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臨床推論 Case99

CEN Case Reports (2021) 10:473–475
PMID:33715107

【症例】
32歳 女性

【既往歴】
潰瘍性大腸炎

【現病歴/現症】
⚫︎ 2ヶ月前より下痢と血便がひどくなってきた
⚫︎ 外来でのステロイド治療に反応せず、1日10回以上下痢するようになった
⚫︎ 入院しステロイドとヒュミラで治療され改善した

⚫︎ 入院時ラボ:
P 1.5mg/dL 補正Ca 8.8mg/dL
25-OH VitaminD 35ng/mL
Hb 7.5g/dL MCV 95fL

⚫︎ 入院後Pが徐々に低下し点滴でPを補充しているのにも関わらず、入院10日後にnadirとなり0.9mg/dLになった
⚫︎ PTH-intは55pg/mL 1,25(OH)2 VitaminDは32ng/mLと正常あった
⚫︎ FGF23は計測せず 
⚫︎ FEPは70%と異常に尿中排泄亢進していた

⚫︎ 入院2週間前にフェインジェクトの点滴を受けていたことが判明した

What’s your diagnosis ?


【診断】
フェインジェクトによる低P血症

【経過】
⚫︎ Pの経口剤は忍容性がなく点滴で補正を続けた
⚫︎ 入院3週間後にはPICC挿入して退院し、通院で点滴で補充した
⚫︎ 提出していたFGF23は12g/dLと正常であった
⚫︎ 退院2週間後にはPは3.0mg/dLで正常値になり、補正しなくても維持できるようになった
⚫︎ Hbは12g/dLまで改善した

【考察】
⚫︎ FGF23は骨から分泌され、Na/P共輸送体と1,25(OH)2VitaminDの合成を阻害することで尿中P排泄を亢進させる
⚫︎ フェインジェクトはFGF23分解酵素を阻害することで血清FGF23を上昇させる
⚫︎ その結果尿中P排泄が亢進する

⚫︎ フェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)はモノヴァー(デルイソマルトース第二鉄)、ferumoxytolと比較して低P血症を引き起こしやすい
⚫︎ フェインジェクトによる低P血症は投与2週間後におきやすく、2-5週で改善してくる
⚫︎ 本症例も5週で改善してきた

⚫︎ 鉄剤静注による低血症は見逃されやすいので注意

⚫︎ 低P血症の治療は内服が好まれる
  点滴では低Ca血症、不整脈、四肢の異常感覚を呈することがある

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