見出し画像

サモンナイト4(プレステ2版)を20年近く経過して初プレイした感想。

              一見さんから常連さんまで。
                      忘れじの面影亭は、
                誰でも迎え入れてくれる。
     二十年後も変わらない味がそこにある。
                               それは、
    最高傑作と謳われた前作に勝るとも劣らぬ
          紛うことなきサモンナイトの系譜。


星、みっつです!!
キュウリ、トマット~♪(焼けつく太陽~♪)
真~夏の~恋~♪

   
                  ※TBS チューボーですよ! より引用


❗️注意❗️

本記事には作品に関するネタバレが含まれます。ですが、個人的には今作の魅力を損なうものではないと考えます。
気になるかたは、記事を読まずプレイしてみてください。

あと記事に一部過激な表現が含まれます。
煽り耐性に自信がないかたも回れ右です。
あと、クッソ長いです。

ぜひAmazonやメルカリでポチりましょう。
時間は有限ですので大切に。


以前、『ネット社会の今、攻略本の意義はあるのか。』の記事で触れたサモンナイト4の感想記事です。

とりあえず2周しましたので、暫定的ではありますが、述べたいとおもいます。

※ちなみに、女主人公でミルリーフ、男主人公でリシェルエンドクリア。



攻略本については、別記事にします。

僕が懐古厨であることや、センスが令和という時代に付いていけていない感もあることから偏向があるかもしれませんが、そのあたり込みで読んで頂けると幸いです。

サモンナイト3をあそんでから、実に二十年近い歳月が過ぎてからのプレイとなります。



○戦闘システム    「絶品、かと」

ブレイブクリアが生み出すSRPGの戦術性。

FIGHT WITH BRAVE! ヴぉん(効果音)

前作3に続いてサモンナイト4のSRPGパートを象徴している合言葉だ。

イベントバトル毎において、

・規定レベル以下。(いじめ、かっこわるい)
戦闘不能者を出さない。(仲間を大切に)
・回復アイテム制限。(物量ではなく技を)


以上の条件を満たしてクリアするとパーティースキルやそれを装備するためのポイントが入手できる。
クリティカル率を上げたり、消費MPを減らしたりなど自軍全体に有利な効果を得られる。

この御褒美もうれしいのだが、なによりこのブレイブクリアを達成することそのものがやりがいがあり楽しいのである。
このブレイブクリアがあるからこその前作3や今作4のバランスが保たれているといっても過言ではない。

多くのSRPGにおいては、往々にしてバランスの問題が指摘される。
これはSRPGの特性故に生じている部分が多分にある。
そのひとつが、レベル(スペック差)によるバランスブレイカーである。

育成要素はSRPGの大きな楽しみのひとつであり、なくすという選択肢は考えにくい。
だが、敵とのレベル(性能)が開き過ぎると考えなくてもチカラ押しでクリアできる。
そうなると、戦術シミュレーションとしての考える面白さは失われてしまう。
その問題に対するひとつの解答が、

『レベル制限』である。

前作3と今作4では、イベントバトル毎にブレイブクリア指定レベルが設定されている。
プレイヤーがブレイブクリアを達成するためには、まず前提としてレベルを規定値に合わせる必要がある。
これによって、

強化し過ぎによるバランス崩壊をプレイヤー自身の選択により抑止することができる

任意、というのがポイントで強制ではないので、お気に入りのキャラをめちゃくちゃ強くして無双してあそぶこともできる。
そして、歯応えを求めるプレイヤーは自分の意思でレベルを抑えるワケだ。
幅広い層を取り込める実に良いシステムだと感じる。

油断していると、読み損ねた敵の攻撃がプレイヤーキャラを戦闘不能にしてくる。
間合い(敵ターンで受ける予測ダメージ)、自ターンで撃破できる敵を時に数ターン先まで読んで進めなければならない。

※これは、ファイヤーエムブレムに代表されるロストの仕様に近い感覚がある。
キャラが失われる重みはロストが強いが、それをマイルドにして戦闘毎の戦術性を残した調整がブレイブクリアといえる。

高低差と武器の関係によっては、隣接しても攻撃が届かないこともある
更にZOCという常時発動型の移動制限スキル持ちのユニットを活用すれば、少ないユニットでも地形や敵の攻撃タイプ次第で無力化できる。一方的に攻めることも可能だ。
多彩な武器、召喚魔法の射程に設定された高低差範囲とマップにより異なる地形がこれを支えている。

間合いを制するという感覚。

これはサモンナイトシリーズ独自の魅力だ。


味方の射程に地形と敵の攻撃タイプ、ZOCや移動性能などを加味すれば一対多の状況を作り出せる。
サモンナイトの醍醐味である。



召喚術はサモンナイトの世界の象徴であり、魔法による攻撃、回復の要だ。

そして、魔法を行使する召喚師は得てして耐久値が低くやられやすい。
そんな戦闘の要となるキャラを後衛に下げ、戦士タイプのキャラで壁を作り守る。

サモンナイトシリーズの定石陣形であり、
『打たれ弱いキャラ』+『撃破離脱』仕様がないゲームでは存在しない戦略性だ。

隣接(縦斬り)からの反撃を受けない斜め(横斬り)に始まり、
正面隣接して背面に回り込める、込めないの移動力3と4の壁、射撃5の射程に届くかどうかの境でもある。

なんとなく設定された数値ではない。

相性や強み、弱みをバランスを考え調整されたそれらは、他のSRPGと一線を画す。

さらに移動制限や魔法軽減領域、効果範囲などユニットの配置が命運を分ける。
移動力、射程、効果範囲、配置──

空間を制するものがSRPGを制する作り。

これがSRPGでなくてなにがSRPGか。

とおもえる完成度の高さは相変わらずだった。

このサモンナイトシリーズほど射程や位置取りを意識するプレイ感が得られるゲームタイトルもそうそうない。

リソース管理、ゲームバランスも絶妙であり、ブレイブクリアを目指すとMPがギリギリなラインになる。

回復アイテムの使用は3個まで(料理は個人につき2個まで)という制限もこれを支えている。

このハラハラ感は、そんじょそこらのSRPGでは得られない

これは相当テストプレイを重ねて調整されているのではないだろうか。
毎度毎度絶妙で、作業化せずに緊張感を持ちながらバトルを楽しめる。
前作3から変わらない味だ。

初心者お断りかといえばそうではない。

初心者は無理せずレベルを上げて、大量に持ち込んだ回復アイテムも使えばクリア可能だ。戦いは数だよ兄者!

ストーリー、キャラクターを見たいというプレイヤー層にもしっかり対応している。

この懐の深さもサモンナイトシリーズの変わらない魅力である。


~前作との違いを感じた点~


・召喚術まわりの仕様変更

前作で僕はお世話になってた鬼神将ゴウセツとか聖母プラーマとか使って、

「え?    こんな効果量低いん?」

と驚いた。

例)
鬼神斬 威力 60 →32 (最大強化時42)
いやしの聖光  威力 25 →16 (最大強化時22)

最大強化でも3割低下。
どうしちゃったんだよゴウセツ……。

これは、まず前作のユニット召喚獣にあった育成要素が召喚魔法にも適用されたことによる初期値調整がある。
初期では威力と共にコストも落ちており、使いやすくはなっている。
これをゲーム進行に応じて強化していったりする運用のようだ。

あと、ゴウセツなど威力は低下しても代わりに射程が伸びる(3→5 )ものもある。
ざっと全体的に威力低下、射程、コストアップの調整を感じる。

戦術性が強まった印象だ。

逆にノロイのように射程も変わらず効果量が減りコストが増えたケースもあるが……。
前作が強過ぎたのだろうか。
それでも単体ダメージのデカさや範囲回復としてゴウセツやプラーマが優秀なのは相変わらずだった。

プラーマの低下に関しては1人2個までの料理があるのでバランスの点から妥当かもしれない。
獣属性持ちが多く、回復魔法を使えるキャラが増えたことも影響しているのだろう。

仮に強化して前作並に威力になっても、
コストが上がっている印象がある。
パーティー能力の各種コストカットもマイナス20%からマイナス10%に下方修正されている。
MP周りに関しては全体的に締め付けが強くなった感がある。

これも、今作で採用された料理によるMP回復を考慮してかとおもうが、まともな回復量を持つのは二種ほどで、かつ素材やレシピ入手の点から強力な効果を持つ料理は作りにくい印象がある。(PSP版では素材が買えるらしい)

暴走召喚(おそらく敵味方のMAT/MDFに関係なく限界値である基本値×4まで効果量を引き上げる)に関しては、ザコ敵が持ってたくらいで、こちらが使うことも使われることもなかった。
前作はもっと使われて脅威だった印象があるのだが……。
そして、個人的には主人公のダメージソースとして有用だった。
今作のボスは強力なスキルがあるので調整の意味合いがあったのかもしれない。
HPがかなり減らないと使わないので、追い詰めずに倒していたせいだろうか。

今作で追加された『お気に入り召喚獣』システムもおもしろい。
1人ひとつまで(変更可能)で、誰かと被ることも不可。

消費MP減少、専用魔法、使用ランク低下のメリットがある。

特にランク低下の恩恵は大きく、早い段階で高ランク召喚を使えたり、最大ランクがBやAのキャラが限定的とはいえAやSランク魔法を使えるのはかなり有用だった。

これは、ストーリー進行(イベントバトル)の敵に合わせて変更したり、同じ召喚獣でも個性化することに成功している。

今作の主人公は召喚師タイプでもランクA止まりだが、このお気に入りシステムを活かすための仕様だと感じた。

特に主人公に関しては、(獣以外の)召喚ランクを任意属性で1~2回上げることになる。

クラスによるが、Bランクを2つにしたり、Aランクを2つにしたりと選択の幅がある。これとお気に入りの召喚ランク低下を合わせると、プレイヤーによって様々な魔法特化型のメイキングが可能となる。

使いたい属性や召喚獣、ランクに応じてお気に入りのピンポイント使用やランクアップによる底上げを行う。
制限を設けつつ、キャラカスタムのたのしみの幅を広げている。

SRPGはステータス画面がたのしい。
戦場でどんな運用をさせようか。
制限と拡張性がカスタマイズのおもしろさを生む。


・物理偏重

物理技(特殊能力)を持つキャラが増えた印象。
戦士タイプにはたいてい必中物理ダメージスキルがある。

そして今回は、キャラ毎に二種の武器を持ち戦闘中に変更できる。
状況に応じて適切な武器に変えることができるので戦術性が高まっている。
相手の攻撃タイプや待機型に応じて、より有効な攻撃を選べるようになった。

召喚師もナイフや投具を使えば召喚師相手にそこそこのダメージが期待できる。
あと少しで倒せるかどうかというシーンが多いので実戦的な選択肢になっている。

※特にブレイブクリアにおいて敵を生かしてターンを終わることは大きなリスクを伴う。
できるだけ倒してターンエンドが定石だ。

セイロンなどは、物理も魔法も高く、レベルアップで悩んだプレイヤーも多かったのではないだろうか。

敵に合わせた豊富な攻撃手段を持ち、
育成の悩ましさがたのしくもある。
御使いとしての活躍が物語で描かれるのも魅力だ。


・移動力が全体的にアッパー調整

基本3だった(よな?)前作に比して進軍ペースが速くなったので快適。
移動力が伸びたということは射程が伸びたことと(ほぼ)同義であり一気に距離を詰めて攻めることがやりやすくなった。
が、反面移動力という得意分野の個性が弱まった気もした。

前作3では一部のスピードタイプ戦士が4(5)となっており、隣接状態から回り込んで相手のバック(背面ダメージ1.4倍)を取れるというアドバンテージ(個性)があった。
今作4では召喚師ですら4、主人公に至っては6、竜の子は破格の7まで伸びる。

ただ、多くの戦士タイプはZOCという自分の周囲マスに移動制限を与えるスキルを持つ。
これに対し、勇猛果敢というスキル(他一部スキル)を持つ者だけが影響を受けないのでラインは保たれている。(逆にいえばここが崩れるとやばい気がする)


・レベルアップとクラスチェンジ

今作では前作のように能力値によるクラスチェンジでなく、レベルアップのみが条件となっている。

スキルを選択すると方向性も変わってくる仕様であり、同じ戦士タイプでも違った運用になるキャラもいる。周回プレイでのたのしみや自分だけのカスタマイズを生み出している。

コマンドスキルから待機型に装備種類、召喚ランクに装備数、クラスチェンジは育てるよろこびにあふれている。

ボーナスポイントもクラスの方向性に左右されず自由に振れるので、合わせるも外すも極振りもよしである。

レベルダウンシステムもあるので、やり直しできるのもうれしい。

着物によるTEC補正のせいか俊敏持ちでもないのに回避し、カウンターとクリティカルによる超気持ちいいキャラと化した頼れる僕らのアニキ。
お前、ゴレム系と同じ壁じゃなかったのか。
どうやらオープニングでアプセットのドリルを穂先で受け止めた技量は本物らしい。
帝国軍人をなめるなよッ!


・防具加工システム

1.物理属性と状態異常耐性付与。
2物理耐性は弱点属性もセットで付く。
3.何度でも加工できるが、要金。

本作の新要素だが、カツカツの資金事情や弱点が気になり使わずにクリアした。

うまく使えば高台からの射撃に強くしたり、状態耐性によりアクセサリー選択の幅も広がるのだろう。

今後、周回プレイで金がたまったら、色々試してみたいとおもっている。

これはPSP版では削除されたようなので、プレステ2版独自の要素といえる。

ゲームを通してプレイした感覚だと、
マヒ耐性や弓、銃耐性が有用かとおもうが
どうだろうか。


多くの新要素や仕様修正があるが、不思議とバランスは取られていた感じがした。
物理周りが多数追加されたことや新仕様による全体的なバランス調整だったのかもしれない。

しかしまあこうして振り返ると、職人芸ともおもえる細かな数値調整が多い。
おそらく開発者は、かなりバランス調整に気を遣っているのは間違いないだろう。


・戦場マップに新要素も

また、戦場マップ拡張や戦場マップ中会話イベントなど新しい試みがあり、飽きさせにくい作りになっている。
「テメェのそういうところが気に入らねえんだよッ!!」


・シナリオ分岐

調べたところによると、本作では戦闘不能者の数によるカルマエンド(バッドエンド)はないらしい。
単純に夜会話で狙ったキャラエンドに行けるのだろう。
そういった点で、前作3よりも入門用として良いかもしれない。
(まあ、あれはあれで衝撃的で2週目のモチベーションになってた気もするが)


○アドベンチャーパートの魅力。

店の装いや料理の見た目はすごくポップなのに、酸いも甘いも吸い付くしている味わい。

『なんたってミュランスの星、期待の若手新人だからね!』


シリーズ未経験者に簡単に説明すると、
サモンナイトシリーズとは、名前の通り召喚術という異世界から様々な物や生き物を呼び寄せて使役する技術が普及したリィンバウムという世界を舞台にしたファンタジー作品である。

多彩かつ魅力的なキャラデザインや世界観、SRPGパートのバランスが優れた幅広い層に人気のシミュレーションRPG(派生作にはアクションRPGなどもある)である。


20年近く振りにサモンナイトシリーズをプレイしてみて、改めて思い出したことがある。

キャラクターや世界観がとてもよく伝わってくるのである。

そしてそれこそが、僕が前作に当たるサモンナイト3を大好きになった理由のひとつだった。

やはりまず目につくのはキャラクターのデザイン、イラストの可愛らしさ、親しみやすさ。令和の今みても十分魅力的だ。

キャラデザインもだが、召喚獣イラストの「塗り」がくっきり鮮やかでポップ感が強い。
サモンナイトシリーズの大きな魅力のひとつだとおもう。

リシェルのお気に入り?
射程の長さが戦術の幅を広げる。
召喚無効は戦略的な切り札になり得る。


かわいらしい。
魅了は戦士系に成功するとかなり強力。


中二的な魅力がある。
MP吸収は相手MP、継続ターン次第だが強い。


コミカルテイストも。
マヒや石化は敵を無力化できる。


マップ移動画面で召喚獣のプニムとポワソのあざとい可愛らしい動きにはやられた。
アラフォーのおっさんプレイヤーがである。
これはもうデフォルトで継承していくレベルだと感じた。

あざとすぎるプニム(左)とツッコミ役のポワソ(右)。
眠ったプニムを電撃で起こしたりする。
ポイント選択時や決定時の動きもかわいらしい。
ぜひ見てみてほしい。


そして、ストーリーだが、本質的には前作と通じる部分があると感じた。

現実の厳しさや心の弱さという点を描きつつ、同時に人の思いやりや個々の立場、考え方といったものをバランスよく採り入れている

問題が起きても、最終的には

「だよね!(総意)」

となるお人好し集団だ。安心感パねえ。
「揃いも揃って、みなお人好しの大馬鹿さ!」


他者を信じるということ。
リーダーに求められる資質だ。


前作でも触れられていたが、シナリオのテーマに

『召喚獣が人間の奴隷として扱われている』

という問題提起がある。

そして、それ故の悲劇も描かれている。

これはファンシーでポップな召喚獣と楽しく過ごしている世界をイメージしていた(半ば見て見ぬフリをしていた)プレイヤーに現実という冷や水を浴びせるに十分な効果を持つ。

なぜならそれは、召喚師にとって自己否定であり、ひいては召喚術によって発展、維持されている社会システムそのものの否定になるからだ。

世界を根底から揺るがすテーマである。

だが、彼ら召喚獣は意思を持っている。

住んでいた世界から呼び出され、労働力や兵器として『使役』されている存在だ。
逆らうことも出来ず強制的に働かせられる。

『奴隷』という表現に誰も反論できないことが見て見ぬフリをしている証左だ。

しかし、世界のルールには正義ではどうにもならない現実がある。
社会システムを根幹から支える歯車として組み込まれたものを変えることなど容易ではない。

間違っているのに、そうせざるを得ない。

今作では、大人が目を反らしている真実を純粋な心を持った(精神的に未成熟な)キャラクターを通して直視させてくる。


召喚術の否定は、世界の否定。


サモンナイトシリーズを好きな理由のひとつに、シナリオとシステム(ジャンル)がリンクしていることがある。

今まで記事で何度か書いたが、SRPGとは個人のチカラではなく集団としての──仲間のチカラを合わせなければ勝利できない。

そして、

物語の問題も主人公だけでは解決できない

主人公は時に悩み、道を間違えそうになることもある。


主人公も間違える。
個人的には、主人公だからこそ間違えてほしい。


そんな時、

胸に抱えた苦しみを仲間が聴いてくれる

支えてくれる

だから、主人公は前に進めるのだ。


物語もバトルも、
仲間がいるから主人公は進んでいける。


『間違いを許さない最適解で作られた世界』の記事にも関連することだが、人は過ちを犯す存在だ。

昨今はそういった描写が忌避される向きもあるようだが、

人の本質がそうである以上、真に人の心を打つのもまた、過ちを描き、それを受け入れ、立ち向かう姿にある



間違えないことを教えることも大切だが、
なぜ間違えるのか、間違えた時にどうするのかといったことも同じくらいかそれ以上に大切なことだとおもうのだ。



サモンナイト4では、仲間や大人の立ち位置にいるキャラクターが時に道に迷う主人公を導いてくれる。

そして、それを学んだ主人公は、それをまた過ちを犯そうとしている相手に伝えていくのだ。

過ちを犯す描写は前作3の主人公にも共通するが、今作4では若干15歳の少年少女である。
生い立ちもあり大人びているところもあるが、色々と不安定な年頃には違いない。
そういった設定から、より自然と未熟な言動が描かれている。

それにしても、ずいぶんしっかりした15歳だとはおもうが。
作中世界観では、成人年齢かのような扱いではある。
まだ中坊じゃねーか。

チューボーですよ!


展開の盛り上げかたも安定して上手い。
和やかなムードから、トラブル発生、アツいバトルパートへと起伏のある流れがプレイヤーの感情もうねらせ、先に進めたくなるモチベーションを生み出している。

そして、地味な点だが無視できないものに会話によるキャラクターや世界観の掘り下げがある。

さりげなく固有名詞(○○の派閥や有名人物、四界の存在など)を散りばめることで、シリーズファンサービスや未プレイヤーに対する誘引をしている。

まだ登場しないものに触れることで、想像力をプレイヤーに促す上手い演出だ。
会話の中で自然とやりとりされるため、説明臭くならず描写されている。

加えて、ストーリーには直接関係しないが、自然の美しさや趣味のこだわりなど、普遍的な世界・キャラクターの掘り下げがある。

大きな事件や特別な存在だけではない、身近にあるちいさな幸せや喜び、日々の楽しみなど丁寧なディテールを描いている。

キャラクターの役割も見せ場がちゃんとあり、空気キャラがいないと感じた。

この存在感はさすがである。

それはひとえに、キャラクターの『歴史』をきちんと描いているからなのだとおもう。

過去にどういったことがあり、それを通して自分がなにを思い、どうしたいと願ったのか。

そしてそれが今に繋がる行動原理として筋が通っている。

エピソードが因果としてしっかり描かれていることに感心させられた。

大きな出来事があったのに、まるでなかったかのような事後の扱いなど様々なジャンルの物語で見掛けることも珍しくない。

特にストーリーに比重が置かれたゲームというジャンルの物語はシナリオ分量が多く、分岐なども相まってフラグ管理もたいへんだとおもわれる。

だが、このサモンナイト4は、エピソードがしっかりと後に つながっている。

つらいことがあれば、後のイベントでもそのことにちゃんと触れている。

良くないことだと学んだら、それを受けて行動に移すエピソードがある。

細かな点ではある。
だが、こういった出来事を通してキャラクターがおもったこと、考えたことを丁寧に紡ぎ描いているからこそサモンナイトは筋の通った物語になっているのだと感じた。

だからこそ、キャラクターや世界が『飾り付けられたハリボテ』でなく本当に『生きているもの』として感じられるのだろう。

キャラや世界観、SRPGとしてのバランスが強く印象にあったが、改めてシナリオライターのすごさを感じた。
ライターは人間の本質や心の機微を丁寧に描くのが実に上手い。

個人的に、今作のテーマはプレイしていて分かりやすく前作以上に個々人の立場や目的がハッキリしていたようにおもう。

それは、提示された問題が

『他人事ではない』

ことに起因しているからである。
自分たちの行いが生み出した結果だからだ。

『召喚術の在り方』について語られるクライマックスは、リィンバウムに住むすべての者に問われたものであり、シリーズタイトルに付くサモン(召喚)そのものを考え直す根元的で深いものとなっている

そして、それは召喚術のみならず、他者や自然といった自己と世界の関係性にも通じる普遍的なものでもある。

すこしネタバレになるが、物語後半においてプレイヤーは重大な選択を突きつけられる。

これはシナリオの大きな山場であり、それぞれの想いがぶつかり合うシーンは見応えがあり心を揺さぶられる。
「揃いも揃って、みなお人好しの大馬鹿さ!」

終わり(別れ)が近づいている雰囲気も上手く出ており、プレイヤーは積み重ねてきた日々の重みを感じることになる。


起承転結を通してテーマを描き、きちんと終わらせる。
そしてそれを、ゲームプレイを通じてプレイヤーに体験させる。
とても完成度の高いゲームのストーリーだと感じた。

サモンナイトという物語が表現しているもの。
サモンナイトシリーズをあそんだプレイヤーなら、きちんとそのことが伝わっているハズだ。


○ミニゲームも。「ムイムイッ!」

サモンナイト3でもあったミニゲームが装いも新たに登場。

アイテム報酬があり、各話毎に貰える品が違うこともあるので、気にすると作業化するが、アクション要素などもありSRPGパートの合間の息抜きにちょうど良い。

今回は、釣りだけ継続でほかはアレンジされたり新規だったりする。

中でも屈指の難度と評されるガーデンパズルはこれだけでスマホアプリにありそうなゲームだ。古典の倉庫番に似ている。
サモンナイト4を語るには、これは避けては通れまい。

以下、基本ルールである。

・『はちうえ』に隣接した『ちょうちょ』を押して、つぼみをすべて開花させる。
※『ちょうちょ』は『はちうえ』に隣接してないと押せない。

・『はちうえ』は、押すとなにかにぶつかるまで進む。

・『ちょうちょ』は通過した『つぼみのはちうえ』を開花させ、なにもない空間に出るまで進む。

ちょうちょ、はちうえは押すのみ。
なにかにぶつかるまで進む。
(ちょうちょは空間に出ると止まる)



僕はステージ10がどうしても分からず攻略本を見たのだが、その解法の過程の美しさに感動してしまった。

一見シンプルで、かんたんそうに見えるが……。


この最後のひとつが鬼門である。 
解くには広い視点が必要になる。


N.K.「ふむふむ」(攻略本を読んでいる)

N.K.「あっ!?」

N.K.「ああーーーーーーっ!!!」


パズルで感動したなど生まれてこのかたない。

押すことのみのシステム制約の下、『はちうえ』『ちょうちょ』『地形』をフル活用して解くデザイン。

シンプル・イズ・ベストともいえるパズルゲームのお手本のような作品。
ある意味で本編にも通じるパズル的思考の奥深さを味わえる。

おそるべしフライトプラン(開発元)。


解法手順としての流れの美しさ、

ちょうちょと戯れるオヤカタの姿に庭師職人のプライドをみた。


(注.オヤカタは庭師でもなければ、ガーデンパズルも造園シミュレーションではない)


パズル好きは、このミニゲームのためだけにサモンナイト4を買うのもアリである。


オヤカタ……好きです……。(突然の告白)
なんで夜会話で選べへんの……。
そんなにあの女のことが好きか。



また宿屋経営という設定を活かした店の評判を上げる料理レシピ収集やサービス改善など簡易ではあるが楽しみがある。

星、みっつです!!!


○ネット上のレビューとの比較

有益性としては、僕個人の感想が一致していることが多ければプレイタイトル選びの参考になる。
そして、一般的(といえる程のサンプル数ではないが)な感性だと分かる。

逆に違えば、自分にない評価点や批判を知ることができる。

いくつかかい摘まんでみることにする。
評価点に関しては、概ね同様であると感じたので、気になった批判点について述べる。

・主人公の父親について
・隠し加入キャラの忍者について

これは倫理的な問題によるところだが、個人的には『そういうキャラも個性のうち』だとおもうのだが、一部のプレイヤーには不快に写ったようである。
捕捉するが、二人とも他者を思いやる心を持っていることに違いはない。


そして、衝撃的なレビュー。

Amazonである。
さすが大手通販会社。
レビューの数もサンプルが多い。
平均点は3.7。
可もなく不可もなく……。


レビューを読んでみると、あまりにも自身の評価と異なる批判に同じ人間なのかと疑ったほどである(言い過ぎ)。


お前らはサモンナイトシリーズで、いったいなにを学んできたんだ?(炎上)

「揃いも揃って、みな味音痴の大馬鹿さ!」


読んでいくうちにひとつの疑問が生じた。


サモンナイト4、もっといえばサモンナイトシリーズのプレイヤー年齢層はどうなっていたのだろうという点だ。


サモンナイト4のシナリオ、テーマ、キャラ描写は人生の苦味が強い傾向にある。

もしかしたら、それが若い層には受けなかったのではないだろうか。

それなら、先述のキャラ批判も込みでわからなくもない。
(いやでも最適解の記事の件もあるから令和という時代にそも合わないのか……?)

僕自身、20年前にプレイしていたらどう感じたかは確認のしようがない。

FF8などの例のように、作品の印象はプレイヤーの経験によっても左右され得る相対的、暫定的なものだ。

しかしドラクエシリーズのようにサモンナイトシリーズは国民的SRPGタイトルだった可能性がある。

実験的な思想が強かったFFシリーズに比べて、ドラクエのように定番の味が求められていたサモンナイトとしては今作4は少々好みが割れる仕様だったのかもしれない。

もし、昔あそんでつまらなかったというプレイヤーがこの記事を見たなら、ぜひ買い戻してでもプレイしてみてほしい。
今ならいい歳したおっさんおばさんだろう。

きっと全く違った印象を受けるハズだ。

それでも合わなかったら仕方ない。


俺とテメーは今日から敵同士だ。


※余談『作品の評価はだれが決めるのか』

今作のとあるキャラクターのエピソードで、純粋な創作が権威という影響により失われたことに失意するというものがある。
見るにはフラグ条件があるが、個人的に大好きなエピソードだ。

ありていにいえば、評価システムに利害が絡み中身でなく肩書きを見られるようになってしまう話だ。
現実世界でもよくあること。
なにを求め、満足するかというのは個人の自由である。

色々な要素が絡み色眼鏡なしで物事を見るというのは今は特に難しいのかもしれない。
他者の評価が違ったり、それ故に参考になることもあるだろう。

それでも、自分の心で感じるには、自身の舌で味わうしかない。


そしてそれこそが、本当の意味で世界に触れた感動を得るということなのだとおもう。


どんなに優れて正しい存在も、あなたの心が感じる想いを教えてはくれない


○シリーズ作品として。「なんか、ほっとする味なんだよね」

サモンナイトは、プレイステーションで1作目が出て以降、続編がリリースされ続けたシリーズだ。

同じ名前をタイトルに冠するということは、作品群になにかしらの『共通項』があるということになる。

基本的には、1作目で『好評だった要素』もしくは、シリーズを重ねる事に自然と培われていった『人気要素』が含まれる。



今回プレイしたサモンナイト4は、文字通りナンバリング4作目に当たる。

3と4の2作しかプレイしていないので(エクステーゼをすこしプレイ)、あまりわかったようなことは言えないのだが(今更)。

サモンナイトシリーズの人気は、

『キャラクターのイラスト』

『優れたゲームバランス』

『心の機微を丁寧に描き、優しさとシビアさが同居したシナリオ』

にあると感じている。

タイトル画面のBGMはサモンナイトの世界を包み込むやさしさを表現した名曲だ。

外見も中身も良いのだから、そりゃ人気出るわなという感じだ。

前作3と比較しても、SRPGパートは新要素を加えながらもバランスはそのままに、
キャラクターイラストも相変わらず魅力的で人間の本質的なテーマを描いた感動的なストーリーと押さえるところは押さえている。

過去作のキャラが時間経過により成長した姿で登場するなど、ファンサービスもしっかりしている。おじさん感動しちゃったよ。

シリーズものは、新規タイトルに比べてファンに支えられている部分が強い。

ファンはシリーズの好きな『らしさ』を期待する。

売り上げの見込みやすさがあるが、すこしでも舵取りを間違えると不評を買いやすいリスクもある。

もしかすると、それがネットレビューでみた批判点につながったのかもしれない。

最高傑作と謳われる前作がある故に、続編である今作に対するプレイヤーの期待感やゲーム会社の意気込みは当時は相当なものだったのだろう。

どうしても比較されてしまうので、評価も厳しめになっていたのかもしれない。

だが、20年近い歳月を経てプレイした率直な感想を述べれば、今作は3と比較しても遜色ない出来である。

3で魅力的だった要素はそのままに、あそびの幅やキャラクターの立場を変え新たなリィンバウムを描くことに成功した正統後継作といえる。
(夜会話の主観視点変更や恋愛描写が薄まったことなど批判はあるようだが)


○総論。「この味、筆舌に尽くしがたし!」

シナリオですこし補足がほしいと感じたところもあったが、ストーリーもバトルも洗練されてほぼ完成されているといっていい。

ヘタに変えようとせずに、このままでいてほしいとおもえる作品なのだ。

総じてサモンナイトシリーズとはキャラクター、ストーリー、システムといったすべての面において『バランスがよい』と感じる。

いってしまえば、SRPG版ドラゴンクエストともいうべき抜群の安定感があるのだ。
聞いたことはないが、三大SRPG、御三家などというものがあれば(つべで動画にしてる人が名称してた。納得)、間違いなく入っているほどのクオリティーを誇っている。

新作が出れば「とりあえず買う。サモンナイトシリーズなら間違いない」といえる国民的SRPGともいえるクオリティーがある。
当時買わなくてごめんなさい。

そのようなシリーズが終了しているのは実に惜しい。

ファイヤーエムブレムが売れて始祖が王足る地位を取り戻すのはうれしいことである。

だが、サモンナイトシリーズの多彩な種族や世界、親しみやすいキャラクターやストーリーと初心者から熟練者への導線が上手いSRPGの魅力を高いバランスで兼ね備えた稀有なシリーズが終わってしまうのは実にもったいない。

なんらかのカタチで継続してほしいとおもう。

僕にできることといえば、古い作品を掘り起こし、すこしでもその魅力を伝えることだ。

記事を読んでサモンナイトシリーズにすこしでも興味を持ってもらえたら、これほどうれしいことはない。

そして、もしよければ自身でもその感動を発信してみてほしい。

ひとことでもいい。


おもしろかった。

キャラがかわいかった。


そのひとことが、誰かが作品を知るきっかけになり得る。

想いが届き広がれば、シリーズ再起の可能性の光が灯るかもしれない。

すくなくとも、古いタイトルであそぶ さみしいおっさんプレイヤーがひとり救われる。

令和という時代の今だからこそ。
ぜひ手にとってプレイしてみてほしい。

ストーリーシーンの撮れ高、出撃キャラ選択やクラスチェンジの育成幅に長めのプレイ時間から本数を長く続けたい実況者向けでもあるとおもう。
親切な指示厨が丁寧におしえてくれるだろう。

絶対に損はさせない。

合わなければ好きなだけ僕をなじって頂いてかまわない。

ただし精神年齢がアラサー以降に限る。


サモンナイト4には、
人が生きる上で大切なことが詰まっている。



メルカリにて中古で350円(送料込み)。
ワンコインでおつりがくるが、
令和においてもフルプライス級の価値がある。




※余談

サモンナイト4はPSP版が出ており、色々と改善されているので特にこだわりがなければ そちらが推奨されている。

細かい点だが、プレステ2版から一部オミットされているところもあるらしい。

一例として、ゲーム起動時にサモンナイトシリーズキャラによる、

『ゲームをするときは部屋を明るくして離れてあそんでね。目をたいせつにね』


的なボイス入りメッセージがある。

たいてい関係性のある組み合わせでしゃべるバリエーションがいくつかあり、ファンサービスのひとつであるといえよう。

携帯機であるが故、削除されていたとしても自然なこととはおもう。(近くで見ることになるので)

だが、前作サモンナイト3で僕は初めて聴いて、キャラクターたちが話し掛けてくるような演出にちいさな感動を覚え、好きなところのひとつだった。

今作でも20年近く振りに聴くことが出来て嬉しかった。

些細なことではあるが、懐かしさを感じた。

サモンナイトは変わっていない。

電源を入れて、シリーズ未プレイ作品に期待と不安の入り交じる複雑な心境の中、帰ってきたような、迎え入れて貰えたような安心感があった。

本作の主人公が営む『忘れじの面影亭』に通じる精神性ともいうべきもの。

それはまさしく、多様な世界から召喚されたよそ者たちが混在して暮らし、仲間として受け入れてくれるサモンナイトのキャラクターたちそのものの体現だったのだ。


タイトル画面で放置プレイすると流れる。
なんと、ラスボスもしゃべる。
 キャラの意外な一面がみれるのも魅力だ。


※余談その2

書いてておもったけど、やはりこういう記事は(旧)Twitterなどよりnoteのほうがやりやすい。(さすがにこのくらいの記事は長すぎる)

昔、ツイートでnoteのリンク先貼り付けてたのをよく見掛けたけど、納得した。

流れの速度が速いSNSでは、『入り口』としての機能を持たせ入ってきたひとに じっくり読んでもらうという使い分けだったのかもしれない。まあ、この記事を読んでくれるひとがいるかはあやしいが。



※2024.4.16
誤字脱字、改行、加筆修正、記事リンク追加。

※2024.4.14
初稿。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?