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臨床推論 Case74

Radiol Case Rep. 2022 Oct 6;17(12):4774-4779.
PMID:36238205


【症例】
70歳 女性 既往なし

【受診理由】
頭部腫瘤陰影精査

【現病歴/現症】
⚫︎ 3-4週前に突然の意識消失を認め近医を受診された
⚫︎ 目撃した夫によると、患者は反応がなくなり、15-30分は無気力な状態になっ
ていた
⚫︎ そのときは外傷はないが、便失禁を認めた
⚫︎ それ以降持続的なふらつきのエピソードと書字障害を認めている
⚫︎ CTで左大脳に1.5cmの亜急性の硬膜下に液体貯留があり、2-3mmのmidline shiftと浮腫を認めていたため、近医より紹介となった

⚫︎ 頭痛や背部痛、発語障害、全身症状はない
⚫︎ 右上肢は若干Barre sign出ている その他の神経学的異常なし
⚫︎ バイタルや採血は異常なし

⚫︎ 単純CTは以下の通り 
  左前頭頭頂葉に1.6cmの液体があり硬膜下血腫あり、同部位の頭皮に血腫あり

⚫︎ 造影MRIを施行した
・左前頭頭頂部に隣接する脳溝の拡張と浸潤を伴う硬膜と類似した造影効果を示す腫瘤病変あり
・頭頂部には浮腫を認め、正中線は右方に移動している

⚫︎ これらの所見から悪性腫瘍が疑われ、腫瘍摘出術を施行された
⚫︎ 病理では異形小リンパ球を認め、大きさの異なる胚中心が数個認められた
⚫︎ リンパ球はCD20+BCL2+CD10-BCL6-cyclinD- κ鎖+λ-
⚫︎ 他の部位には浸潤なし


What’s your diagnosis ?









【診断】
原発性硬膜MZBCL 1E期

【経過】
⚫︎ 放射線およびリツキシマブ単独で治療し経過は良好であった

【考察】
⚫︎ 硬膜リンパ腫(PDL)は中枢原発性リンパ腫(PCNSL)のまれな亜型である
⚫︎ 頭蓋内腫瘍の3%を占める
⚫︎ HIVや臓器移植後患者などの免疫不全患者に見られる
⚫︎ PCNSLは何かしらの症状を認める
  頭痛 神経障害 脱力 歩行障害 意識障害など
⚫︎ PCNSLは硬膜下血腫や髄膜腫など他の疾患と誤診される疾患である

髄膜腫っぽいリンパ腫(Insights Imaging. 2019 Dec; 10: 11.)

⚫︎ 単発性または多発性の不規則な三日月状で鮮明な造影効果のある腫瘤である
⚫︎ リンパ腫の周囲が浮腫をきたすことがある
⚫︎ 脳のMRIはT1で灰白質と同輝度、T2で等輝度から低輝度である
⚫︎ DWIでは拡散制限によりhighにうつる
⚫︎ 骨や髄膜に浸潤することがある

⚫︎ 硬膜にできる腫瘤病変は血腫、髄膜腫、転移、線維性腫瘍、平滑筋肉腫など鑑別は多岐にわたる

⚫︎ 髄膜腫と比較してPDLの鑑別ポイントは以下の通り
・腫瘤が比較的平坦であること
・硬膜尾部が長いこと
・石灰形成はまれであること
・頭蓋の過形成/骨増生がないこと
・腫瘤が葉状であること
・腫瘤と脳の境界があいまいであること
⚫︎ 髄膜腫や転移性病変より拡散制限をうけやすくDWIでhighになる
⚫︎ 代謝が活発なのでPETで光りやすい

⚫︎ 転倒歴があればまず血腫を疑われ、誤診される

完全に見た目は血腫なPDL(Cureus.2020 Feb; 12(2): e7043.)

⚫︎ しかし増悪してくるのであればPDLの可能性を考える必要があ

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