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臨床推論 Case188

Cureus 16(7): e64707.

【症例】
50歳 女性

【経過①】
■ 子宮類内膜腺癌 GradeⅡに対して子宮と付属器摘出+ケモ+ホルモン療法施行された.
■ 2年後のフォローCTで臍部に2cm大の結節あり.


What’s your diagnosis ?







【診断】
類内膜腺癌の臍部への転移(シスター・メアリー・ジョセフ結節)

【経過②】
■ 臍部の生検から類内膜腺癌を認めた. 他に肺と腹膜に転移・播種病変を認めた.
■ 患者は緩和的化学療法を受けている.

【考察】
■ シスター・メアリー・ジョセフ症候群は臍部への皮膚転移が特徴である. 腹部骨盤臓器の癌(泌尿器・生殖器・消化管)の1〜3%に発生すると推定される稀な臨床徴候である. 最も一般的な組織型は腺癌(75%)で, 予後不良であり治療しない場合の平均生存期間は2〜11ヶ月と推定されている.

■ 腫瘍が臍に播種する機序はいくつかの仮説がある.

▫️ 臍の豊富な動脈血管化による血行性播種と, リンパ性播種が関係しています. 臍領域は, 深部ネットワーク(傍大動脈, 内胸, および外腸骨リンパ節を含む)と表在性ネットワーク(腋窩および鼠径リンパ節を含む)からなるリンパ灌流がある. リンパ行性に播種していく.
▫️他の仮説として, 腹膜の直接侵襲や手術後の偶発的な播種が考えられる.

■ 腺癌が最も多い組織型で, 症例の75%を占めている. しかし, まれに扁平上皮癌や未分化癌としても現れることがある. 男性では消化器癌が多く, 胃腸癌が30%, 大腸癌が25%, 膵臓癌が18%を占めています. しかし, 女性では婦人科癌が最も多く, 卵巣癌が34%, 子宮内膜癌が12%, 子宮頸癌が5%を占めている.

■ 臍転移は不規則で, 硬いまたは弾力性のある, 様々な大きさの結節として現れ, 痛みを伴ったり, 潰瘍化したり, 滲出液を認めることがある. 臨床的に, 他の良性病変と区別がつきにくいことがしばしばある. .

■ 超音波検査, CT, MRI, PETなど検査が必要であり, 解剖および病理学診断を確認し, 原発腫瘍を特定する必要がある.

■ 鑑別:臍部子宮内膜症, 臍ヘルニア, 良性臍原発腫瘍(表皮嚢胞, 母斑, ケロイドなど), 基底細胞癌や扁平上皮癌, メラノーマ, 肉腫などの悪性腫瘍, クローン病, 化膿性または異物肉芽腫, または血管腫の臍局在など.

■ 治療は通常緩和治療となる. しかし, 手術+ケモなど積極的な治療介入は生存率を改善する可能性があり, 手術後に補助療法を受けた患者は, 化学療法単独または手術単独で治療を受けた患者よりも平均生存期間が長くなる可能性がある.

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