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悲嘆の社会学:悲嘆は医学的に治療されるべきなのか?

悲嘆は人類にとって普遍的であり、それゆえ様々な学問領域の研究対象となる。医学や心理学はもとより、社会学においても悲嘆について深く掘り下げられて考えられているが、今回取り上げる論文は、悲嘆について社会学的検知から考察したもの。

Deconstructing grief: A sociological analysis of prolonged grief disorder
悲嘆の解体: 長期にわたる悲嘆障害の社会学的分析

この論文によると、医学分野では悲嘆は疾患や障害として扱われるが、その背景には時代の要請があるのではないかと。

悲嘆に限らず、社会が求める役割を果たせないことに対して様々な病名が与えられてきた。抑うつ障害などがその代表的な例である。現在医学的には半年以上続く悲嘆については遷延性悲嘆障害という病名が与られるが、これは早期に正常な状態に回復するのが社会的に妥当だという社会的判断が働いているのではないかと。

また悲嘆の基盤にあるのは他者に対する愛で、これは生物的にも社会的にも抜がたい人間の性であり、その意味で医学は死を治療し得ないように悲嘆も治療し得ないのではないかと。

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