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臨床推論 Case67

Cureus. 2023 Dec; 15(12): e50429.
PMID:38222246


【症例】
48歳 男性

【既往歴】
高血圧症 心筋梗塞 慢性心不全
20年以上前に糸球体腎炎になり4年前から血液透析

【現病歴/現症】
⚫︎ 入院4ヶ月前に倦怠感と乾性咳嗽を主訴に受診された
⚫︎ XPで胸水貯留あり、溢水と考えられドライウェイトを減らし、オーグメンチンとアジスロマイシンで治療された

⚫︎ 症状が改善しないまま二ヶ月経過した
⚫︎ 胸部Xpで両側の胸水貯留を認めた

⚫︎ レボフロで改善なし
⚫︎ 胸水穿刺、胸膜生検まで施行されたが原因を特定することができず
⚫︎ Light基準では滲出性に該当した
⚫︎ 診察では下腿浮腫を認めた
⚫︎ CTでは心嚢液貯留も認めた


⚫︎ もろもろのラボデータは以下の通り


What’s your diagnosis ?








【診断】
甲状腺機能低下症に伴う腔水症

【経過】
⚫︎ レボチロキシン低容量12.5μgから治療開始し退院時には50μまで増量した
⚫︎ 7ヶ月後の外来フォローで倦怠感や下腿浮腫など症状すべて消失していた
⚫︎ Xpも改善していた

【考察】
⚫︎ 甲状腺機能低下症は末梢の浮腫より頻度は低いものの、腹水、胸水、心嚢液貯留を認めることがある
⚫︎ これらの症状は血管透過性亢進、ムコ多糖の血管外浸潤、SIADHなどが関連するとされている
⚫︎ 甲状腺機能低下症はさまざまな非特異的な症状を呈するため、診断が遅れる

⚫︎ 胸水貯留は10-30%で認められるが一般的に少量で臨床症状に乏しく過小評価されている可能性がある
⚫︎ 一般的には滲出性であるが、漏出性にもなりうる

⚫︎ 心嚢液貯留はまれで3-37%という報告あり
⚫︎ 心タンポナーデをきたした報告もある

⚫︎ 腹水はまれで4%と報告あり
⚫︎ 腹水全体の原因の1%未満である
⚫︎ SAAG>1.1g/dL、蛋白>2.5g/dLになるがSAAGが低い報告もある

⚫︎ 孤立性の腔水症はしばしば経験されるが今回のように全身性に認めるのは稀である

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