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別府アルゲリッチ音楽祭、大分公演。大分の街ごとイベントが満載でした。そして、かもしか書店さんとの出会いにも感謝。

大分の駅前にある芝生の広がる、広場のような遊歩道のような公園『大分いこいの道広場』
長方形が二つ、ゆるく、くの字につながっていて、芝生も、木々も美しく、ベンチもある。
駅前に、こんなゆったりしたスペースがあって、いいなぁ。
子どもたちが、芝生やそのそばのスペースで、リレーのバトンパスの練習をしてたり、大縄跳びをしていたり。

少し雨が降り出したので、モミジの下のベンチへ。

雨をうけて葉っぱは、瑞々しさを増し、淡く透きとおってきらきらしている。
細かく軽やかな雨粒たちは、樹の下にいる私にまでは、とどいてこない。

かすかな雨粒の音を聴きながら、真っ黒な、温泉蒸し卵を頂く。

駅前では、イベントを開催中。

二胡の演奏を耳にしながら、ゆっくりと、歩き出し、駅の反対側へ。
アーケードを通りながら、本日のコンサート会場、iichiko総合文化センター iichikoグランシアタへ向かいます。

建物に入ってみると、吹き抜けの中央のスペースでも、若い方達が、演奏している最中。

デスティネーションキャンペーン・別府アルゲリッチ音楽祭などの大分県で開催される大型イベントに合わせて、街中での芸術文化イベントがいろいろなところで、催されている。

本日は、アルゲリッチさんとクレーメルさん
デュオの世界〜一期一会

曲目が変更になり、『演奏家の強い希望により、戦禍のウクライナで苦難に喘ぐ人々に捧げたく、ウクライナと旧ソ連構成国ジョージア出身の作曲家の楽曲をお届けします。』

クレーメルさんは、ラトビア(出生当時は旧ソ連)出身。モスクワ音楽院でも学び、のちにドイツに亡命されておられる。

1曲目の作曲家ヴァレンティン・シルヴェストロフさんは、ウクライナ、キーウ出身、1937年生まれ。
シルヴェストロフさんとクレーメルさんはご親友であられるそうで、クレーメルさんのために作曲され、クレーメルさんによって初演された「献呈」という曲もあるそうです。
今回は独奏ヴァイオリンのためのセレナード。

ほの暗く、がらんとした空間から、静かに聴こえる調べ、途切れ、途切れ、立ちどまり、喘ぎ、すすり泣くような、でも、時おりさしてくる光を仰ぎ見て、ほほえみ、希望を胸に、祈り、歩み続ける。
そんなイメージ。

2曲目の作曲家イゴール・ロボダさんは、1956年ジョージアのトビリシ生まれで、ヴァイオリン独奏のためのレクイエムは、2014年のウクライナ紛争の犠牲者に捧げられた曲。ドニエプル川に関するウクライナの民謡のメロディーに基づいている。

静寂を鋭く裂くような、緊張感のある出だし。
そのあと、つかの間、美しい旋律が、流れ出す。
しかし、それも不穏なざわめきに取って代わられ、無秩序、悲鳴、混沌とした世界が繰り広げられる。ふっと、懐かしいメロディが、浮かび上がり、ピチカートで奏でられる。それも少しだけしか続かない。
低くうごめく、不穏さの中に、淡々と刻まれるリズムは、なんだろう。迫ってくるような、遠ざかっていくような。
その鼓動だけがピチカートで、刻まれる。
他の音が無くなって、最後まで、最後まで、淡々と刻む。
そして、とまる。

3曲目の作曲家、ミェチスワフ・ヴァインベルクさんは(1919-1996)は現モルドバ共和国にルーツを持つユダヤ人で曾祖父も祖父も1903年に起こった「ポグロム」で虐殺された。その後ワルシャワに移った一家は1939年ドイツのポーランド侵攻の際に離散。のちに両親と妹が収容所で虐殺されたことを知る。本人はショスタコーヴィチの助力でモスクワに移るも反ユダヤ主義の標的となり1953年逮捕され処刑寸前だったが、スターリンの死亡で九死に一生を得る。
その年に作曲されたのが、今回演奏された第5番。

民謡調の旋律のピアノで静かに始まり、ヴァイオリンがその旋律を追ってくる。
なにか、『しんしんと雪が降る中、ひとりの旅人が・・・』なんて始まる日本昔話のバックミュージックみたい、なんて思ってしまう。
静かな孤独をまといながら、ゆるゆると転調し、少しずつ変容していく。
追い立てるような、追いかけられるような、激しさと、静けさ。とらえどころなく、あてどもなくさまよい、エネルギッシュに進み、懐かしいメロディが、そして、穏やかさに包まれる。
そして、不穏さも、悲しみも混ざってくるけれど、力強さが加わり、希望もあるような。
静かに、迷うように、だんだんゆっくりと、重い足取り、とぎれつつ、祈りのような、鎮魂のようなメロディーを伴い、かすかな悲鳴のような、希望のような余韻を残し、すぅっと吸いこまれて消えていく。

休憩のあとは、
アルゲリッチさんのソロ。
ラヴェルさんの水の戯れ、と思ったら、シューマンさんの幻想小曲集の7番、夢のもつれ。
軽快に、楽しそうに。
そして、続けて、水の戯れ、へ。
あまりに、きらきらはじけて、軽やかに、さらっと通り過ぎていってしまうようで、もったいなくて
“ちょっとまって、時よ、とまれ!”って。念じる。
(とまったら聴けないけれど••)

最後に、シューベルトさん。
なにげないメロディーが、なんて美しいのでしょう。胸にしみます。
二十歳の頃のシューベルトさんのこの曲は、日向ぼっこしてるみたいに、のんびり、あたたかくて、穏やかで、朗らかで、、それを、お二人が、自然体で美しく、謳い上げてくださるのが、本当に素敵です。

アンコールはアルヴォ・ペルトさんの曲。
1935年エストニア生まれのこの方、現代音楽の技法を身につけた、のち、グレゴリオ聖歌など中世の単旋聖歌、ルネサンス期の多声聖歌など「祈り」の音楽の探求に転じ、簡素な音の組み合わせを、まるで鈴の音が鳴り続けるように一定のリズムで繰り返す「ティンティナブリ」という技法を見つけ、独自のスタイルの確立を印象づけた。そうです。
この曲も、静かな祈り、美しく厳かな祈り。そのもの。

最後の曲、ピアソラさんは、アルゲリッチさんと同じ、アルゼンチン出身の方。
美しさと、リズムと、懐の深さが絶妙。
特にアルゲリッチさんの、どっしりした中で、時おり、煽ると言うか、ノセる感じというのか、ブルンとスロットルを上げるかのような、、均一ではない、ちょっとけだるげな、勢い。
伝わってるか分からないけれど、そこが、なんとも好き。
最後の最後が、この曲。
お二人の演奏、選曲も、かっこよすぎです。
本当に素敵な時間をありがとうございました。

興奮さめやらぬまま、街をうろつき、なにげなく立ち寄った、本屋さんがまた素敵でした。
かもしか書店さん
古書だけでなく、新刊もあり、カフェもあります。
とっても入りにくいけど、とっても落ち着く空間が広がっています。

りんご牛乳美味しかった。

色々、興味深く、楽しい場所でした。
また、大分行った時には、絶対行きたいです。
ありがとうございました。











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