科学の権威とみなされてた学者の狂気の人体実験の犠牲になったひとによる告発がその内容。
 マネーについて上野千鶴子はこう書いている。

 その中でセックスとジェンダーのずれを問題化したのは、ジョン・マネーとパトリシア・タッカーの『性の署名』[Money&Tucker 1975=1979]である。ジョンズ・ホプキンズ大学の性診療の外来をうけもっていたふたりは、半陰陽や性転換希望者などの患者を相手にして、ジェンダーがセックスから独立していることをつきとめた。 「性自認」は二歳までの言語獲得期に形成される。ホルモンと同じく、この臨界期を過ぎるとその後は変化しない。
マネーとタッカーの業績は、セックスとジェンダーのずれを指摘したにとどまらない。もっと重要なことに、かれらの仕事は、セックスがジェンダーを決定するという生物学的還元説を否定した。(差違の政治学)

 まあそもそもジェンダーって言葉をひろめたのがこのマネー先生らしいんだけど。生物学的性差セックスと文化社会的なジェンダーがあって、ジェンダーのほうが重要だっていう考え方。
 上野の言及した「性の署名」って本の中に、ある少年の話がでてくる。 うまれてすぐ、割礼の手術に失敗してペニスのほとんどを失ってしまった少年(双子の一人)がいた。 当時、人気抜群でテレビでも有名だったマネー先生に両親は相談した。
 マネー先生、両親に「この子は不完全な男として生きるより、女の子として育てた方が幸せになれる。妊娠はできないけど、それ以外は完璧な女になれる」 両親はマネーに子供の治療をまかせた。
 この子は完璧な女の子として成長し、幸せになった・・・とマネーは本に書いた。彼の名声はますます高くなった。
 
 もちろん、ブレンダと呼ばれた少年ってのがこの患者。彼は驚くべき告発をした。 「みんながみんな、おれに言うんだ。おまえは女の子だって。だけど、おれは自分のことを女の子だとは感じられなかったんだ。とにかくしっくりこないんだよ。で、おれは思ったんだ。何かが間違ってるって」

 マネーは成長期にあったブレンダとその家族に、膣を造成する手術を受け、女性としての外観を完成させるように迫っていた。しかしブレンダ自身が、ジョンズ・ホプキンス病院を訪れることやマネーに会うことに対して猛烈に抵抗し、自殺をほのめかすほどであったため、家族は通院をやめ、地元でカウンセリングを受けた。

  結局彼は2004年には38歳で自殺しちゃうわけだけど・・・アメリカでベストセラーになったこの本の日本語版はぜんぜん売れなかった。まあ版元が小さかったからだって説もある。 ところが2005年に扶桑社が版権を買って復刻。 これにフェミさんたちが反応した。

 2006年にこんな本が出てる。 ここで「ブレンダと呼ばれた少年」はフェミニズムに対する攻撃の材料として使われた、という文脈でとりあげられてる。

 あきらかに反フェミって立場からの批判はこんなかんじ。

 暴かれた「ジェンダー論の権威」の虚構

http://www.seisaku-center.net/node/285

  親フェミ(と思う)の立場からの批判。 「むろん、いち早く誤解に気づき、まともにマネーを批判していたというのであればそれは立派です。が、実際には単に「逃げ出した」、更には上野師匠すらもが「逃げ遅れた」というのが実態に近いでしょう。」

 

 さはさはもこの本はフェミニズムに対する「不当な」攻撃に利用された、とおもう。 でも不当な部分だけとりあげて被害者ぶってねーか?との思いがつよい。 自己批判しなくていいのか?
 トラジェン問題は欧米じゃとんでもないことになってる。 未成年者に対する、不可逆的な手術とか。 その人数がハンパじゃない。 いったい何人のブレンダがいるんだか。
 日本のフェミの主流がトラジェンのこの危険な部分について沈黙してるのはむかし自己批判できなかったからじゃないのか。
 トラジェンによるフェミ攻撃に反撃できないのも、沈黙してるのもおなじ理由なんじゃないのか。 一部かもしれないが、フェミによる朝田理論の武器化は批判すべきじゃなかったか。

 とまあそんなことをかなり前から考えてた。
 というわけでした。おわり。

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