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臨床推論 Case141

Intern Med 59: 1777-1778, 2020
PMID: 32238725

【症例】
75歳 日本人女性

【主訴】
下痢

【経過①】
■ 高血圧症に対してオルメサルタン-アゼルニジピン配合錠を1年半内服加療中
■ 1日10回以上の水様下痢便と10kgの体重減少のため入院された
■ CT:小腸の拡張と壁厚の増加を認めた


■ 便培養:常在菌のみ
■ 内視鏡:下行十二指腸に顆粒状の変化を認めた


■ 生検:セリアック病の特徴的な所見である絨毛の萎縮がみられた

【経過②】
■ 2週間のグルテンフリー食で症状は改善せず
■ 抗組織トランスグルタミナーゼIgA抗体は陰性であった
■ オルメサルタン-アゼルニジピンの投与を中止したところ下痢は1週間で改善した

What's your diagnosis ?







【診断】
オルメサルタン関連スプルー様腸疾患

【経過③】
■ アゼルニジピンを再開しても下痢はみられず、体重は2ヵ月で8kg増加した

【考察】
■ 2012年にRubio-Tapia先生らにより、オルメサルタンによる慢性下痢を伴う重篤な腸管障害が報告された(MayoClinProc.2012;87(8):732-738)

▫️年齢69.5(47-81)歳 男9 女13
▫️症状発症までの平均投与期間19.2ヶ月(3-53年)
▫️症状
 □ 体重減少:18kg(2.5〜57kg)
 □ 吐き気・嘔吐15例(68%)
 □ 腹痛11例(50%)
 □ 腹部膨満感9例(41%)
 □ 倦怠感15例(68%)
 □ 下痢:1日6回(3〜42回)
▫️病理では十二指腸絨毛の萎縮と消化管全体に粘膜炎症が認められた
▫️グルテン除去食に反応せず、薬中止で改善した

▫️特徴は以下の通りと結論づけている

■ 十二指腸の絨毛萎縮は他の疾患でも起きうるため鑑別が必要(Proc (Bayl Univ Med Cent) 2017;30(3):348–350)

■ 特に他の薬剤でもきたしうる

■ セリアック病likeな症状をきたすのは稀に他のARBでもある(Gastroenterology Report, 7(3), 2019, 162–167)

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