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いま起きている事を理解するために③フランス革命から一気に1970年代まで


 1789年。フランス革命のとき。さいしょの国民議会で、議長席からみて右に王党派、左にジャコバン派がすわってた。これが右翼・左翼の語源と言われている。 この時の定義を使うなら、いま世界にどんだけ右翼の政治結社があるんだろーか。
 アメリカの共和党なんてもちろん右翼のはずがない。 もともとアメリカに王様はいなかった。 いまある王制をまもれってのが保守。むかしあった王制を復活させろってのが復古。いちども存在しなかった王制をいまから作れってのはなんていえばいいのか(笑)
 まあ言葉の意味は語源で決まるわけじゃない。 ある時、どんな使われ方をしているのかで決まる。 これがソシュールの共時性の言語学。 いまの言語学の基本。
 フランス革命では王権と自由権が対立して、自由権が勝った。これはブルジョワの権利だったから、私有財産権(経済的自由権)が重要だった。 王権ないのが当たり前になると、こんどはこの自由権が問題になった。
 対立する社会権ってのが出てきた。日本だと、労働三権とかね。 まあ資本主義が発達して階級が発生すれば自由権ばっかじゃ、そりゃ社会がもたない。 近代ヨーロッパの政治・経済・思想はこの自由権と社会権の対立と調整を最大の軸にしてきた。
 そうなると今度は自由権派が右翼、社会権派が左翼になったわけだ。 まあ西欧じゃ社会民主主義ってのが当たり前だから、程度の問題になる。 経済的自由権は、精神的自由や身体の自由とちがって、国家による制約・介入を認める。 どの程度、認めるのかと。
 資本家に搾取・抑圧される労働者の側に立つのが左翼。じゃあ帝国主義による植民地支配についてはどうか。 とうぜん反帝国主義・植民地解放の側に立つのが左翼、と言っていいのか。 ここに厄介な問題がある。
 エンゲルスは「イギリスにおける労働者階級の問題」最終版の序盤で「初版発行時には世界一戦闘的だったイギリスの労働者は、世界一戦わない労働者になってしまった」と書いた。マルクスが死んだ後の事だ。 何があったのか。
 レーニンは主著「帝国主義」のなかで労働貴族論を展開してる。 「19世紀後半以降、イギリスをはじめとする発達した資本主義諸国の独占資本は、内外にわたる経済的・政治的特権を通じて膨大な特別超過利潤を獲し、・・・上層労働者の経済的・社会的地位を向上させることができた。このようにして形成された労働貴族を基盤として労働官僚が、「労働運動の内部におけるブルジョアジーの真の手先、資本家階級の労働副官、改良主義と排外主義の真の伝達者」として機能することによってブルジョアジーの主要な社会的支柱」(レーニン)が確立されるに至った。 日本大百科全書(ニッポニカ)

 戦後、植民地はつぎつぎ独立した。先進国は高度経済成長を達成。旧植民地は第三世界とよばれた。 西側=第一世界、東側=第二世界ね。 第三世界諸国は政治的には独立したが、経済的には西側に支配され、低開発にとどまる国が多かった。発展途上国なんて言葉もあったね。
 戦後のこの体制は新植民地主義とよばれた。 新しい理論もうまれた。サミール・アミンの従属理論とか。資本主義国同士が結びつき、発展途上国を支配し、搾取しているとするもの。
 70年代に日本で頻発した爆弾テロ。 東アジア反日武装戦線ってのがいちばんハデだった。 この理論的・倫理的な根拠になったのが従属理論だった。
 つまり敵とすべき労働貴族が先進国ではごく少数ではなく、市民社会全体が帝国主義の補完物になったと。 まあもともと市民社会をどうとらえるかって問題もあったけど。
 
 まあ日本の70年代のこういう事件は直前に、いっとき滅茶苦茶盛り上がった学園紛争・全共闘運動があっちゅーまに雲散霧消しちゃったって背景も大きい。 連続内ゲバ殺人も始まったし。

 労働貴族の問題を考えるとき、かつての南アフリカ共和国、アパルトヘイトのもとでの白人労働者ってのはすげーわかりやすい例だ。世界で最高の生活水準は南アの白人労働者が達成した、なんて言われてた。
 南アで長く与党だったのは白人労働者の利益を代表する政党だった。 資本家はアパルトヘイトの緩和を主張する少数派だった。 わかりやすい話だ。 資本家としては白人に黒人と競争させて賃金をさげたかったのに、白人労働者がそれをさせなかったのだ。

つづく

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