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Snap diagnosis* Case 10

Eur J Intern Med. 2024 Mar;121:127-128.
PMID: 38087667.

【症例】
40歳男性

【現病歴/現症】
■ 受診前日から全身に有痛性病変が出現したため救急外来を受診した. 鎖骨骨折に対してトラマドールを内服していた. しかし皮疹出現の6時間前に疼痛コントロール不良のためNSAIDsを自己判断で内服した.
■ 身体所見:体幹と四肢近位に境界明瞭な紫色の局面と斑状局面が多発していた. 多くの病変は表面をこすると表皮剥離を認めた. 粘膜病変は認めなかった.
■ 患者は2年前にも同様の病変が出現したと報告した. 2年前は歯痛のため NSAIDsを内服し2日後に皮疹が出現した.
■ 血液検査では白血球数 12,000/mm3, 好中球 9,500/mm3と軽度上昇を認めるのみ.
■ 病理組織学的検査では, 表皮に散在性の壊死性角化細胞, 液状変性, 真皮に好酸球とメラノファージの浸潤を認めた. 病変は局所および全身のステロイド投与により2週間で色素沈着を残して治癒した.

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【診断】
汎発型固定薬疹
Generalized fixed drug eruption (GFDE)

【考察】
■ 固定薬疹は, 薬剤に対する遅延型過敏反応で, 同一部位に再発する紅斑, 紫紅色局面, 水疱が特徴である.

■ 初回暴露では1週間程度, 再暴露では30分から8時間程度の潜伏期間の後, 口唇粘膜, 外陰部, 肛門周囲, 末梢などに好発する.

■ 原因薬剤としてはST合剤, ニトロイミダゾール系薬, キノロン系抗菌薬, COX-2阻害薬を含むNSAIDsが多い.

■ GFDEは原因薬剤への反復暴露により, 2ヶ所以上の非連続な部位に多発する病型である. スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)との鑑別が問題となることがあり, 灰白色調の中心部や接線方向の表皮剥離は, 両者に共通してみられる表皮壊死の徴候である. しかしGFDEでは, 粘膜病変や全身症状は通常認めないかあっても軽度である.

■ 病理組織学的にGFDEはSJS/TENと比較して, 炎症細胞浸潤が強く真皮メラノファージが多い傾向がある. 表皮基底細胞の水腫変性と角化細胞壊死は重複してみられるが, 後者はSJS/TENでより顕著である.

■ 治療に関しては, 原因薬剤の同定と中止である. 反復暴露により水疱型GFDEを発症することがあり, 高齢者では死亡率22%との報告もある.

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