リチャード・ジュエルは面白いのか?
面白いです。当たり前です。
クリント・イーストウッド監督が今回スポットライトを当てたのは、「テロから市民を守った英雄」から「テロの容疑者」に仕立て上げられてしまった不幸な男、リチャード・ジュエルです。実話に基づきつつ、権力の暴走、マスコミの行き過ぎた成果主義、親子の愛、男の友情等々、普遍的なテーマを絶妙なバランスで織り混ぜたサスペンスです。リチャードをただの不幸な男で終わらせず、最後にちゃんと「見せ場」を持ってくるのがイーストウッド監督らしかったです。
ところで本作は、監督の作品にしては、本国での集客が伸び悩んでいるようです。
確かに、話の展開は小さいし、何か新しい問題定義がされるわけでもないし、良くも悪くも演出は渋いし、主人公のリチャードは要領の悪いデブです。『フォードvsフェラーリ』のような迫力な映像はないし、『パラサイト』のような予測不能なストーリーじゃないし、『ジョジョ・ラビット』のような独創的な演出もありません。
そう考えると、リチャード・ジュエルの何が面白かったのでしょうか。監督の知名度に引っ張られているだけなのだろうか。不安になってきました。
キャストに目を向けましょう。イーストウッド監督のもとには素晴らしい役者が集まってきます。特に、脇役に渋くてカッコいい、まさに監督みたいな男が出てきます。本作では、リチャードを助ける弁護士のワトソン・ブライアントがその人でした。サム・ロックウェルの好演もあり、雰囲気の良い魅力的なキャラクターでした。(ちなみに前監督作の『運び屋』では、ブラッドリー・クーパーがその人でした。)
ワトソンの持つ強い正義感や広い優しさに触れることで、リチャードは少しずつ自分を変えていき、最後の「見せ場」につながります。まさに映画の立役者です。あ!面白い!
安心してください。迫力の映像や予測不能なストーリーが無くとも、私はワトソンというキャラクターに面白さを見いだすことができました。
なんだかんが書きましたが、結局面白い映画でした。当たり前ですが。
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