隠れた名作RPG『ビーナスブレイブス』。

           失われる中で受け継がれていく、
             物語とシステムがリンクした
              部隊経営シミュレーション。


旧ナムコよりプレイステーション2、PSPで発売された世代交代RPG(感覚的にはSLG)。
最近になってネットで知りプレイしている。

不老不死の主人公が、限りある命の仲間たちとともに世界の破滅の時に抗っていくという物語。
ゲームを通して期限があり、キャラを戦わせ、育てるシミュレーション要素の強いRPG。

珍しい特徴として、以下の点がある。

・『主人公以外の仲間が加齢により離脱』

・『疲労度(拠点に帰るまで回復不可)』

・『配置により行動が変わり、戦闘中に列を回すローテーションバトル』


『主人公以外の仲間が加齢により離脱』

これこそが物語のドラマの根幹であり、システムとも関連した重要要素。

世界の破滅に備えて組織の部隊を強くしていくのだが、長い年月のスパンの話なのでキャラは普通に歳を取り、現役から退いていく。

どんなにお気に入りで強いキャラでも、いつか別れる時がくる

システム面で言えば、キャラごとに成長期、全盛期、老衰期と三段階の年齢における節目があり、能力値が伸びやすかったり、逆に下がっていく(ここが珍しい)。
例外的に主人公は衰えず離脱することもない。

※同じくプレイステーション、PSPに俺の屍を越えていけという作品があるが、類似性を指摘されている。
あちらはキャラ設定がないのが相違点。
バトルシステムも異なる。

老衰期に入ったキャラはパーティーから抜けていくため、新しいキャラを募集して部隊全体としての強さを維持していかなくてはならない
いずれいなくなる時のために若いキャラを育てていく。
先述の成長率の要素もあり、延びやすい時に参戦させたい。
控えとして戦闘に参加させなくても時間は経過し、歳を取り別れの時は来る。

時折入団希望者が出てくるので、定員の中で誰を採用し外すのか悩ましい。
先を見越した登用、育成が求められる。

ストーリー上でも、いずれ自分がいなくなる時のため新米兵士に自分の技と心得を継がせていくといったアツいドラマがある。
ビーナスブレイブス、エモ過ぎだろ。


『疲労度』

戦闘で受けた累計ダメージが最大HPを越えると能力値にマイナスの補正がかかる
寿命のない主人公でさえ、疲労度の影響は受ける。
ダメージソースだったキャラが弱体化すると攻撃力もガタ落ちする。
これは回復魔法でも治らず、拠点に帰るまで回復しない
モンスター討伐遠征や連戦時における戦略性を生んでいる。
後述のローテーションバトルとのシステムともうまく関わってくる。


『編成、配置、ローテーションバトル』

この作品の面白さの1つである戦闘パートにおける戦略性を強く表している要素。
3×3マスに7キャラ配置できる。

主人公率いるゴーレム山賊団は定員14名であり、戦士、騎士、術師、弓使いなど様々な能力を持つキャラから選んで戦闘に参加させる。

前列、中列、後列と分かれており、列に応じてキャラの戦闘行動が変わる
また、行動の範囲も同列全体、自分の前にいるキャラなど違うためよく考えて置く必要がある。
※オウガバトルシリーズのような感じ。

たとえば、術師を例に挙げると、

前列なら攻撃魔法
中列なら自分の前のキャラに強化魔法
後列なら横列にいるキャラに回復魔法

などといった具合。

そして、戦闘中の行動だが、プレイヤーは一般的なRPGのようにキャラの行動を選択することはできない
前述のように列によって行動は自動で実行される。
では、見ているだけなのかというと、実はプレイヤーが選択できることが1つある。

それが、ローテーションである。
(実際には、逃げるや召喚も選択肢にある)

先ほど列によって行動が変わると書いたが、これは固定的なものではなく、戦闘中にターン毎に「ローテーションする・しない」を選択することで、戦闘前に決めた列を回転させ、列を変えることにより行動を変えることができる

前列→後列へ
中列→前列へ
後列→中列へ

といった感じでぐるぐる回る。
(文字だとわかりづらいごめんね)

列が変わったことにより列に応じた行動も変化する仕組み。
戦闘中の状況の変化に応じてローテーションして対応していくことになる。

また、トドメを刺したキャラに経験値が入る仕様のため、育てたいキャラで倒すためにもローテーションは重要である。

そして、これを補強する形で戦闘前に敵の行動パターンを確認することができる
これによって、何ターン目に敵が強力な攻撃をするから騎士のかばうを使える列変更をしよう、と先を考えながらプレイヤーはローテーションするしないを選択していく。

中にはそのローテーション中一回しか使えないスキルもあるが、ローテーションを変更することで再使用が可能になる。
うまく使いこなせば、必要なタイミングでスキルを使い続けることができる。

パズルのように1手、2手、3手…と先を見据えたバトルが楽しめる。

先述の疲労度の要素から、なるべくダメージを受けずに戦う必要がある。
そのために、かばうを使いこなして受けるダメージを減らしたり、敵に効率的にダメージを与えるローテーションの流れを考える。
これこそがビーナスブレイブスの戦闘の醍醐味である。
中には1ターン目に能力値が変化する敵などもいて、初期配置含めて考えることが多い。


ざっと概要を書いたが、これがビーナスブレイブスの特徴であり、他のゲームであまり見かけない仕様である。
システムとストーリーがうまく融合し合った稀有で見事な作品だと感じた。

ナムコさん、遊びをクリエイトするコピーは伊達ではない。
テイルズの印象が強かったけど、知らなかった良いゲームがありました。

キャラロストなんてあまり受けないかもしれないけど、戻らない、失われることでしか得られないドラマや遊びとしての面白さがあると思う。

そんなレアな体験を与えてくれるビーナスブレイブスに出会えたこと、ネットで記事を書いてくれたかたに感謝。
開発、販売してくれたナムコに感謝。

このゲームが、たくさんのプレイヤーに遊ばれますように。


みんな、いくぞっ!

チャキッシャキーン!(武器を構える効果音)


※2024.3.24
加筆修正、改行追加。

※2024.1.13 
初稿。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?