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その手に触れる前に手洗いを【その手に触れるまで】

映画『その手に触れるまで』を観ました。
ベルギーの巨匠兄弟(兄弟巨匠?)、ダルデンヌ兄弟による3年ぶりの脚本・監督作品は、イスラム教の過激思想に傾倒し、一線を越えてしまう13歳の少年「アメッド」を主人公に置いた衝撃作でした。カンヌで監督賞を獲りましたが、これは大納得です。パルム・ドールも獲れる大作品ではと思いましたが、『パラサイト』の勢いには及ばなかったようです。

まず映画の背景として、ベルギーにイスラム教徒が多く住んでおり、中には過激派も潜んでいるという事実を知りませんでした(そもそもチョコとビールしか知りませんが)。社会問題を大胆に扱いつつ、高い文学性とサスペンス性を両立させた脚本は、さすがダルデンヌ兄弟といったところでしょうか(そんなに知りませんが)。少年アメッドの危うい言動は、常に私の想像の一歩先を行き、心臓が何度もきゅってなりました。買ったコーヒーも半分以上余りました。ただアメッドに向けられた監督の眼差しには終始優しさが感じられました。

アメッドはコーランを暗唱できるほど頭が良いし、よく機転も利く少年なのですが、そのような自分の頭で物事を考えることができる少年だからこそ、過激な思想に染まってしまうのかもしれません。他人と触れ合い、牛と触れ合い、恋を知り、世界を知ることで、徐々に変化していくアメッドの心情描写がとても繊細で素晴らしかったです。

単なる宗教の話にとどまらず、普遍的なテーマに拡大して観賞できる作品のため、誰がみても琴線に触れる部分があると思います。

ラストシーンは賛否あるでしょう。見終わった直後は少し唐突な気がしましたが、過激思想に取り憑かれた少年を救済するという難題に対するひとつの答えなんじゃないかと、少し時間が経った今は思います。視聴者に全てを投げるのではなく、しっかりと結末まで描いてくれたことでエンターテイメントに昇華しているようにも感じました。

ところでイスラム教徒は手洗いを大切にしているため感染症に強そうですね。皆さんも、その手に触れる前に手を洗いましょう。

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