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デスゲーム系について考察する。

          ノベルゲームとの親和性と功罪。


ゴールデンウィーク前にレトロゲームをいくつか買い漁った。
いつものようにメルカリで面白そうなものはないかと流し見していると、すこし気になるタイトルを見つけた。

シークレットゲームである。

ご存知の方には今更だろうが、自分が知っている常識とは思っているほど常識でないこともある。(特に特定の界隈に長く浸かっているとそうなりがちな印象がある)
おさらいの意味も込めて軽く触れる。

シークレットゲーム(副題キラー・クイーン)とは元が同人作品であり、今回僕が購入したのは原作をプレイステーション2に移植したバージョンとなる。オープニングに出てくる女の子達が異様に可愛過ぎる。どうなってんだ。クソ18禁版にすれば良かったていうかこれみつみクローンの一種なのか?


❗️注意❗️

本記事はあくまで筆者の主観であり、
ジャンルや特定作品に対する絶対的評価ではありません

「なにいってんだコイツわかってねえな」

くらいに読んで頂けると幸いです。
理解を深めるために詳しい方からアドバイス頂けると更に幸いです。


○バトロワ?   デスゲーム?

さて、みなさんは『デスゲーム系』(以下デス系)と聞いてなにを浮かべるだろうか。
というのも、僕はすこし認識が誤っていたのではないかと思うことがあったからだ。

ずいぶんと昔になるが、『バトル・ロワイアル』(以下バトロワ)という作品があった。
当時、映画上映されあまりに過激な描写から話題になった経緯がある。
これは、小説原作の実写映画化作品である。

漫画版もそうとうエグかった記憶があるが、実写での残酷描写もかなりのものだった。

内容としては、学生が旅行中かなんかの時に集団拉致されて孤島に監禁される。
そこで生き残りを懸けた殺し合いのゲームをさせられる、というものである。

人気があったのか、その後類似した派生作品や二次創作などが流行した記憶がある。

僕は、この『バトロワ』に連なるものとして『デス系』を認識していたのである。

実は、共通するところも多い。

まず、主人公はたいてい高校生くらいの男の子である。
これはまあ、たいていの創作物でも珍しくもない設定だが、特に中高生にはより感情移入しやすいかもしれない。

そして、周囲の人間も同じ中高生…といいたいところだが、デスゲーム系の年齢はバラバラである。子どももいれば、おっさんもいる。
そも、バトロワとは原作設定として『相互不信による革命抑止』らしく、映画では『言うこと聞かない子どもへの大人による権威復活らしい』。
個人的には映画版の理由付けのほうが、しっくりきた。けど怖いのは原作設定。

デス系では、金持ちの道楽的な理由付けをよく見掛ける。
人が人を殺し合う、苦しむ姿を見て楽しむ狂人集団が金と権力にものを言わせ見世物小屋にしているのである。
(たまになんか壮大な陰謀みたいなケースもあるが)

亜流としての些末な差違と思われるかも知れないが、『なぜこのようなことが起きたのか』というのは物語のテーマとしての根幹に関わる事由である。
え?    そんなんどーでもいいからヤりまくれよ?
たしかにそれも、楽しみ方のひとつだ。

これをないがしろ、もしくはハッキリ定義しない後発作品は、なんちゃっての域を越えられず『ガワだけ寄せた原典パチモン』の烙印を往々にして押される。
パチモンにはパチモンの美学があるが。

個人的には老若男女の方が個性的でドラマの多彩な描き分けが生まれる余地があり、見応えがあるとは思う。
が、先述したように属性を揃える設定上の理由付けがあり、それが回収されることで独自の表現ができるのなら十分アリだとも思う。

まあ、これは通ぶった解釈であり、要は自分が楽しめればそれでいい。
ジャンルの始祖が開拓したその後を様々な魅せ方で広げていくのは積み重ねによるセオリーが生まれ洗練されていく利点があるし、同じタイプのジャンルを好む層にとってはありがたいことであり、商業にとっては売上見込みが立てやすいメリットもある。

すこし脱線した。

続いて、集められて何をするのか、という点がある。

これは、バトロワ系ではランダムに配られたりする武器(銃やら刃物や鈍器やら)を使って相手を排し、生き残ることになる。

デス系では、配られる物が自らの首輪の解除条件を記した携帯端末である。
この解除条件が様々あるため、情報を隠しつつ、時に協力するなど心理戦が生まれる。
『ゲーム』とつくだけあり、お互いの情報や能力を(時に弱ささえ)武器とした知略ゲームとしての駆け引きであり、騙し合いが魅せポイントとなる。
そして時に人の在り方さえ問うテーマが描かれる

ここで両者に共通することだが、たいてい

『首に爆弾が仕掛けられている』。

これは、逃走したり、壊して外そうとしたり、殺し合い(ゲーム)に参加する意思を示さなかったりすると監視者側で(もしくはオートで)爆発させるというものである。

当然、普通の人間は首近くで爆発すれば生きてはいられない。
これによって、否が応にも参加せざるを得ないという状況説得性を生んでいる。

これは使いやすい設定であり、多くのバトロワ系、デス系で採用されている。
(特別な理由がなければ)わざわざ変える旨味も特にない完成された設定といえる。


大きな違いとして、理由付けとしての設定、バトロワ系は武力による殺し合い、デス系は知略、思考ゲームとしての側面があると確認した。
実際のところデス系がバトロワの派生かどうかは分からないが、キャラ退場が激しいという点においては共通しているジャンルには違いないだろう。


○ノベルゲームとの相性

ご存知の方におかれましては(以下略)。

軽くおさらいすると、ノベルゲーム(通称ノベゲ)とは、グラフィックとサウンドによる演出によって表現される物語形式の一種である。

ノベゲは、映画やアニメなどと類似する点も多い(静止画が基本だが昨今はライブ2Dなど動的演出も増えてきた)。Motionanime最高
なので、大枠で捉えると『総合芸術』としての特徴を備えている。

だが、『ノベル』とあるように、本来はテキストによる物語、ストーリー、シナリオを楽しむものであり、グラフィックやサウンド、システムは最大化を意図する従的効果だった。(ここには異論反論もあるかもしれない)

ゲームプレイにおいて文字を読む、という行為が時間に占める割合としては最も多くなる傾向にある。

様々な表現ができる拡張性はノベゲの利点だが、リリースされている多くの作品において、見所は物語であることが多い。

これは、スクリプトやイラスト、作曲に対して比較的制作ハードルが低いことも影響している。(昨今のAIの進化で今後どうなるか分からないが)

だが、物語が作れることと、それが面白いものになるかは当然だが別問題である。

そして、往々にして作者の表現したいモノが強く出ると物語は肥大化、すなわち長編になりやすい。

必ずしも短編を否定する意図はないが、
面白い物語ならある程度の尺を求めるのが人情だろう。
長編を読み終えた読後感は、終わりの余韻も相まって良いものである。

ただし、面白ければ、だが。

作者の表現したい熱が全面に出ると作品が長編化しやすいと書いたが、長編あるあるとして、

「ダレる。特に日常パートがつまんねえんだよ(゚Д゚)ゴルァ!!」

がある。

 REMEMBER11の優希堂悟のような電話帳さえ楽しく読める活字中毒者ならいざ知らず、多くのノベゲプレイヤーは経験してきた。
つまらない文章、それが長く続くことの苦痛を。

せっかく生み出した物語。
たくさんの人に読んでほしいのが人情だ。
だから、プレイヤーに見切られるリスクを回避するために、シナリオライターは苦悩し、テクニックを駆使する。

導入パートでインパクトを与え掴み、
展開に変化を加えて飽きさせないようにし、
台無しにならないようクライマックスを盛り上げ、美しく締めくくる。
細かいことを言えば、いっぱい工夫している。

基本的に『退屈、ダレる』というのは、変化のない穏やかな日常が続くと感じやすい。
『日常系』というジャンルは、これに逆行するが、あれはキャラクターの魅力で押している節が多分に強い。
モブみたいなキャラクターで成功している日常系があれば教えてほしい。(非エロ成人向け作品だとあったりする)
そのライターは日常の面白さを描くという点において相当な実力がある。

脱線し過ぎだ。
退屈なのは俺の文章というブーメランなのか

ノベルゲームの配信サイトなどのタグ機能を調べてみると分かるが、『恋愛』ジャンルが非常に多い。
これは、描きやすさと人気を高いレベルで兼ねているからではないかと思っている。

だが、問題もある。

恋愛ジャンルは、特異な設定、もしくはキャラクターに相当な魅力でもない限りその多くを占める日常パートにおいて刺激が少なく退屈になりがちなのである

ここを普通のどこにでもいる人間にしながら(ビジュアル、イラストに頼らず)面白い日常パートを描くには相当な人間描写が要る。

ここにテクニックを必要としない解決方法がひとつある。

それが、バトロワやデス系、ホラーに属する退場のリスクによる緊張感の獲得である。

前提として、結局、魅力的なキャラクターが退場するからこそ、というのはある。

だが、退場というリスクはキャラクターの魅力増強、ひいては物語没入感にかなり大きなボーナス補正が入る

よほど救いようのない魅力の低さでもない限り、相当な底上げアッパー調整によって前線に立てるくらいになる(所感)。
クロノクルでもウッソと渡り合える(盛り過ぎ)。

これは、かつて流行した『泣きゲー』と言われるジャンルにも多用された手法であり、効果は実証済みである。

しかもバトデス系なら病気や事故といった一部キャラにしか使いにくい手法と違い、違和感なくその対象を全体化できる。

『いつ退場するか分からない』という恐怖は初見時においてのみ効果を発揮する。
ここに物語を一回読んだら終わりというノベゲのリプレイ性の低さを逆手に取った一回性の強さとのシナジーもある。

そして、退屈な日常パートはいつ訪れてもおかしくない唐突な終わりを意識することで、常に油断ならないものとなる

加えて、悲劇的な結末が常に張り付いているからこそ、穏やかな日常は得難く尊いものとして活きてくるのである。

また、長編ということはキャラクターとプレイヤーの接触時間が多くなるということでもある。
単純接触効果というものがあるように、長く見ていることさえ出来れば好感度は(嗜好の差はあれど)高まりやすい
好きなキャラを失うことへの恐怖から物語への没入感を促す可能性が期待できる。
(見たくないと止める人もいるかもしれないが)


いいこと尽くめのようだが、実は致命的なリスクも同時に内包している。
以下において記述する。


○バトデス系の罪。
   バトデス×ループものという免罪符と代償。

バトロワ、デス系は物語構造上キャラクターを消費する。

ハッキリ言ってキャラクターリソースとしては最悪のコスパジャンルである

令和に相応しくないな。

描き方によっては、全員生還エンドなどもできるが、どちらがよりジャンルとしてドラマチックであるかは言わずもがなだ。

散るからこそのバトデスなのだ。

これは、人気キャラクターを続編へと使うというキャラクター商法と非常に相性が悪い。にもかかわらず、萌え萌えな女の子が登場したりする。
苦心して生み出した女の子キャラを使い捨てである。創作者なら分かると思うが、正気の沙汰ではない。

魅力的な女の子が命を懸ける描写は胸を打つものがあり、最大限に活かしている。
だが、せいぜい1人、よくて2人生存させるのが関の山だろう。
『前ゲームの生き残り』というオイシイ役割を持てるが、それは限られる。

みんな生き残っていては、

「なんでやねん」

というツッコミ回避が難しい。

この対策か知らないが、ループものと組み合わせるという手法も生まれた。
ホラー系とも類似や親和性があるため組まれるケースがあった。

簡単に説明すると、ループものとは、悲劇的な結末を経験した主人公がなんらかの能力で時間を巻き戻し、悲劇を回避してハッピーエンドを目指すために何度も同じ時を繰り返すという、これまた一時期流行った構造である。

この手法のメリットは『悲劇というドラマを描きながら最後は回避可能』という言わばいいとこ取りのような展開にできることにあった。
ゲームのリプレイ構造をシナリオに落とし込んだものとも言える。

だが、これには大きな落とし穴がある。

初見の始祖はともかくとして、繰り返される悲劇を視聴者はメタ的に受け取り「どうせ生き返るんでしょ」と感覚のマヒが起きる
もうこうなると、悲劇は喜劇になる。
ドラマからコメディー、ギャグへと変質するのである。
それはそれで良いとする向きもあるかも知れないが、おそらく本来意図されたものではないだろう。

救済が目的として作られるなら、それでも良い。
だが、バトデス系(類似としてホラーも)の魅力とは、極限状況下での人間の本質、その人が秘めていた想いの発露にある
少なくとも受け手がキャラクターの死を『生き返る前提』で見てしまえば、それはもう茶番以外の何物でもない。(まあそれでもつらいものはつらいけどね…)
『取り返しがつかない』という代償を払っているからこそのドラマなのだ。

大団円はゲーム構造としては正しい。
プレイヤーの目的達成の努力は報われるべきだからだ。
退場を回避することはモチベーションを上げるし、読後感も良い。
リスクとリターンは互いに比例するほどドラマチックになる。
1作目やジャンル初期の頃は良い。
だが、後発や続編作品において慣れてきて大団円のための悲劇が予定調和に感じる瞬間がある。

「どうせ今度もみんな生き残るんだろう」

こうなってはバトデス系の魅力は失われ、逆張りして退場させればキャラリソースロストという最初の問題にぶち当たる。

これはもうジャンル構造的に不可避なマイナス要因であると言わざるを得ない。
バトデス系は一発勝負の特性が強い。
続ければ続けるほど首を締め、己が身を削る諸刃の剣だ。
故に、単体作品完結型シナリオの(特に商業目的でないフリーの)ノベルゲームとの親和性は高いといえる。


うーん。
まとまってない上に脱線して長い。
反面教師として書きましたが、こういうのですよ、みなさん。
そんなヤツがノベゲシナリオ書いてんだぜ

シークレットゲームについては関心もあるので、プレイが終わったら感想記事を上げたいと思います。

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