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20代に特にオススメしたい『イエスタデイをうたって』。

                        恋に夢に仕事に。
                          迷いながらも
         ゆっくりと、確実に変化は訪れる。


今回は蔵書から漫画を紹介。
集英社より刊行されている『イエスタデイをうたって』である。

概要は、コンビニのアルバイトで生計を立てつつ写真撮影を仕事にしたいとおもっている主人公リクオ。リクオが想いを寄せる教師シナコ。それに関わる周囲の人物との日常を描いた恋愛要素のある物語。

そこに、シナコの想い人、その弟、リクオに一目惚れした少女などが入り交じり四角(五角?)関係の様相を呈する。

わたくし、N.K.が制作中のノベルゲームの演出、心理描写など作っていてパクってる影響を受けていると自覚するほど好きな作品である。
ほかに水夏っていうエロ(ギャル)ゲーも影響受けてるけど、またの機会に記事にします。

僕が当時この作品に触れたのは、幼なじみ(残念ながらオスだ)の所有していた本を勧められたからだったとおもう。

彼とは数々のゲームを遊んだ。
RPGにBIOHAZARD、ポケモン、スマブラに格ゲー、エロゲーギャルゲーいろいろだ。
絵も描いていて、漫画も見たことある。
ミニ四駆もやったなー。
アホな僕はパーツを付ければ速くなると勘違いしていたが、必要ないパーツを外して軽くすることで速くなることを教えてくれたのはコイツだった。
そんな彼も今や一児の父。
絵も描かなくなり、あまり連絡も取らなくなったが僕の人生史において外せない人物だ。

脱線した。(よくある)

当時、ダイヤルアップ回線で貴重なネット接続をして調べてみると高く評価されていた。今でもそうだが、割と僕は周りの評価に影響を受ける。
自分の価値基準を持ちたいとおもっているが、他者の意見は自分にはない気づきを与えてくれる。
noteや旧Twitterもそんな場所だ(った)。
そして自己とは他者によってのみ形成されるらしい。

初めて読み始めてから10年くらい完結まで掛かってた気がする。
HUNTER×HUNTERとともに数少ない新刊をおっかける作品だった。

僕がたしか21かそこそこの歳だったとおもう。
登場人物たちの年齢と比較的近いこともあったのだろう。
人物たちの心情にグイグイと引き込まれていった。

当時僕自身、定職に就かずぷーさん(バイトしてたかも)だったので、このリクオというキャラが気になっていた。

恋愛要素が取り扱われるが、負い目や遠慮、周囲との関係性から複雑な心境が一歩を踏み出せないでいる状況になっている。

加えて好きな点として、将来に対する漠然とした不安を皆抱えて生きているところが丁寧に描写されている。
趣味でやっていたことを仕事にしてもいいのか、この世界でやっていけるのか、そもそもどうして好きだったのか。
そういった気持ちを抱えながら悩み逡巡する姿が心を掴んで放さなかった。

20代というのは、社会に出たばかりだったり、あるいは学生だったりして将来に不安も多いことだとおもう。
気になる相手もいるかもしれない。
そういった層には特に琴線に触れるものがあるのではないかとおもう。
ぜひ、人生に迷う人たちの群像劇を眺めてみてほしい。
もちろん、他の世代でも懐かしくおもったり、いつか来るときを想像して読んでみるのも良い。


※長い余談(すこしネタバレ)
レギュラーキャラ以外のサブキャラも掘り下げられているのが魅力の作品だが、その中で個人的に好きなエピソードとして映画を自主制作している学生の話がある。

学生故に、お金がなく製作資金が調達できなくなった男の子は、自分の大切にしていた写真集(だったとおもう)を売ってお金を手に入れようとする。
ところが、それをあとで知ったメンバーの女の子は男の子に怒る。

「なんで相談してくれなかったの」

彼一人に身を削らせたこと、黙ってされたことへの悔しさだろう。
泣いていた。
そこに居合わせた主人公リクオは、この写真集を買い取る。

「ただし、読みたければいつでも貸すし、買値と同じ価格でいつでも売る」

と付け加えた。

自分もお金がなくて大切にしていた本を売ったことがある。
あとで買い戻そうと探したけど、ついに見つかることはなかった、と。

リクオは男の子の気持ちも察していた。

「好きな子にカッコ悪いとこ見せたくなかったんだよな」

「男って、そういうとこあるから」

細部は違ったかもしれないが、概ねそういう感じだった。
今なら男女とかいうとうるさいが、こういうのは好きである。
人生上手く行かなくて悔しい想いをすることも多々あるが、そんな心の機微を描き、汲み取る描写がとても気に入っているエピソードだ。


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