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窓はシュール

東京国立近代美術館で開催中の『窓展』に行ってきました。写真は藤本壮介さんの「窓の家」です。窓展は、その名の通り「窓」にまつわる近代のアートを集めて紹介するという何ともシュールな展覧会でした。絵画や写真だけじゃなく、映像やインスタレーションも豊富で楽しめました。窓は近代芸術に頻出のモチーフで、様々なアーティストの作品が勢揃いといった感じでした。「西京入国管理局」という独りではなんとも気恥ずかしい強制参加型イベントもありましたが、スタッフが優しいおばさんだったので助かりました。

ウジューヌ・アジェの写真作品は、ショーウィンドウの内側をガラス越しに撮影しているのですが、あえてガラス面に反射して写り込んだ町並みも活かすことで、ショーウィンドウの内側と外側を効果的に記録しています。国際宇宙ステーション(ISS)にはキューポラと呼ばれる巨大な窓があり、よく宇宙飛行士はその窓から地球の写真を撮るのですが、たまにISSの内側が写り込んでしまいます。ある宇宙飛行士がその写真を失敗作として紹介したところ、普段見えないISS内側が見れて、これはこれで良いとの声が上がりました。そんなことを思い出しました。

展示のなかで特に印象的だったのがズビグニエフ・リプチンスキの「タンゴ」という映像作品です。窓やらドアから室内に人が入ってきては、何かしら行動をして部屋から出ていく様子がワンセットでループされ、さらに時間が経つにつれて人がどんどん増えていくというものです。最終的に室内は人で溢れ返すのですが、各人は決してぶつかることなく秩序が保たれるところが見所です。途中、裸の女性や、事を始め出すカップルとかが入ってきて、ついついそちらに気を取られているうちに、いつの間にか知らないおっさんが増えていて、やられた感があります。

会場では「窓研究所」という怪しい団体が作成した「窓学の視点から見る窓展」という怪しい冊子が置いてありました。

窓研究所は今回の展覧会に学術協力をしているとのことです。窓学とは「窓の新たな可能性を探求する学問」ということで、窓展ではテレビやコンピュータのスクリーンも窓(Window)であり、入国ゲートもグローバルな窓(世界の窓)として位置付けられています。そうなると「窓際族」とか「社会の窓」とか「世界の車窓から」とか、日本には素晴らしい窓文化が他にもあるので、ぜひ窓学の研究対象に加えてほしいものです。

東京国立近代美術館には「眺めの良い部屋」と名付けられたスペースがあるのですが、生憎の天気で窓ガラスが曇っており「眺めの良くない部屋」になっていました。シュールですね。

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