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臨床推論 Case44

Front Med(Lausanne). 2022; 9: 1023804.
PMID:36213635


【症例】
41歳 男性

【現病歴/現症】
⚫︎ 一ヶ月以上前から鼠径部に腫瘤病変を認め、精査目的受診された

⚫︎ 左鼠蹊部に1cm大の腫瘤をふれ、可動性良好で圧痛は認めず
⚫︎ 採血で好酸球780と上昇していたが、他は正常
⚫︎ IgE204と軽度上昇していた
⚫︎ 造影CTで均一な造影効果を認めた

⚫︎ PETでは同部位に4.5-5.3の集積を認め、他の部位は集積を認めず

⚫︎ リンパ節生検を施行したところ病理では好酸球浸潤と微小膿瘍を認めた


What’s your diagnosis ?













【診断】
木村病

【経過】
⚫︎ ステロイド導入したところ再発なく経過した

【考察】
⚫︎ 木村病は好酸球性リンパ肉芽腫症で、真皮・皮下組織・リンパ節に発生するまれな良性の慢性リンパ増殖性疾患である
⚫︎ アジア人の成人男性に多い
⚫︎ 今回のように鼠蹊部にできるのは稀である

⚫︎ 病態は不明だが以下のように推察されている
・カンジダ、寄生虫、ウイルスに対するアレルギー反応
・内分泌異常
・制御性T細胞免疫反応異常による自己免疫性疾患
・IgE誘発性Ⅰ型アレルギー

⚫︎ 上記によってIL4,IL5が放出されて好酸球が誘導されて沈着する

⚫︎ 特徴的な臨床症状を欠き、通常患部に単発または多発する無痛性腫瘤を呈する
⚫︎ 軽度の皮膚の痒みを伴うことがあり、片側に多い

⚫︎ 木村病のCTは内部壊死や石灰化病変はほとんど見られない
⚫︎ ある研究ではCT所見によって2つのタイプに分けられる
・境界が明瞭で密度が均一な結節型
 T1で筋肉と等信号、T2とDWIで高信号になる

・境界が不明瞭で周囲の皮下脂肪に浸潤するびまん性腫脹型
 T1で低信号で境界は不明瞭、T2で不均一な等-高信号になる

⚫︎ 木村病のSUVは4-5が多く今回の症例と一致する
⚫︎ これは低悪性度リンパ腫との鑑別が難しい

⚫︎ 木村病の病理では好酸球がリンパ濾胞に浸潤し、好酸球性の微小膿瘍を伴うのが特徴である

⚫︎ 治療は切除、ステロイド、放射線治療である
  特に外科切除と放射線治療は局所再発率を低下させる

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