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フリーゲーム『商店経営 for 借金返済』から経営SLGの面白さを考えてみる。

                     ご利用は計画的に。    


 『商店経営 for 借金返済』は、フリーゲームの経営シミュレーションである。

ゲームの目的は200000000円の借金返済である。

2億って漢字で書いてもすごいけど、アラビア数字の桁数インパクトよ。

とても現実的とはおもえない。
借金をギャンブルで返そうとした主人公も大概だが、商店経営で2億返済とか、どうかしてる(褒め言葉)。

無理ゲー。

ちなみに、この商店、

毎日の維持費に60000(6万)円
(初期値。増設で更に高くなる)

月末の税金で300000(30万)円、

ランニングコストがかかる。
(商店って、そんなかかるの?)


なにもしなくても、

毎月2100000(210万)円の支出が発生する

固定費用であり損切りなどできない。
まあ、ゲームをあそばないことがメタ的に損切りと言えるかもしれないが。


資本金1000万
という衝撃の商店は、

毎月200万の支出により

約5ヶ月後には破滅する未来が待っている。

たいへんだ。
借金返済どころの話ではない。
回避するには金がいる。
幸いここは商店だ。
だから、商品を売って金を稼がねばならない。

まずは、買い出し。
ポップコーンや、きなこもちの利益率が高いようだ。
ぼくも、きなこもちは大好きです。
とりあえず、この辺仕入れてみよう。

仕入れリスト。
知名度により高額商品も扱えるようになる。
初期のラインナップは、まさに駄菓子屋風。
だがしかし。
仕入れた商品は倉庫に送られる。
倉庫から陳列棚に移して初めて売れる状態になる。

新しく商品を置く場合は、必ず倉庫→陳列棚の流れを踏む必要がある。
そして、倉庫、陳列棚共に『容量』があり、この数値までしか置くことはできない。

たとえば、倉庫20なら商品を20個まで置ける。
そして、棚はすこし異なり、『陳列棚の数』と『容量』がある。
陳列棚の数は置ける種類数で、容量はそのまま商品の合計数だ。

たとえば、棚3つで容量20なら、1~3種類までの商品を合計数20個置ける。

ポップコーンを20個置いたり、
チューインガム、きなこもち、チョコレートを7個、7個、6個と置いたりできる。
なんか食いたくなってきたが。

最初は倉庫も陳列棚も少なく置ける商品も少ないが、『増設』することで店の規模を大きくできる。

増設は100万~300万円。
余裕ができてから行わないと、
増設費で所持金が早く尽きる。
比例して維持費も増えるので要注意。

商品は売れたら倉庫から補充しないといけないが、『自動発注システム』設定により、売り場在庫がなくなると設定した数を自動で仕入れてくれるかなり便利なシステムがある。※(ただ、これには弊害の可能性がある。後述する。)

商品を並べたら、『進行』コマンドを押すと時間が進み、商品が売れていく。
0時~24時まで(実際に売れるのは9時~20時)を1日区切りとし、日々の収支が表示される。

えーと?
 1日の売上が3960円で、維持費が60000円だから仕入れを引くと収支は……

毎日6万円の維持費が掛かる商店。
駄菓子の売り上げは雀の涙。
詰んでる。

わかった!

-58940円

だね!!

このままいけば、4.7ヶ月のXデーが

4.8ヶ月

くらいまで生き延びられそうだよ!

3日くらい伸びたかな?

やったあ!!!



よくねえよ!!!!


焼け石に水とはまさにこのこと。
ジリ貧でいずれは破滅。
果たして、主人公に2億返済の未来はあるのか。
だが、やるしかない。
今日も今日とて、『きなこもち』を売りまくる。

商品ステータスには『仕入値』と『売価』、
そして、売れやすさの『需要度がある。
上記チューインガムの粗利30円に対して、
きなこもち110円。
だが、需要度は100から75に落ちている。
仕入れ値も含め、
最終的な収支イメージが求められる。

低ランク帯の商品の利益では2億どころか日々の6万の維持費すらペイできない。
薄利多売ってレベルじゃねーぞ!
関係ないけどQUICPay読み取り時の音声ジワるよな?

毎日の維持費と月末の税金を見据えた
お金の使い方をしないと、いともカンタンに詰む。
先を見据えた投資が大切。
宣伝すると知名度指数が増える。
一定値になると、知名度が上がる。
知名度が上がれば利益の高い商品を仕入れられる。
ランダムイベントで知人から差し入れがある。
 パソコンをタダでくれる美咲さん。
バリキャリ資産家のオーラが出ている。
 パソコンより美咲さんがほしい。
パソコン10台60 万円。元手ゼロ。
売れれば所持金も、知名度指数も増える。
 序盤のスルメイカ150円の頃には強力なボーナス。

このゲームの目的は2億完済だが、ゲームプレイ中の固定支出は『日々の維持費』『月末の税金』。
そして、収入は商品を売った利益のみ。
くわえて、返済期限は特にない。

つまり、日々の維持費や月末の税金を超える利益が出るようになれば、あとは時間の問題でクリアできる。
逆に言えば1000万の資金が尽きる前に知名度を上げ利益の高い商品を仕入れられるかどうか。
すべては、そこにかかっている。

ただ利益の高い商品を仕入れて売っているだけだと、収支がプラスになる前に数ヶ月で所持金が尽きる。

たが、そこまでむずかしいものでもない。
一度プレイしてみれば、おおよそコツがわかってくる。

○個人的に気になった点


・発注点0固定とノータイム発注、固定補充

発注点とは、『この数まで売れたら仕入れしましょう』というタイミングのことである。
たいていお客さんが買う時に欠品しないように在庫を保つ。
つまり、0なら『なくなったら発注しましょう』ということである。

そして、最低在庫数でもある。
よく売れる商品なら、(日用品とか)次の入荷までに欠品しない程度の在庫を置く。
仮に売り場に2個在庫があったとする。
次の入荷までにお客さんが10個買いに来たとすれば8個機会損失したことになる。
それを防ぐなら発注点(最低在庫)を10以上にする、といったことだ。

が、このゲームはノータイムで入荷するので全部0発注でも問題はそこまでない。
(この辺の要素があれば難しくはなるが、考えることは増える)

そこまで厳密かしらないが、在庫1とかだと6個売れるはずが損してる可能性がある。
そうならないために倉庫から補充する訳だが、補充数指定ができず倉庫にある全部が入らないと補充できないシステムのため、特に容量の少ない序盤は、ちまちま仕入れてちまちま補充しかできない。
それを面倒と取るか、醍醐味と取るか。
プレイヤー次第だろうか。

・倉庫の意義

一度棚に置いて自動発注設定(なくなると指定数まで自動的に仕入れて補充)すると、変更がない限り倉庫から補充する必要性はほぼないように感じられた。
新規設定時か粗利の高い商品に変えたい時、陳列数を変えたい時くらいだと思うが、一度安定するとまず使わない。(あとは稀に知り合いがプレゼントをくれるが、これは倉庫に入るので空きがないと貰えない)
おそらくこれは『いつでも買い出しに行ける(ノータイム入荷)』弊害ではないかとおもっている。

一般的には小売業というのは、商品の発注をしてから届くまでの時間がある。
店の発注日やモノ、出荷先との距離、送料などにもよるが、入荷するまで間が空く。
この間に商品が品切れとなっていると、いわゆる機会損失が発生する。

「なんだないのか……じゃあ他の店に行くか」

せっかく欲しいものがあって買い物に来たお客さんは店に対する失望も加わりリピート客(また買いに来てくれる)に繋げず長期目線でも損失となる。
これを回避するために、店は商品の在庫を持つ。(このゲームに機会損失による印象値はないが)
が、金も有限であり、売れ残っても利益は生まれない。
だから、売れた数と仕入れの数が常に相殺し続ける流れにする必要がある。
そして、売り場も倉庫もスペースは有限である。
発注から納品までの期間、その間に売れる数の見込み、売り場スペースに何をどれくらい置くか。
過剰にならず、欠品せず。
この在庫コントロールこそが小売りの基礎であり奥義である。
すぐには納品できないからこその在庫であり、頼めばノータイムで補充されるこのゲームのシステムでは倉庫の意義も薄くなる。
突発売れに対応しやすいが、先を予測する判断の要素はなくなる。

・体力と掃除

時間経過により体力が減少し、清潔度も落ちるが、日付をまたげば全回復し、掃除も体力消費も少なく時間コストもなし。
ほぼ作業化している印象だった。
栄養ドリンクも使うことはなかった。
細かく行動できるのは便利ではあるが、スケジュールを組んだり、休むか動くかという判断のジレンマの悩ましさが生まれないデメリットもあるようにおもえた。

・ゲームオーバーの条件

おおくの経営SLGでは期限が決められており、特定期間に資金などの目標を達成することがゲームクリア条件になっていることが多い。
これは、利益さえ出ていれば考えなくてもいずれクリアできてしまい、つまらなくなるのを防ぐためである。
期限があると、進捗を意識しなければならなくなる。
間に合わなければいけないので、効率や成果を最大化するために考える必要性が生まれる。
このゲームでは期限がないかわりに、毎日の維持費と月末の税金がすさまじい。
常に金が減り続ける。
事実上、残金がタイムリミットの代替と言える。
タイムイズマネーとは言うが、時間を消費する以上に何万も毎日飛んでいくのは、追い詰められていく感覚があった。
緊張感がある反面、すこしくらい利益が出ても成功体験としてはマイナス印象が続く。
マイナスから固定費を超える時が一番うれしく、他の達成感がマイナスに消されて間隔が広すぎる気もした。
期限なしだと収支プラスでクリアみたいなものなので、仕方ないのかもしれない。

・ペナルティー(リスク)の少なさ

他の項目でも挙げたが、必要経費的な支出はあるが、プレイヤーの判断ミスによる損失があまり感じられず、作業感が強かった印象がある。
例えば、欲しい商品がなかったり、陳列数が少ない時に買い物に来た客が残念がるイベントなどを入れ、店の印象値を下げたり、機会損失を演出したりする。

※フリーゲームの経営SLG『武器に願いを』は、このあたりが上手いと感じた。

これらは、プログラム的な処理として存在するだけでなくインターフェイスを通してプレイヤーに実感させることが大事と思う。
掃除してないことで、どれだけ損したか。
知名度でどれだけ売れたか。
数値化して明瞭になると、存在感や意義もわかりやすいかとおもう。
現行では、どれだけ影響があるのかわからない。

「あー、しまった損したー」

「もっとアレ仕入れとけばよかった…」

と、感じられるようになっているか。
失敗(成功)を認知させる必要がある。

○経営SLGの面白さとは

・商品が売れるよろこび

やはり基本かとおもわれる。
利益がでることもそうだが、商品が売れて嬉しいという感覚はフリーマーケットなどにも通じるところだろう。

・苦しい序盤~中盤がピーク

えてして経営SLGは序盤の資金繰りがキツい。
が、この頃のカツカツの状態からすこしずつ資産を増やし、コツコツと地道に積み重ねていき、大きく巻き返すタイミングが最も試行錯誤と達成感を感じられる、経営SLGのおもしろさのピークと言える。

・安定期に入るタイミングと作業化

経営に限らずSLGというのは、プレイヤーのチカラが強くなるまでが大変で、やりくりが楽しいところでもある。
だが反面、安定するとリスクが失われ作業化しがちなデメリットも生まれやすい。

このゲームも、マニュアルにはクリアまでイベントが続き、強盗などもあるので飽きずに楽しめると謳われている。
が、僕がプレイした範囲ではイベントそのものが頻度低めな印象で、強盗なども一度もなかった。
ランダムで偏っていたのかもしれないが。


○総論『わかりやすさという正義』

評価を見てみると、レミュ金(レミュエールの錬金術師。フリゲ経営SLGの有名作品)との比較や、バグ指摘など批判的な内容が目に付く。
僕も個人的に気になる点はいくつかあった。

ただ、実際にやってみると、商品が売れるうれしさや仕入れ種類が増えたり、棚を増やして色々置けるようになったりと、基本的な面白さはちゃんと感じられた。
システムそのものもシンプルで、わかりやすい。

コツさえつかめばクリアも割とカンタンなので、経営SLGをやったことがないプレイヤーにも、入門用としてオススメできる。
がんばって2億返済して、主人公を救ってあげよう。

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