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感染性動脈瘤の画像

Insights Imaging. 2022 Jan 8;13(1):2.
PMID: 35000044


【イントロダクション】

■ 感染性大動脈瘤(INAA)は, 診断がむずい. 西洋諸国では全大動脈瘤のわずか0.6‒2.6%, アジアでは最大13%である.

■ INAAは, 色々な機序で発症する.
(1)感染性心内膜炎からの敗血症性塞栓が大動脈壁に定着する
(2)菌血症時に血流によって大動脈壁に細菌が付着する
(3)血流によって運ばれた細菌による既存の動脈瘤の感染
(4)ヒト免疫不全ウイルス感染症が進行した患者に動脈瘤が発生する.

■ INAAのプレゼンは多様で非特異的な症状のため, 診断の遅れや見逃され致命的な結果につながる可能性がある.

■ 腹部大動脈瘤に関する欧州血管外科学会2019ガイドラインでは, INAAの診断には, (1)臨床症状, (2)検査所見, (3)CT所見の組み合わせで診断することを推奨している. 特にCT検査が診断に寄与する. 典型的なCT所見としては, 嚢状, 多房性または偏心性の動脈瘤, 大動脈周囲のガス, 軟部組織腫瘤, 急速拡大または破裂あるいはその両方, 非定型的な位置(例えば, 臓器近傍), および異なる部位の多発動脈瘤が報告されている.

■ 今回INAAを集積して画像の解析をした

【患者のキャラクター】
■ 114例の患者

■症状および併存疾患

■ ラボデータおよび血培
▫️CRP上昇しているのは51%のみ
▫️血液培養は40例(35.1%)で陽性であった. しかし約半数(47/114, 41.2%)は, 血液培養を採取する前に抗菌薬投与を受けており, そのうちのごく一部(7/47, 14.9%)のみが培養結果が陽性であった.

【感染動脈瘤の特徴】


■分布は, 大動脈弓部(12/132, 9.1%), 下行大動脈(9/132, 6.8%), 胸腹部大動脈(4/132, 3%), 腎動脈上(3/132, 2.3%), 腎動脈近傍(17/132, 12.9%), 患者の半数で腎動脈下(67/132, 50.8%), 大動脈腸骨(20/132, 15.2%)であった.

■ 12人(10.5%)の患者で多発動脈瘤が認められた.

■ 132の動脈瘤のうち, 嚢状が116(87.9%), 紡錘状が16(12.1%)で, そのほとんどが多房性の輪郭を示した(121/132, 91.7%).

■ 最大横断径で測定した平均動脈瘤嚢のサイズは6.2±2.3cmであった. 132の動脈瘤のうち56(42.4%)では破裂の兆候は認められなかった.



【破裂所見】

■ 本研究における破裂所見なし(Fig.3a)56(42.4%), 切迫破裂所見あり(Fig.3b)35(26.5%), 破裂して被包化あり(Fig.3c)が36(27.3%), 遊離破裂(Fig.3d)が5(3.8%)であった.

【動脈石灰化】

123/132(93.2%)で石灰化大動脈プラークの関与が認められ, 5つのタイプに分類された. 最も多かったのは動脈瘤壁内の石灰化を伴う嚢状動脈瘤のタイプ3で患者の半数に認められ(68/132, 51.5%), 次いで動脈瘤頸部の石灰化を伴う嚢状動脈瘤のタイプ1(38/132, 28.8%), 内膜の石灰化を伴う紡錘状動脈瘤のタイプ4(14/132, 10.6%)の順であった.

【大動脈周囲組織の特徴】

大動脈周囲の造影効果(125/132, 94.7%), 脂肪濃度上昇(124/132, 93.9%), 軟部組織腫瘤(122/132, 92.4%)が最も一般的な大動脈周囲所見であった(Table 3, Fig.5a). 患者の約3分の2(82/132, 62.1%)で大動脈周囲リンパ節腫大が認められた(Fig.5b). あまり頻度の高くない所見は, 大動脈周囲の液体(22/132, 16.7%)と異所性ガス(17/132, 12.9%)であった(Fig.5c, d).

【周辺臓器障害】

■ 腹腔内では,腸腰筋(19/107, 17.8%)と腎周囲(3/107, 2.8%)の2つであった(Table 4, Fig.6a, b). 大動脈下大静脈瘻はまれに認められた(1/107, 0.9%)(Fig.6c). 腸管(2/107, 1.9%)(Fig.6b)などの中空臓器の関与は腹部ではほとんどなかったが, 胸部では食道(Fig.6d)および気管支の合併症がそれぞれ最大20%(5/25), 16%(4/25)と比較的多く認められた. 脊椎炎は, INAAの部位に関係なく, 周囲構造の関与の11.4%(15/132)で認められた(Fig.6a).


【考察】
■ 大多数が多房性輪郭と腎動脈下大動脈の嚢状動脈瘤を有していた. また, これまでの概念とは異なり, これらの動脈瘤の多くに動脈硬化性プラークが含まれていた.

■ 動脈瘤壁の石灰化は変性大動脈瘤でよく認められるが, INAAではほとんど報告されていない. INAAの病理報告では, 動脈硬化病変に急性全層性炎症が起きるのが典型的な病態であることが示されており, 石灰化プラークがINAAの一般的なCT所見であることを裏付けている. したがって, 石灰化プラークの存在はINAAを変性大動脈瘤と区別することはできない. さらに, 腎動脈下大動脈はINAAと変性大動脈瘤のともに最多部位であり, INAAは動脈硬化症を引き起こす併存疾患を持つ高齢患者多いということを示唆している.

■ 損傷された大動脈壁に関与する炎症過程は, 嚢状形状, 多房性輪郭, 初期の大きな動脈瘤嚢, およびサイズの急速進行などが特徴.

■ さらに, CT所見からの動脈瘤の破裂所見(すなわち, 切迫破裂, 被包破裂, または遊離破裂)も, 半数以上で認められた.

■ 大動脈周囲は, 感染とそれに続く炎症の二次的なものと考えられる軟部組織腫瘤, 造影効果, fluid, および脂肪濃度上昇であった. 大動脈周囲リンパ節腫大が本研究では患者の3分の2で認められた. 感染の活動性とINAAの治療反応を判断する上での役割は, 将来の研究者にとって別の機会となるかもしれない.

■ 周囲構造に関連する特徴は, あまり注目されていなかった. INAAが二次的に炎症が波及することがあるため,緊急で対処する必要がある. 腸腰筋は, 膿瘍の原発部位であるか, 破裂したINAAによる血腫の二次的な部位である可能性がある. これらの病因はCTでは区別できず, 検体を採取する必要がある.

■ 異所性ガスは, 感染の証拠であることに加えて, 消化管構造または気管支の関与を疑う必要がある. しかし, 本研究では動脈瘤から隣接臓器への造影剤漏出は見られなかった. しかし大動脈瘻の確定診断は, 症状で出血している時に画像をとる必要がある. 本研究では胸部INAAでは食道と気管支との交通が, 腹部INAAでの腸管関与よりも多かった. 脊椎炎と腎周囲の関与も過去の研究で報告されているように稀であった. 大動脈-下大静脈瘻はこれまでにわずかな症例報告しかない.

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