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臨床推論 Case112

Clin Nephrol Case Stud. 2022; 10: 21–27.
PMID:35106272

【症例】
40歳 男性

【主訴】
腹痛 便秘 骨痛 多尿

【既往歴】
てんかん:バルプロ酸でコントロール良好

【現病歴】
⚫︎ 1週間前から上記症状あり
⚫︎ 診察では脱水所見あり
⚫︎ BP156/101mmHg HR90bpm SpO2 98(RA)
⚫︎ ラボ:WBC15900/μL Ca16.9mg/dL P5.8mg/dL Cre6.23mg/dL CRP9.6mg/dL PTH-int>200pg/mL

⚫︎ 上記データから副甲状腺機能亢進症となり大量補液と広域抗生剤で投与開始した
⚫︎ 副甲状腺手術は状態が安定してからの予定となった
⚫︎ ビスホスホネートはAKIのため使用せず、シナカルセトは手術が検討されたため使用せず

⚫︎ 入院24時間後SpO2 92%(RA)で低下したので酸素4L投与開始された
⚫︎ この時点でXPで大きな異常なし 尿量も確保されていた

⚫︎ その18時間かけて急激に呼吸状態悪化し、挿管され集中治療管理となった
⚫︎ 心エコー検査でIVCは虚脱し、心室は拡張しておらず問題なかった
⚫︎ JVPも張っておらず、下腿浮腫も認めず
⚫︎ 血圧95/71mmHg 脈拍125bpmであった

⚫︎ さらに18時間で新規の異常陰影を呈した

⚫︎ 画像では頭蓋骨がsalt and pepper signを認め、巨大な甲状腺腫瘤を認めた
⚫︎ 局所の浸潤やメタは認めず
⚫︎ Ca15.7mg/dL P4.6mg/dL Creはほとんど改善なし
⚫︎ 喀痰の検査やCOVID19の検査は全て陰性
⚫︎ より広域な抗菌薬に変更し、デキサメタゾンを開始したが改善なし
⚫︎ 亡くなられたため剖検となった

⚫︎ 剖検で副甲状腺腫を認めた

⚫︎ 肺は肺胞の浮腫と石灰化を認めた 感染症はなし

What’s your diagnosis ?







【診断】
副甲状腺と異所性石灰化症+ARDS

【考察】
⚫︎ 重篤な高Ca血症により膵炎、腎障害、ARDSなど多臓器不全をきたした報告は散見される

⚫︎ 呼吸不全を呈したときの鑑別は心不全である
⚫︎ 高Ca血症は石灰化が進む、不整脈を誘発するため心不全を起こしやすい
⚫︎ また高Ca血症は左心肥大を起こし、線維化を起こして拡張不全になる
⚫︎ これらは慢性腎障害や長期間のコントロール不良なPHPTで報告あり

⚫︎ 高Ca血症による肺障害は異所性石灰化症があげられる
⚫︎ 悪性高Ca血症で剖検したところ肺や他の臓器にCaが沈着していた報告あり
⚫︎ とくにCa20以上はリスクかもしれない
⚫︎ Mert先生の報告ではCaを下げると呼吸状態がよくなったケースあり

⚫︎ 腎障害はCa沈着を促進する
⚫︎ 異所性石灰化はESRDであれ、急性腎障害であり起きうる
⚫︎ Ca×Pが高値であれば相対的にアルカリな部分である肺胞や静脈に沈澱物が析出しやすい
⚫︎ 肺はCO2が低く相対的にアルカリ環境なので沈着しやすい
⚫︎ 肺胞の基底膜につきやすく、毛細血管を通じて全体に広がる
⚫︎ 肺の異所性石灰化症は基本無症状であるが、ひどくなれば呼吸症状をともなう
⚫︎ ARDSを起こす理由ははっきりしないが、ネズミの実験で高Ca血症では肺胞の血管透過性が亢進した研究がある

⚫︎ 高Ca血症を呈して呼吸不全になった症例は以下の通り

⚫︎ 2例はECMO&透析サポート下で副甲状腺腺腫切除を施行して救命できている
⚫︎ 挿管された9名のうち6名は亡くなっている


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