物に宿る。

                          刻まれた記憶。


僕はレトロゲーマーなのだが、メルカリをよく利用している。
Amazonで購入していた僕にとって、フリマアプリというのは初めてで色々と違うところがあった。

その中で、出品者とのやりとりがある。

実際のところ、購入を決定すればコメントしなくても取引はできる。

これは出品者により不要とか、最低限のやりとりは条件とかバラつきはある。

レトロゲームを出品している人は、かつて自分が遊んでいて不要になったから売りに出しているケースがある。

あまりいい気分ではないが、テンバイヤーなどもいるので、全部が全部ではないとおもうが。

僕はネットや昔のゲーム雑誌などで知ったゲームを主に探している。

何10年も前のタイトルだと、あそんだタイトルを共有したくても古すぎて誰もやっていないので難しい。

そんな中、出品者とのコメントのやりとりの中で届いたゲームをすこしあそんだ感想を書くようにしている。

既に記したように、すべての出品者があそんだゲームを出しているわけではない。

中には家族があそんでいたものを売りに出している人もいた。

そうなると、ゲームの話など振られても返答に困るかもしれない。

ただ、楽しんでいます、ということを簡潔気味に、かつ作品の特徴をすこし混ぜて伝える。

すると、たまにだが、昔のあそんだゲームなので、喜んで貰えるとうれしいとか、
あのゲームは何度も繰り返しやった思い出があってとか、
ゲームをあそんでいた話を聞けることがある。

そんなやりとりができることが、フリマアプリ(メルカリ)の大好きなところでもある。

最近になって、ゲームの攻略本を買った。

だいぶ使用感があり、ページは接着されたものが剥がれている部分もあった。

だが、付属物などが揃っていたので僕はその出品者の商品を選んだ。

その後の出品者とのやりとりで、僕がその攻略本のゲームを昔あそんでいたと伝えると、その出品者も大好きで何10周も繰り返しあそんだことを教えてくれた。

そして、攻略本にもその跡が残っている、と。

それを知ったとき、僕は中古で傷んだ物に今まで感じなかった感情を抱いた。

この攻略本は、持ち主が大好きなゲームをあそぶ時に ずっと傍らにあったのだ。

そして、折れ具合や剥がれから、特にこのページは読み込まれたのかもしれないと情景が浮かんできた。

敵が強かったのだろうか?

キャラクターの性能を調べていた?

まだ見ぬエンディングを探していたのかも知れない。

いずれにしろ、この本には持ち主との時間が痕跡として刻まれているのだ。

そして、何の因果か僕の元に来ることになった。


物には念が宿るなんてファンタジーだとおもわれるかもしれない。

だが、少なくとも物は持ち主との時間を共有しているのは間違いない。

それは物理的な痕として残る。

そして、持ち主を変えて新たな時間を刻むのだ。


痛みが残る攻略本を読みながら、ふとそんなことをおもった。


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