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スパルタ看護師現る (13)

歩かねば!

声が大きくハキハキ話す看護師さんが病室にやって来た。

スポーツをしていました!という雰囲気の方。

嫌いでは無い、寧ろハキハキしていて憧れる。

歩けなかったって?痛いよねー。

と、こちらの気持ちに寄り添っている感じを出しながらも、

さぁ!立って歩くよ。

と、やる気満々。

私の年齢に近そうな看護師さん。

その元気すぎる姿に弱っている身としては少しだけ怯んだけれど、次回は必ず立ち上がろう、と決意していた私には、ぴったりな看護師さんだった。

しかし、困ったことに意気込みはあるけれど腹部の痛さに変化は無く、とても痛い。

寧ろ硬膜外麻酔が空になったのかスイッチを押しても効かず、痛みが増している気さえする。

ロキソニンを服用して効いてきた頃に再開された。

看護師さんから叱咤激励!?される中、何度も何度も体を起こす。

い、痛い。

立ち上がらなければ終わらない熱意を感じつつ、やっとのことで立ち上がることに成功した。

それと同時に痰が出た。

えっ!?

ずっと苦しかった呼吸が、すーっと通り体が楽になった。

立ち上がったからかもしれない。

よく分からないけど、立って良かった。

と、心の中でぶつぶつ言いながら達成感と共にベッドに横になろうとした。

すると、

さあ、足踏みして!

と看護師さん。

まだ続くの?少し休憩したい。

しかし、逆らえる雰囲気では無い。

痰が出たことで少し楽になった私は再び立ち上がると、よれよれと足踏みをした。

いい感じ。

と、笑顔の看護師さん。

この看護師さんは厳しいが、大袈裟に褒めてくれる。

しかも、大きな声で!
(これは少し恥ずかしい。)

しかし、おばさんになるとこんなにも大袈裟に褒められることは無い。

褒めてもらったことで俄然やる気になった私は、言われるがまま足を前へ前へと進めていき、病室から廊下へと1歩踏み出した。

看護師さんは、元々大きかった声を更に大きくして、

すごい!上出来!!頑張った。

と、何度も褒めてくれた。

飴と鞭の使い方!?が絶妙だった。

翌日、前回ベッドから立ち上がる時に付き添ってくれた優しい看護師さんが病室に入って来るなり、

歩けたって聞きましたよ!やっぱりスパルタでした?

と、病室の扉が閉まりきらない間に言った。

薄々スパルタだなー、っとは思っていたが、この病棟の中で有名なスパルタ看護師さんだったのか、と納得した。

まだあと1週間は入院予定の身。

無難に、あれくらいで無いと私は立てなかったかもしれない、と返事をしたが、昭和生まれの私にはスパルタが合っていたのかも。

いやいや、昭和生まれだって最初からスパルタだと術後のメンタルでは無理だったかもしれない。

優しい看護師さんの後でスパルタ看護師さん、という2段階だったから頑張れたのかな?

色々なタイプの人がいて成り立っているのかな?どの仕事も同じだなあ。

何はともあれ、立ち上がり歩いたことで、日ごとに体調が良くなっていった。

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