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臨床推論 Case92

Intern Med. 2023 Jun 15;62(12):1849-1855.
PMID:36351576

【症例】
78歳 男性

【既往歴】
気管支喘息
前立腺癌:γナイフ治療後
高血圧症
糖尿病
軽度の腎機能障害
僧帽弁閉鎖不全症

【内服】
降圧薬、血糖降下薬で長年同じ薬を内服している

【現病歴/現症】
⚫︎ 11年前に他院で顎下腺腫瘍を指摘され、摘出されている

⚫︎ 2年前に左顎下腺が腫脹し、再び近医を受診された
⚫︎ その際にIgG4 457mg/dLと高値であった
  末梢血好酸球は490/μgであった
⚫︎ IgG4関連疾患を疑われ当院紹介となった
⚫︎ PET検査では左顎下腺に高度の集積を認めた


⚫︎ 摘出したところIgG4陽性形質細胞100/HPFでIgG4/IgGは90%で、花筵状の線維化を認めた


⚫︎ 切除後は無投薬で1年経過観察となった

⚫︎ 9ヶ月前に五十肩に対してケナコルト注射をうけた
  その際に末梢Eo10800/μL→1824/μLまで低下した

⚫︎ 3ヶ月前に著明な好酸球増多と全身性に多発リンパ節腫脹を認め、入院となった
⚫︎ ラボは以下の通り

⚫︎ 骨髄検査では芽球や異常細胞を認めず、好酸球増多のみ
⚫︎ フローサイトメトリーで異常T細胞サブセットは認めず、FIP1L1などの遺伝子検査も陰性であった
⚫︎ CTでは全身性にリンパ節腫脹あるも、固形腫瘍を疑う病変は認めず
⚫︎ 腋窩のリンパ節を生検したところ前回同様の病理像であった

What’s your diagnosis ?








【診断】
IgG4関連疾患に伴う好酸球増多症

【経過】
⚫︎ 患者はステロイド治療は希望されず
⚫︎ 肩に再度ケナコルト注射したところ好酸球は正常値になったので一旦退院となった
⚫︎ しかし再度好酸球上昇が持続したためステロイド30mgで導入し2週間ごとにテーパリングしていった
⚫︎ 良好な経過を辿った

【考察】
⚫︎ IgG4 RDの71%でアレルギーを認め、40%で末梢血好酸球増多を認める
⚫︎ この患者同様にIgG4RDの71%で喘息の既往がある
⚫︎ IgG4-RDにおいて頭頸部病変あり(OR2.02)、末梢血好酸球増多(OR3.27)はアレルギーのリスク因子となる
⚫︎ 通常は軽度-中等度で重度の好酸球増多を認めることはほとんどない
⚫︎ 好酸球>3000は2019 ACR/EULARのIgG4-RDの診断基準の除外項目にあたる

⚫︎しかし本症例同様に過去に著明なEo上昇を呈した報告はあり

⚫︎ 6例のうち3例でアレルギー疾患あり
⚫︎ リンパ節、肝臓、消化管、脾臓などさまざまな部位の臓器障害あり
⚫︎ IgG4は239-1780mg/dL、Eoは2,000-29480/μLであった
⚫︎ 4例は末梢血だけでなく、組織にも好酸球増多を認めHESと診断されている
⚫︎ これらの患者はPSL30mg程度で十分反応していた

⚫︎ アレルギー反応はTh2細胞が関連する
⚫︎ Th2応答を促すためTregからIL10が放出され、IL4とともにIgG4へのクラススイッチが誘導される
⚫︎ IgG4-RDはB細胞、T細胞、Treg細胞、濾胞ヘルパーT細胞、CTLなど様々な免疫細胞が関与している
⚫︎ IgG4–RDではTh2免疫反応が優勢に傾いている
⚫︎ Th2免疫反応はEo上昇およびIgEが上昇させる
⚫︎ 一方TregがTGFβとIL10を分泌し、IgG4が上昇する

⚫︎ また本症例はTARCも上昇していた
⚫︎ TARCはCCL17としても知られ、Th2が主に発現しているCCR4やCCL17に対してリガンドとして親和性がある
⚫︎ そのためTARCはTh2優位の炎症反応を誘導する
⚫︎ シェーグレンや健常者に比べてIgG4-RDはTARCが上昇しやすい

⚫︎ 過去の報告ではIgG4RDによる好酸球性の臓器障害を呈した報告もあり
⚫︎ 本例では好酸球による明らかな臓器障害は認めなかった

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