見出し画像

臨床推論 Case121

AIM Clinical Cases. 2022;1:e220365.

【症例】
63歳 女性

【主訴】
骨盤の痛み 

【既往/内服】
2型糖尿病:ジャディアンス
甲状腺機能低下症:レボチロキシン
高血圧症:アテノロール ヒドロクロロチアシド
慢性リンパ球性白血病:寛解して無治療経過観察中

【経過①】
⚫︎ 骨盤痛と膣の掻痒感で受診された
⚫︎ 尿検査で10*5 cfu/mLのE.coliが検出され尿路感染と細菌性膣炎としてシプロフロキサシンとメトロニダゾールで対処された
⚫︎ しかし内服後、骨盤痛は悪化傾向で3週間で3回も救急外来を受診された

【現症①】
⚫︎ 診察:恥骨結合部に圧痛あり 他は特記なし
⚫︎ ラボ:CLLのためWBC高値あるが変わりはない 他の血算や生化学は正常
⚫︎ 尿検査: 糖+ 細菌+ WBC3-10/HPF RBC3-10/HPF
⚫︎ 画像:造影CT、腰椎MRI、腹部エコー実施したが異常は指摘できず

【経過②】
⚫︎ 腹壁痛と尿路感染としてシプロフロキサシンとガバペンチン処方されて帰宅となった
⚫︎ 3週間後発熱と骨盤痛がもっと悪化してきたため受診され入院となった

【現症②】
⚫︎ 恥骨結合部の局所に圧痛あり
⚫︎ 脚を曲げたり歩くと痛みを認める
⚫︎ ラボ:WBC15200(好中球74%) 血沈84mm/hr CRP11.45mg/dL A1c7.2%
⚫︎ 血液培養は結果的に陰性であった

⚫︎ CT

⚫︎ MRI







What's your diagnosis ?

【診断】
恥骨骨髄炎

【経過②】
⚫︎ CTで恥骨結合部にfluid貯留、MRIでも炎症とfluid貯留を認め骨髄炎の診断となった
⚫︎ 関節液から緑膿菌が検出された
⚫︎ セフェピムを6週間投与して経過は良好である

【考察】
⚫︎ 恥骨の骨髄炎はレアで見逃されている疾患である
⚫︎ 機序は以下の通り
・ 血行性播種
・ 周辺組織、術後、外傷での直接波及
⚫︎ リスク:泌尿器生殖器系の手術、骨盤手術、アスリート、IVドラッグ
⚫︎ レアな報告では心臓カテーテル検査後、出産後、ヘルニア術後
⚫︎ 今回は糖尿病とCLLがリスクになったのだろう

⚫︎ 100例の恥骨骨髄炎のまとめ(Medicine (Baltimore). 2003;82:340-5. )
・キャラクターおよび症状

➡︎ 臀部痛、鼠蹊部痛で来られるとキツイ 
  診察で恥骨部の圧痛を拾い上げるしかない

・ リスク 

➡︎ アスリート:サッカーが最多 他にマラソン、テニスなど
➡︎ 骨盤内腫瘍17例のうち7例は腸管瘻孔を認めた
➡︎ 10%は明らかなリスクを認めず

・ 画像の異常は52/76例68%でしか異常を認めず
  早い段階で異常を認めなかった19例のうちフォローで17例89%で異常を認めた
・ 骨破壊81% 辺縁がいびつになった62% 恥骨結合が広がった46%
・ CTで骨浸潤86% 膿瘍43% massや炎症32% 結合拡大32%  CT異常なし10%
・ MRIで骨破壊50% 結合拡大10% 周辺筋肉の浮腫20%

・菌たち

・ 治療は外科的介入は55%、保存的治療は45%であった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?