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Snap diagnosis* Case11

Surg Case Rep. 2015 Dec;1(1):100.
PMID: 26943424


【症例】
■ 30代の既往のない女性が左腹部の激痛で緊急入院した.
■ 入院時, 発熱(38.5℃)があった. 身体所見で左上腹部に圧痛と筋性防御を認めた. 血清CRP値の上昇のみで, 血球数には異常を認めなかった.
■ エコーで脾臓に隣接した左上腹部に, 脾臓と等エコーで直径3.0cmの境界明瞭な円形腫瘤を認めた.



■ 造影CTでは, 上記画像の通り.

What’s your diagnosis ?







【診断】
副脾捻転

【経過】
■ CTで正常に造影される脾臓と, その前面に3.0x3.0cmの低吸収域の造影されない腫瘤があり, 矢印は血管がツイストしており捻転していた.

■ 手術は単孔式腹腔鏡で行った. 術中所見では, 脾臓本体は正常であった. 大網の左側に長い血管を有し, 1800度捻転した直径3cmの副脾と思われる紫色調の円形腫瘤を認めた. Surgitie™ループを用いて容易に切除された. 検体はEndo Catch™で回収した.


【考察】
■ 副脾は剖検の10~30%で認められる. 単発または多発で, 通常は無症状であり,画像検査で偶発的に見つかることが多い. 脾門部から左陰嚢に至るまで様々な部位に存在し, 発生学的に脾臓の原基が融合しないことが原因とされる.

■ 血液疾患や肝硬変などの基礎疾患がない副脾が腫大や急性腹症として発症することがある. 梗塞, 出血, 破裂を伴う場合は緊急手術が必要になることもある. 副脾捻転による急性腹症は, AlexanderとRomanesが1914年に初めて報告して以来, 文献的に報告されてきた. 副脾捻転とそれに伴う梗塞は, あらゆる年齢で急性腹症の原因となりうる. 術前診断が非常に困難な極めて稀な疾患である.

■ 医中誌で報告されている副脾捻転の16例(日臨外会誌 78( 5 ),1097-1101,2017)

▫️年齢:平均26歳(3-46歳)
▫️平均サイズ6.2cm(1-14cm)

■ いくつかの症例でUSとCTが施行されている. この2つの診断ツールは腫瘤の検出や, 大きさ, 形状, 周囲組織への影響の評価には有用だが, 腫瘍, 肥大, 炎症などの定量診断には有用性が低い. MRIは, 緊急時に常に利用可能とは限らないものの, 腫瘤の検出だけでなく, その性質の評価や病理の推測においてUSやCTより優れている.

■ いくつかの症例で血管造影やシンチグラフィが用いられている. しかし, 輸入血管が完全に閉塞している場合, 血管造影やシンチグラフィでも副脾の検出は困難なため, 正しい診断は難しい.

■ 実際, 本症例ではUSとCT所見の両方を用いて正しく診断することができた. USでは脾臓と等エコーの腫瘤, CTでは造影されない腫瘤と捻転した血管を認めた. 特にCTで捻転した血管が明瞭に描出されたことが,診断の手がかりとなった. それでも, 術前診断はあくまで仮説に過ぎず, 本症例のように正しいと思われる場合でも, 副脾捻転は非常に稀なため100%の確信を持って診断することは不可能である. 

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