ゲームデザインにおける回避と防御の違いについて考える。

                 似て非なるもの。(2回目)


以前書いた記事ともすこし関連する内容なので、ヒマな人はそちらも参照されると、より分かりやすいかとおもいます。



防御というのは、攻撃を受ける時に何かで防いでダメージを軽減(無効化)する行為。

回避というのは、攻撃を避けることによって、当たらないようにする行為。


作品によっては、同じような効果の場合もありますが(たいてい無効化)、この記事では違う場合について考えます。

防御というのは、攻撃が当たっている前提。

回避というのは、攻撃が当たらない前提。

※直撃を避けるという意味では回避でもダメージ軽減されても良い気もしますが、ゼロかイチかの仕様しか見た記憶がありません。
おそらく回避具合でダメージを変えるなど面倒過ぎるのでゼロイチ仕様なのだとおもいます。

一見ゼロにできる回避のほうが良いのでは?
とおもいますが、回避というのはたいてい確率なので確実性に欠けます。

では防御はというと、効果の確実性はあるのですが、問題はその軽減率。
作品によりけりですが、よくあるのは半減。
コストありの技でゼロにするなど。
ですが、中には防御効果を無視するような攻撃もあります。
あと大事なのは、デバフ、追加効果といわれるような状態異常(マヒとか眠りとか)も防御だと発生することもありますが、回避なら当たっていないので発生しません。


この2つの守りの選択肢を上手く使い分けている作品があります。
フリーゲームの『最果てを目指す』です。

リンク張ろうかとおもいましたが許可確認がめんどいので興味あるかたは検索してみてください。
難しいところもありますが、ノンフィールドRPGのリソース管理ものとしては刺さる人にはかなり勧められる作品です。


余談ですが、ロードライト・フェイスや人類滅亡後のPinocchia、アムネジアヒーローなどフリーゲームにはノンフィールドRPGの良作が多い印象。
古典作品もベクターさんあたりに残ってるとおもうので、ぜひ。
ちなみに、最果ての作者さんのブレイカーハーツもオススメです。
哲学的なキャラに加えて、FF12のガンビットのように行動AIプログラムを敵に合わせて組むバトルが攻略しがいがあります。


この『最果てを目指す』では、敵の攻撃に『防御無視攻撃』と『低威力高命中(ごめん必中かも忘れた)連続ヒット攻撃』があります。

そして、プレイヤーの選択肢には『防御』と『回避』があります。

ここまで読まれたなら、もう言いたいことは伝わっているかとおもいます。

防御無視は文字通り相手の防御を無視するので防御を高めてもダメージは減らせません。

高命中や必中では避けられないので、回避しても無効化できません。

そこで、防御と回避を使い分けます。

いくら防御無視だろうと回避して当たらなければどうということはない。

いくら必中(高命中)でも、威力が低いのならガードしてしまえば微々たる被害(場合によってはほぼ無効化)にできる。

この作品では、ガードと回避という2つの守りの選択肢を防御無視と必中(高命中)という2つの課題を用意することで存在意義を確立しているのです。


もうひとつ例として、古典作品のファイナルファンタジーIIを挙げます。

FFファンやオールドゲーマーにおかれてはご存知でしょうが、この作品はかなり尖った仕様です。

そして、『回避』の能力値がなによりも重要なステータスであるという稀有な作品でもあります。

有名なクアールというモンスターのブラスター(マヒ攻撃)からの回避不能なキャラに対する通常攻撃(戦闘不能の追加効果)のコンボは作品のシステムを体現した芸術性すら感じる美しいデザインです。(しかも複数体でてくる。鬼畜か)

デスライダーの割合攻撃も同様ですね。
割合攻撃とは最大HPの1/16ダメージを与えるものです。
そして、このゲームは通常攻撃にヒット数の性能があります。
もうお分かりでしょう。
16回当たれば(全部当たると2回の攻撃で)問答無用で戦闘不能です。(しかも複数体でてくる。鬼畜か)

モルボルグレートというこれまた有名なモンスターは、通常攻撃に複数の状態異常を持ち、当たると一発で戦力外になる恐ろしい敵です。(しかも以下略)

避ければどうということはないので回避が非常に重要で、かつ魔法防御が状態耐性にも影響するため、これまた重要度がかなり高い能力値として稀有な例です。(魔法防御ですよ?   能力値でそんな重視されます?)

これ以外にもFF2には魔法干渉など面白い仕様がたくさんある古典的名作です。
興味のある未プレイ者はぜひ。


多くのゲームでは、回避と防御のどちらかが上位互換であるかほぼ同義である印象です。


※更に余談ですが、近年のアクションではジャストガード(パリィ)やジャスト回避などからのカウンターが流行っている模様。
アクションでは尚更この2つの違いが分からず同義である印象です。


選択肢というのは、ある程度数があるほうが選ぶ楽しみがあります。

ですが、Aを選んでもBを選んでも変わらなかったり、常に正解の選択肢があるようでは考えたり迷う楽しみ、面白さが生まれません。

良いゲームは、選び甲斐のある選択肢があります。

それは、どのジャンルのゲームにおいても通じるものであり、そも選択肢とはゲームの定義のひとつである『意思決定』そのもの。
良いゲームはプレイヤーの意思を尊重するものです。
なんとなく他もそうだからと採用するより、その意義を考えてみるのも大切なことだとおもうのです。


今回書いてあることは、当たり前といえば当たり前のことばかりです。
ですが、当たり前ができているかどうかはまた別の問題です。

どの分野でもいえることとおもいますが、基礎や基本というのは一見目立たないもので、その実際において是非がモロに表れます。
先人の積み重ねから生まれたセオリーなので、簡単には崩れません。

そして分かりやすい派手さもないので、特に素人にはないがしろにされがちです。


◎まとめ

『防御』

○メリット

・ダメージ軽減効果がある。
※作品によっては、軽減率が異なったり回復や状態無効など特殊な効果を付与しているケースもある。


✕デメリット

・防御無視攻撃は軽減できない。


『回避』

○メリット

・攻撃を無効化する。
※状態異常や特殊な効果も無効化する。


✕デメリット

・必中や高命中攻撃だと回避できない。


2つの類似した選択肢でも、ちゃんと違いを設けて使い分けるデザインになっていれば、考えたり工夫したりする楽しみ、面白さが生まれる。


余談の余談。
某少年誌のサッカー漫画の好きなワンシーン。


「でも監督、攻撃は最大の防御って言うでしょ?」

「それは攻撃が成功する時に言うセリフだ」


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