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臨床推論 Case98

Front Immunol. 2022 Jun 6:13:824124.
PMID:35734176

【症例】
46歳 男性

【既往】
高血圧症:ロサルタン50mg ヒドロクロロチアシド25mgで治療中

【主訴】
下腿浮腫

【現病歴/現症】
⚫︎ 3週間前から下腿浮腫が出現し、呼吸苦、疲労感、不眠、倦怠感が出現し入院となった
⚫︎ 入院時は下腿浮腫、高血圧、頻呼吸を認めた

⚫︎ 入院時ラボ
TP4.0g/dL         Alb1.3g/dL
Cre1.09mg/dL        LDH344U/L
TSH0.005mU/L      fT4 7.63ng/dL 
抗TPO抗体>600I/mL  抗Tg抗体>4000UI/mL

⚫︎ 肝炎ウイルスやANAやdsDNAなど自己抗体は陰性であった
⚫︎ 24時間タンパク尿11.13g/day であった
⚫︎ 甲状腺エコーではバセドウ病に合致したエコー像であった

⚫︎ ネフローゼの原因を調べるため腎生検を施行した

(A)(B)基底膜は肥厚しスパイクを認めた
(C)PLA2染色は陰性
(D)糸球体毛細血管にそって弱くサイログロブリンが染色されている
⚫︎ IgGは基底膜に沿って顆粒状に沈着していた
⚫︎ IgAやIgM、C3、C1q、κが染色されfull hauseパターンを呈した

What’s your diagnosis ?







【診断】
バセドウ病に伴う2次性膜性腎症

【経過】
⚫︎ がんの検索のため内視鏡、PSA、CT検査など実施したが見つからなかった
⚫︎ メルカゾールとステロイドの治療を開始した
⚫︎ 8ヶ月経過して甲状腺ホルモンは正常値を推移していた
⚫︎ しかしタンパク尿は持続した
⚫︎ 放射線ヨード療法を施行したところタンパク尿は減少した
⚫︎ その後甲状腺切除し、48ヶ月の経過でCre1.1mg/dL、蛋白尿243mg/dayを維持している

【考察】
⚫︎ 自己免疫性甲状腺疾患(特に橋本)は10-30%(?)に腎症を合併する
  腎症のうち20%は膜性腎症である(Front Endocrinol (2017) 8:119.)


⚫︎ バセドウ病+腎炎はレアである
⚫︎ ケースレポートではMCD、IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎の報告あり
⚫︎ またバセドウの治療薬であるプロパジールやメルカゾールによるANCA関連血管炎合併での報告はある

⚫︎ バセドウ病+糸球体腎炎の文献検索した結果は以下の通り

⚫︎ バセドウ病が腎炎を合併するメカニズムは以下の通り
① 上皮下レベルでのサイログロブリン沈着
② 糸球体透過性亢進により内皮下レベルで補足される免疫複合体の沈着
③ サイログロブリンまたは甲状腺ペルオキシダーゼに対する抗体が交差反応で糸球体に抗体ができる

⚫︎ MNの治療はKDIGOでは関連疾患の治療を推奨しており、MNに対する治療は推奨していない
⚫︎ 今回放射線ヨード治療後に蛋白尿は改善したが、報告では放射線ヨード治療後に2次的に膜性腎症を発症した報告がある
⚫︎ これはおそらく血液中に甲状腺抗原が遊離したためであろう
⚫︎ Weetman先生らの研究で放射線ヨードを使用したバセドウ病の18人の解析
・ 4人はすぐに少量のタンパク尿を認めた
・ 残った14人のうち9人は放射線治療後5-10週間でタンパク尿を発症した
・ タンパク尿を治療前に認めていた4人のうち3人は治療後に蛋白尿が軽減した

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