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臨床推論 Case127

Medicine(Baltimore). 2018 Mar; 97(9): e0002.
PMID:29489640

【症例】
40歳 女性

【主訴】
発熱 嘔吐 ふらつき

【既往】
HIV:直近のCD4は810
潜在性甲状腺機能低下症
高血圧
糖尿病

【現病歴】
⚫︎ 2日前からの発熱・嘔気・嘔吐・めまいで受診された
⚫︎ 吐血や血便はなし
⚫︎ 悪寒はあるが戦慄まではない

【経過①】
⚫︎ バイタル:BT38℃ BP125/75mmHg HR112bpm SpO2 100%(RA)
⚫︎ 診察:腹部全体に圧痛あり その他は特記すべき異常なし
⚫︎ ラボは以下の通りで肝酵素上昇あり


⚫︎ CTでは明らかな異常なく、MRCPも異常なし
⚫︎ 胆管炎として抗生剤加療したところ3日目の採血で肝機能は正常化していた

【経過②】
⚫︎ しかし抗生剤続けていたが熱は持続した
⚫︎ day7に体温40℃、低血圧、頻呼吸、SpO2 88%まで低下しICU入室となった
⚫︎ エコーで右室負荷所見あり
⚫︎ 造影CT検査を施行したところ以下のような画像であった

What’s your diagnosis ?







【診断】
肺塞栓症(による発熱)

【経過③】
⚫︎ エコーでDVTあり
⚫︎ tPA投与後にヘパリン持続を開始した
⚫︎ day9にガリウムシンチを施行したところ肺以外に集積はなく、他の病気は考えにくかった
⚫︎ 抗凝固剤開始後3日で解熱した

⚫︎ day11に抗生剤終了したが問題なく経過した

【考察】
⚫︎ PIOPEDという大規模な肺塞栓のstudyで発熱は14%、うち39℃以上が6%いた
⚫︎ この報告では熱が出たからといって重症度や予後には関連しなかった
⚫︎ しかし別の報告では発熱がある方が重症で予後が悪いという報告もある(BMJ Open Resp Res 2018;5:e000327. )

⚫︎ しかし実際は難しい問題で感染症など他の疾患の除外は必要である
⚫︎ 本例のように主治医は発熱という理由だけで不要な抗生剤を入れてしまうだろう

⚫︎ 肺塞栓による発熱の機序はあまりはっきりしない
・ 血管への刺激による炎症、補体活性化
・ 肺梗塞による組織壊死
・ 無気肺とそこへのoccultな感染

⚫︎ 肺塞栓は>39℃あれば可能性は低いと報告もあれば、39℃を超えたケースレポートは多数報告あり
⚫︎ 肺塞栓は抗凝固剤で通常72時間以内に平熱になる
⚫︎ DVTも不明熱の原因となり、抗凝固剤で速やかに解熱する(Surgery. 1997 Apr;121(4):366-71.)

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