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臨床推論 Case88

J Postgrad Med. 2009 Apr-Jun;55(2):139-40.
PMID:19550063


【症例】
27歳 女性

【現病歴/現症】
⚫︎ 白斑症に対して皮膚科でイムラン50mg、ベタメタゾン5gを処方され4ヶ月治療を受けている患者

⚫︎ 発熱、口腔潰瘍、呼吸苦のため入院となった
⚫︎ 受診時Hb3.5 WBC2300 Neut164 PLT40000であった
⚫︎ AST39 ALT72と軽度上昇していた

⚫︎ タゾピペとアミカシンで治療開始し、GCSFとRCC、PLTの輸血を開始した
⚫︎ イムランとベタメタゾンは中止した

⚫︎ マルクしたところhypocellularであった

⚫︎ 抗生剤開始後4日目には解熱した
⚫︎ 徐々に血球は改善し、好中球>1000は10日目に達成し、GCSFは17日目には終了できた

⚫︎ 20日目にはWBC2460 Neut615 Hb8.3 PLT46000になり退院となった

What’s your diagnosis ?







【診断】
イムランによる汎血球減少

【経過】
⚫︎ 退院後4ヶ月後には血球は正常値になっていた
⚫︎ TPMT活性は正常であった

【考察】
⚫︎ イムランは6-メルカプトプリン(6-MP)に代謝される
⚫︎ これはチオプリンS-メチルトランスフェラーゼ(TPMT)によってさらに代謝される
⚫︎ このTPMT活性が遺伝子によって異なっており、この活性が低ければイムランの代謝産物が蓄積して毒性が強くなる

⚫︎ NUDT測定キットがあり、これはTPMT活性に関連するNUDT15遺伝子のコドン139に存在する遺伝子多型を検出し、3種類のアレル(アルギニン、システイン若しくはヒスチジンをコードする塩基配列)を判定する
⚫︎ タイプで副作用が全然違う

https://ivd.mbl.co.jp/diagnostics/faq/mebright_nudt15.html#q11

⚫︎ 6-MPが通常とは異なる代謝経路を辿り、6-チオグア9ヌクレオチドが蓄積する
⚫︎ これがDNAやRNAに取り込まれると細胞毒性と骨髄抑制をきたす
⚫︎ 代謝速度によって血球減少がおきるタイミングがかわる
  数日-1,2週で起きることが多いが、本例のように4ヶ月たって生じることがある

⚫︎ イムランの骨髄抑制は14-35%で生じる
⚫︎ 白血球減少が一般的であるが汎血球減少も起きうる
⚫︎ SLE 重症筋無力症 リウマチ 移植後など色々な疾患で報告あり
⚫︎ ループスは特に顆粒球刺激が低下するためリスクが高いと言われている

⚫︎ そのためTPMT活性を事前に測定する必要がある
⚫︎ しかしこれが正常だからといって血球減少が起きないわけではない
⚫︎ SLEでTPMT正常だったのに致命的な骨髄抑制を呈した報告あり
⚫︎ そのためイムラン開始した患者は頻回に血算を測定する必要がある

⚫︎ 治療は輸血、GCSF、葉酸投与など様々な試みがなされている
⚫︎ 2週間ほどで回復している報告が多いが、経過は様々である

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