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臨床推論 Case91

J Int Med Res. 2021 Apr; 49(4): 0300060521990967.
PMID:33820466


【症例】
72歳 男性

【現病歴/現症】
⚫︎ 2年前から腹部膨満と下腿浮腫を認めている
⚫︎ 足首周りや手背に色素沈着が出現した
⚫︎ 2ヶ月前に大量の腹水貯留が出現した
  穿刺では滲出性で繰り返し腹水穿刺しても腹水貯留した
⚫︎ 腹腔鏡を実施したが原因は特定できず
⚫︎ 入院前より手足のしびれを自覚している

⚫︎ 入院時頸部、鎖骨、腋窩、鼠径のリンパ節腫脹あり
  下肢に浮腫と手足の色素沈着あり


⚫︎ TSH8.52↑ fT4 0.63↓ ACTHは正常だがコルチゾール朝7.92と低め
  テストステロン0.42↓ プロラクチンは正常であった
⚫︎ 血清VEGFは557.2pg/mLであった
⚫︎ エコーで胸水、腹水貯留あり 検査で腫瘍と結核は除外されている
⚫︎ 心エコーでは中等度の肺高血圧症あり
⚫︎ 神経伝導速度検査で軸索変性と脱髄、FM間隔の有意な延長を認めた
⚫︎ IgG2400↑ κ1970↑ λ1970↑(ただし日本と単位が違う)
⚫︎ 血清・腹水・尿免疫固定法ではモノクローナル蛋白の検出なし



⚫︎ 骨髄検査でも形質細胞の増加なし
⚫︎ リンパ節生検では反応性過形成でキャッスルマン病の病理像は認めず

What's your diagnosis ?







【診断】
POEMS症候群

【経過】
⚫︎ M蛋白以外は全て該当したため上記診断となった
⚫︎ LD療法とレボチロキシン12.5μg、コートリル20mgで治療開始した
⚫︎ 1サイクル後で腹水と下腿浮腫は改善し、4週間後には甲状腺とテストステロンは正常値になった
⚫︎ 6週間後にはVEGFは正常値になった

【考察】
⚫︎ POEMSの診断基準は以下の通り


⚫︎ これまでの報告では大半の患者で血清中または尿中にM蛋白が検出されている
⚫︎ また組織標本で軽鎖制限を認めている
⚫︎ 患者の85%で血清またはM蛋白が検出され、M蛋白の中央値は1.1g/dLで2gを超えるのは7%に過ぎなかった
⚫︎ 別の報告では40%で尿中にM蛋白を認め、中央値は100mg/24hであった
⚫︎ IgAまたはIgGで軽鎖は大半がλである

⚫︎ POEMS症候群は非典型例が多数報告されている
・43歳女性でニューロパチー以外は全て揃っており、5年経っても神経障害を認めなかった報告あり
・日本のsurveyでは102例のうち25%でM蛋白を認めなかった
・別の報告でも392例のうち89%しかM蛋白を認めなかった

⚫︎日本のsurveyのまとめ(Neurology 2019; 93: e975–e983. )
・キャラクター

・症状

⚫︎ M蛋白を認めなかった理由としては多発性骨髄腫にもあるように、非分泌型なのかもしれない
⚫︎ また免疫固定法がない時代では量が小さ過ぎて測定できなかったのかもしれない

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