消えていく伝統芸能(と諭吉)。

            積み重ねた時間に比例しない。


僕の住んでいる地域では、この時期に神社に奉納する花籠を作る行事がある。

花籠というのは、竹を切って組んだ土台に、これまた細く割った竹に色紙を切ったものを巻き付けた柳に見立てたものを差したものだ。

地域によって違う部分もあるようだが、概ね全国的な伝統文化であるらしい。

そして、作った花籠は祭りの当日に神社に納めるのだが、担いで石段を上がるためとても大変なのである。

年々作る集落が減ってきており、地域の境を越えて集まり作っているような状況にある。

人口は減るばかりで若い人も少ないので、おそらくはこのままいけばなくなるのも時間の問題かもしれない。

この度、初めて村の花籠作りに参加した。
今までは父親がずっと出ていたのだが、一緒に行ってきた。


N.K.「こんちはー」

村人「N.K.くんは老人じゃないだろう(笑)」

 ※村の老人会の集まりという名目である。

N.K.「いやまあ。中でもやってます?」

村人「ああ」


室内では先ほど説明した竹に巻き付ける柳を模した細工を作っていた。
色紙を折ってハサミで切れ込みを入れていく作業だ。


村人「最近は紙も手に入りにくくなった」

村人「昔は○□雑貨店で買ってた」


※○□雑貨は地域でレアな雑貨屋。
N.K.もガンダムのプラモデルや漫画など買うのにお世話になっていた。
格ゲーの筐体もあった。
今はもう閉店している。


村人「こうやって折って、切って……」

N.K.「ふむんふむん」

村人「今年も甲子園終わりかー」

村人「のり何年前のだこれ。温めてみるか」

村人「コロナで長いことやってなかったから」

村人「N.K.くん、こうやって竹を回して、紙は支えるだけで巻けるから」

N.K.「なるほどー」

N.K.(上から巻く時に色の順番があるのか)

村人「75本作ります」

N.K.(人数はいるけど時間かかりそうだな)

………
……

父「そろそろ帰るぞ」

N.K.「まだ終わってないけど」

父「焼き肉を食いに行く予定」

村人「予定あるならいいよ。来年もよろしく」

N.K.「すみません。失礼します」


絶滅危惧レベルの文化ではない。
調べると全国的にも珍しい行事でもない。

これを続けてきた人はどんな気持ちだったのだろう。
そもそも始まりも知らない。
続いているから、続けているのだろうか。

姪っ子の進学祝いを兼ねた焼肉屋で支払いをしながら、消えていくときなんて一瞬だよな、とおもった。


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