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臨床推論 Case125

BMC Rheumatol. 2022 May 19;6(1):26.
PMID:35585632

【症例】
47歳 男性

【主訴】
指先の色調変化

【既往】
左下肢表在静脈炎:繰り返すためリクシアナ内服中

【現病歴】
⚫︎ 指先が青白➡︎真っ青に変色し、痺れが出現してきたため受診された
⚫︎ 関節炎、咳嗽、口内炎、皮疹など他の自覚症状はない

【現症】
⚫︎ 診察:指は蒼白(アクロチアノーゼ)、多毛で白色爪であった
  毛細血管拡張、潰瘍、指の腫脹はない

⚫︎ ラボ:Hb15.3 PLT47.9万 CRPやCreなど他は正常
    ANA320倍(Speckled)
⚫︎ ダーマスコピーで爪上皮毛細血管は異常なし

【経過①】
⚫︎ 何かしらの2次性レイノーと考えられアセチルサリチル酸で対応された

⚫︎ 24ヶ月後に両下肢の対称性の脱髄性の運動感覚神経障害が出現し動けなくなった
⚫︎ ギランバレーの診断でIVIG5日間投与したが改善なし
⚫︎ 再度抗核抗体測定したところ1280倍(Nucleolar)であった
⚫︎ 電気泳動検査でIgGλの検出ありVEGF827pg/mLと上昇していた

⚫︎ リウマチ科からALアミロイドーシスでは?と提案があったが自律神経、手根管症候群、アミロイドーシスらしい皮膚(紫斑 巨舌 皮下結節など)なし
⚫︎ アミロイドーシスでレイノーきたす報告例はあり
⚫︎ またクリオグロブリンはどうかと提案があったがクリオの神経障害は通常軸索型である

⚫︎ 血液内科からレイノー、VEGF上昇、白色爪、IgGλのM蛋白、多毛から⚫︎⚫︎ではと提案があった

What’s your diagnosis ?









【診断】
POEMS症候群

【経過②】
⚫︎ 骨髄検査では過形成骨髄で異形形質細胞を5%認めた
⚫︎ LDを実施したところレイノー、アクロチアノーゼ、白色爪は改善した
⚫︎ 神経障害も改善し半年後には動けるようになった

【考察】
⚫︎ POEMSはまれな病気で日本人は推定0.3/10万人である
⚫︎ POEMS症候群の皮膚は68-90%で認める
⚫︎ レイノー現象は稀で見落とされるが本例のように初期症状の可能性もなりうる
⚫︎ MayoのPOEMSの皮膚異常は平均2.9個認めた

⚫︎ 強皮症様の皮膚変化は26-77%、局所の皮膚肥厚は16%あり
⚫︎ VEGFは血管透過性亢進と微小血管増生を促す
  他に血管攣縮にも寄与する
⚫︎ 強皮症もVEGFが増加する報告あり
⚫︎ しかしPOEMSと強皮症の皮膚病変の機序は全く別物である
⚫︎ 強皮症は細胞外マトリックスのターンオーバーのバランスの破綻である
⚫︎ 外傷後の膠原線維の修復の異常があり、線維芽細胞が異常に活性化してフィブロネクチンとtype1コラーゲンが増加して、過度の細胞外マトリックスが合成される

⚫︎ 抗核抗体とPOEMSについて調べた文献はない

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