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臨床推論 Case113

Clin Nephrol Case Stud. 2018 Sep 4:6:21-26.
PMID:30206511

【症例】
77歳 女性

【主訴】
脱力

【既往歴】
多発性硬化症:寛解状態
骨粗鬆症:ビタミンD 2000unit内服

【現病歴】
⚫︎ 2ヶ月前から進行性の脱力が出現し受診された
⚫︎ ラボでCa13.7mg/dL(以前は8-9)Cre2mg/dL(以前は0.9-1.1)と悪化していた
⚫︎ 骨粗鬆症でビタミンD製剤を内服していたため中止していたが改善なし
⚫︎ PTHは正常な反応として抑制されており、PTHrPは基準範囲であった
⚫︎ 尿検査は蛋白1+を認めるのみであった
⚫︎ ALPは正常 25-OH VitDも正常 1,25(OH)2 VitDは高値であった
⚫︎ 1,25 (OH)2 VitDは2ヶ月近く上昇しており、ピークは158pg/mL(正常は20-80)であった
⚫︎ 免疫固定法でわずかにIgGκが陽性で、κ/λは2.32であった
⚫︎ ACE 102U/Lと高値であった

⚫︎ 高Ca血症によるAKIと判断し、輸液、フロセミド、パミドロネートを投与した
⚫︎ 胸部CTはリンパ節腫脹なし

⚫︎ 初回治療に反応しCaは10.5mg/dLまで改善した
⚫︎ しかしCaは11.8まで上昇したのでデノスズマブを投与した

⚫︎ 結核や真菌など肉芽腫疾患が鑑別に挙がるため検索をすすめた
⚫︎ 画像ではサルコイドーシスの可能性は低いと判断し、ステロイドは実施せず
⚫︎ しかし結核、コクシジオイデスや他の真菌はいずれも抗体は陰性であった

⚫︎ この時点でPET検査を施行したところ以下のように集積した

➡︎肺門リンパ節腫脹と気管支壁に沿った集積あり

What’s your diagnosis ?







【診断】
サルコイドーシス

【経過】
⚫︎ 診断のため気管支鏡での肺門リンパ節および骨髄生検を施行したところ非乾酪性肉芽腫が検出されサルコイドーシスの診断となった

⚫︎ 気管支鏡の検体から細菌や結核、真菌は検出なし
⚫︎ PSL20mgでCa、腎機能改善し安定して経過した

【考察】
⚫︎ 本例はぱっと見CTで肺門リンパ節腫脹を伴わない難しいサルコイドーシスであった
⚫︎ ACEが異常に高いことが診断に寄与した
⚫︎ 高Ca血症はサルコイドーシスの10-20%しか認めない
⚫︎ 心臓、神経、眼限局のサルコイドーシスは肺門リンパ節腫脹を伴わないことがあり診断に難渋する

⚫︎ サルコイドーシスにおけるbone marrow granulomasは17-53%で認める
⚫︎ サルコイドーシスで骨髄に認めたものは認めなかったものと比較して肺外症状、貧血、白血球減少が多かった(Haematologia (Budap). 2002;32(4):419-25.)

⚫︎ ただしbone marrow granulomasはサルコイドーシスに特異的ではなく、色々な疾患で呈する(Int J Lab Hematol. 2018 Apr;40(2):123-127.)


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