レースゲームの多様性とジレンマについて考える。
競技としてのリアル、遊戯としての矛盾。
❗️注意❗️
本記事は素人による体験記や調査、考察記事です。
間違っている可能性もあるので話半分に読んでください。
有識者による指摘があれば感謝します。
○リアル系とゲーム系。
リアル系とは、実際の車の挙動や物理法則を再現し、ドライブシミュレーターとしての方向性を目指した作品。
代表的なものとして、グランツーリスモなどが挙げられる。
世界的にもヒットしており、車好きの需要が伺える。
ゲーム系とは、リアルではありえない挙動やコース設計を仕様としたパーティーゲームや対戦による駆け引きを追求した作品。
スーパーファミコンのマリオカートが始祖(と認識している)で、アイテム採用はレースゲームにおける あそびの質を変えた革命的作品。
亜流作品にも、同様の要素が含まれ後継に与えた影響は大きい。
○リアル系レースゲームの仕様
・車の挙動
なにはなくとも、これだろう。
物理演算を用いた現実的な車の動き、
慣性や摩擦係数といった物理法則から生まれる『クルマを動かしている』操作感は車好きを満足させるかどうかの十分過ぎる理由である。
・ダウンフォース
これは、車体を地面に押さえる上から下ベクトルのチカラの働きである。
押さえてどーすんだ遅くなんだろって昔はおもっていたが、これにはいくつか理由があったようだ。
まず、タイヤが地面と接地した状態で回転することでクルマは前に進む。
空転すれば進めないし、スリップもある。
タイヤが地面を捉えるためにはグリップ力が必要だが、その一助がダウンフォースである。
ミニ四駆では流線型フルカウルボディーが航空力学における空力効果により抵抗を減らし速くなる効果があると見たことがある。
実車に比して軽いミニ四駆などでは、アップダウンやキツいカーブで飛び出さないためにも重要である。
現行のレーシングカーでは加減速の変化に対応するため、車体重量は軽量化傾向にあるらしい。
中には可変式リアウイングなどで、コーナーと直線で空気抵抗を変化させるものもある。(ネットでみかけた気がする)
・リアルな世界観
上記にも含まれることだが、実際の自動車メーカーの車種、スペックに始まり、走行ダメージ、コース、天候、ボディに写り混み流れる景色など、コンピューターの性能を駆使して作られた現実を模倣した世界は驚くほどのリアリティーを感じさせる。
シミュレーターとしての側面が強い、
『再現性』というのがリアル系レースゲームにおける価値基準なのだ。
・ブレーキ
以前の記事でも扱ったが、リアル系レースゲームではブレーキの比重が大きい。
重量のある鉄の塊が高速で動いているのである。
速度を落とさずカーブを曲がるなどありえない。
だが、落とし過ぎても遅くなる。
最も速く曲がることを追求し、ギリギリを攻めていく。
アクセルタイミングやライン取りなどもあるが、このブレーキングもリアル系レースゲームにおける醍醐味であり、プレイヤーの腕の見せ所といえる。
チカラに使われずコントロールすることが、ゲーマーの矜持(プライド)である。
・タイムアタック
ゲーム系レースゲームにも採用されているが、特にリアル系において『ゼロコンマレベルでの速さへの追求』を体現したもの。
プレイヤーは何度も何度も同じコースを走り込むことで、コース特性を覚え、クルマの制御スキルを高め、走りを最適化していく。
覚えゲーシューティングにも通じるパターン化のひとつであり、行き着く先である。
○ゲーム系レースゲームの仕様
・ドリフト
代表的なもののひとつ。
コーナーにおいて、車体を横にすべるように移動させるテクニック。
見た目のカッコ良さや気持ち良さからか魅せ技としての側面が強い。
リアル系レースゲームではグリップ走法が速いといわれている(実際にはすこし横滑りしているらしい)。
・ロケットスタート
スタートで発進許可のランプ点灯タイミングでアクセルを踏むと超加速する。
リアル系ではありえないが、ゲーム系では爽快感の高さからか採用されることがある。
・コースギミック
およそリアル系ではありえないような設計により、高所から飛んだり、海に潜ったり、多様な障害物の妨害を受けたりする。
ゲーム系におけるコースのたのしみであり、飽きさせない作りになっている。
・スリップストリーム
これはリアル系に入れようか迷ったが、プレイ範囲で見掛けたのはゲーム系だった。
自分の前方を走る車が風避けとなり、真後ろを走る自機が空気抵抗を受けなくなることでスピードアップするシステム。
チーム競技の自転車レースで前を走る味方が後ろの味方の負荷を減らすために風避けとなることがある。
風の強い日などに自転車に乗るとよくわかるが、風の抵抗というのはかなり大きな影響がある。
ただ、リアル系だと(燃費的な向上はあるかもしれないが)目に見えてわかるような加速は現実的なイメージが湧きにくい。
実際どうなのか詳しいかたは指摘して頂けるとありがたい。
・ショートカット
上記に含まれる節もあるが、これもゲーム系の醍醐味といえる。
通常走行ではありえないタイムの縮め方が可能であり、これを探し、成功率を高めるプレイは格ゲーのコンボ練習にも通じる精神性を感じる。
あまりに極端だと公式で禁止されたり、リアルファイトに発展するリスクもある。
・ゴースト
これも以前の記事で扱ったが、いわゆるベストレコードを実際の走りとして映像再現したシステムである。
レースゲームには、周回単位のラップタイムやトータルでのタイムが表示され、これがひとつの目安となる。
だが、コーナーでのライン取りなどセクションレベルでの過程はわかりにくい。
具体的な走りの再現という意味でプレイ向上の参考になるし、なにより個人的には相手がいると『競っている』感覚がして好きである。
それが全盛期の自分であったり、特定のライバルレーサー(全一ランカーなど)を疑似再現したものだとエモい(エモーショナルな)気分に浸れる。
○対戦型レースゲームの定義
純粋な速さを競っているかという意味では矛盾もあるが、すくなくともルールとしては『ゴールが目的』という点でリアル系レースゲームと同一である。
ただそれが、『技術による速さの追求』から『アイテムによるランダム性や駆け引き』へと手段や求められるスキルが変わったということだ。
嗜好の差はあれど、レースゲームというジャンルの幅を広げた革命といえる。
○干渉の手段
おそらくゲーム系レースゲームの始祖とおもわれるマリオカートが採用した『アイテム』が該当する。
後発の亜流作品にも同様のシステムが多く、いかに画期的だったかを伺わせる。
以下に代表的な例を挙げてみる。
・スピードアップ
レースゲームなのだから、最も基本的な能力といえる。
ちなみに、速度とはトルク(加速・パワー)とレブ(最高速・回転数)とに分かれる。
作品によっては、加速効果のみのケースもあるが、これでは最高速重視のマシン(キャラ)は恩恵を受けられるが、もとより加速性能が高いと旨味があまりない。
スピードアップが活かせる最高のシチュエーションとしてはストレートセクションの入り口だとおもうが(これについては後述)、加速が低ければ最高速に達する前に終わるし、最高速が低ければせっかくのストレートセクションが活かせない。
・無敵
ゲーム系レースゲームでは、相手の妨害や障害物による大幅な減速が多い。
(一部例外はあれど)干渉を受けずに進めるというのは、特に混戦時や障害物の多いコースでは重宝する。
スピードアップも付いていることが多く、アイテムの中でも強力な部類になる。
・盗み
相手のアイテムを盗めるという、アイテムがある故の能力といえる。
これは、相手のアイテム次第なところがあるが、使わずに持っているだけでも相手への牽制になる。
特に上位はすぐに使うよりタイミングを見極めるために温存することがままある。
対上位に特に効果的といえる。
・飛び道具(直進型)
特に前を走る相手への妨害としてポプュラーなもの。
命中させるにはプレイヤーのエイムスキルによるところが大きいが、比較的入手しやすく、作品によっては妨害へのガード、障害物除去など汎用性がある場合もある。
・飛び道具(追尾)
文字通り、射出後に相手を追いかけるため命中精度が高い。
あまり遠いと効果がないこともあるが、比較的近くの前方を走る相手への妨害としては確実性が高い。
・飛び道具(一位狙い)
一位に当たるまでは原則追い続けるという強力な追尾型飛び道具。
作品により他の相手も巻き込むこともあり、下位であるほど効果が高くなる。
すこし差の付いた一位などに特に効果的。
・全体攻撃
自分以外の相手に対して、クラッシュ、スピン、スピードダウンさせたりする。
アイテムの中でも一、二を争うほど強力であり、逆転要素が高いため最下位用の救済的側面もある。
・罠
コース上に設置することで、相手が踏むことを期待、狙うタイプの妨害アイテム。
そのまま置いても回避されることが多いが、狭い通路や通りやすい場所、死角など置き場所を工夫することで当てやすくなる。
中にはアイテムボックスに擬態しているものもあり、使い方次第で有効。
○コース設計としての軽量優位
上記スピードアップでの項目で触れたが、コーナーの連続や上り坂、不整地などは速度を上げにくい。
無理に上げれば制御のしにくさも相まってコースアウトし、逆に遅くなることさえある。
なので、スピードアップを確実最大限に活用できるのは直線となるのだが、概ねコース設計において直線は少ない傾向が多い。
これは、直線が多いと単調になりゲーム性が担保しにくいためかとおもわれる。
が、その煽りを受けてか最高速重視のスペックは不遇になりがちである。
複雑な複合セクションは最高速の持ち味を活かしにくく、旋回性能や加速性能の高いものが立ち上がりやクリアにおいて優位であり優遇されがちである。
いつか現実のミニ四駆のモーター種別利用率データをみたことがあったが、一位トルク(加速)、二位バランス(中間型)、最下位レブ(回転数)というものがあった。
まあ、1サンプルでどうこうではないが、あそんできたレースゲームでは所感として概ねそうであった。
これには、複合セクションを最高速重視がスピードアップ(もしくは通常最高速)をできるだけ維持しつつクリアできる設計になっていることがひとつと、もうひとつコース設計に直線を増やす(最高速重視有利)ことをしても良いのではないかと素人ながらおもう。
テクニックはゲーム性として大事だが、直線をアクセル全開でかっとばす爽快感も大切で(序盤のコースだけじゃなく)もっと増えてもいいのではないだろうか。
○スピード競技としてのレースゲーム、その矛盾点と違和感
レースというのは、速さを競うものだ。
当たり前とおもわれるかもしれないが、ここに対戦ゲームとしての相性の悪さ……というよりジレンマのようなものがある。
これは、以前に記事にした対戦ゲームの好みの記事にも関連している。
格闘ゲームにおいてコンボとは『相手の干渉を受けない』要素である。(一部例外除く)
自分が操作をミスするか否か、自己完結としてのシステムなのだ。
そしてそれは、『スピード競技としてのレースゲーム』にも通じる。
レースというのは、速い者が先に進み、遅い者が後ろを行く。
この差が大きくなるほど両者に『物理的な距離の差』が生まれる。
その隔たりは、相手への干渉を失わせる。
(接戦していると、ライン取りの駆け引きなどが生まれる)
対戦ゲームの好みの記事でも書いたが、その本質は他者へ干渉することによるコミュニケーションにあると考えている。
レースにおける速さの追求は相手より速く走るという目的はあるものの、本質的には自己との戦いであり、なまじアイテムなどによる妨害での勝利は純粋な速さで勝ったとはいえず納得しにくいプレイヤーもいるだろう。
だが、差が大きく開いてからの逆転は難しく、相手のミスを期待するしかない。
これでは、一人でタイムアタックしたレコードを比較しているのとなにが違うのだろうかとおもうことがある。
だが、速さを競うとはそういうことである。
ゲーム系レースゲームは純粋な『スピード競技』としての矛盾を内包しており、リアル系は『対戦』としての干渉が著しく低い。
マリオカートは革命だったが、レースにおける速さを競うという点において自己矛盾も同時に抱えていたのである。
○まとめ
グランツーリスモシリーズもマリオカートシリーズも大ヒットの長寿看板タイトルである。
方向性は違えど、『ゴールを目指す』という目的において共通しており、スピードという快感を感じながらも、それを制御したり相手との駆け引きというゲーム性を盛り込みながらおもしろさを生んでいる。
過程や手段、作法に違いはあるかもしれない。
それでも、プレイヤーが目指している場所は同じなのだ。
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