ジャーナルはなまる

交換日記です なつき/kanisanland

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最近の記事

ポイントカード

財布はすでに銀行や証明や交通のあれこれがあるのに、これ以上カードを増やしたら手に負えないだろう、とこれまですべて店の誘いを断っていたが、今日ついに作った。いままでで一番通ったと思われるスーパーだ。ここはポイントカードがあることすら知らなかったが、先にレジを済ませる人が見せていて、顔見知りの店員さんに尋ねた。 帰り道、町の奇人を幾人か見、わたしはわたしで奇しい人間であると自覚しつつも矯正しきれないものを持っていることを再確認し、背を伸ばした。葉は色づいたり散ったりしはじめ、雲は

    • 秋はいずこ?

      ここのところ、時々会社へ行くようになった。 ちょうどいいことに、近所に支社があるのだ。うちから自転車で20分くらい。 会社へ行くことは義務ではないが、いちおうオフィスは存在する。ずっと家にいると気分がふさいだりもするので気が向いた時に鴨川沿いを自転車漕いで出勤するのはとても楽しい。何せ最近の気候は素晴らしい。ずっとこのままでいてほしい。秋ってわけでもないし、夏って感じでもない。 めいめい家で仕事をしているから会社へ行っても同僚がいるわけではない。私専用の個室が与えられ、窓を

      • 遍在

        昨晩、窓を開けたら金木犀の匂いがした。町のいたるところに点在し、そして匂いは偏在する。下弦の月が登ってくるのを見守って、眠ろうとしたがすぐに目覚めてしまった。 翌朝もその匂いは変わらず、玄関にいるそれを見に行けば蕾がほころんでいた。開く前からあんなに匂うのだから、人びとは注視せざるを得ないのだろう。買い出しでどこを歩いてもそれからは逃げられなかった。思わず寺へ入ってみたら牡丹がたくさん咲いていた。 しばらく時間を費やした作業が一段落し、一番やりたかったことができないとわかり落

        • 定まらない

          今週はへんに祝日が多くて、今日は特に仕事が多くて大変困った。 捌き続ける、調整する、前に進める、言葉にする、たくさんの人が関わる、目も腰も肩もあちこち疲れる。楽じゃない。でもそれが自立なのだから、わがまま言ってはいられない。 自分は幸い、役員直下のポジションをもらっている。ありがたい話だ。裁量があれば仕事も楽しい。かたちにできることも大きい。会社のことも、仕事も好きだ。だからやる。 疲れたので休憩がてら家を出て、歩いて北部食堂に出かけた。ささみチーズカツを中心に定食を組ん

          タイムラプス

          清澄な朝はただそれだけで特別な気持ちになる。まだ日差しはじりじりと照りつけるようだが、急速になにかが失われ、夏らしい気候は遠のいている。せっかちな桜はもう葉の色を変え始めた。 最近はは夕方に寝て夜中に目が覚める。昼夜逆転が一転して元に戻りそうだ。夜明けを見るのは嬉しいものの、出来れば早起きして見たいものである。白明にカラスが集会を始め、やがて日が昇るのを見、タイムラプスのことを思い出し撮ってみたらいい具合に楽しく、これが近ごろの趣味となった。 ずっと窓を開け放ちたくなる快適な

          2021/09/03

          うっかりしている間にもう9月だ、気づいたら夏が終わってしまった。今日は仕事を終わらしてから銭湯へ出かけたが、寒くてすっかり秋の格好をして行ったし、帰りには雨に降られてしまう始末で散々だった。せっかく風呂に入ったのにずぶ濡れになってしまったけれど、「散々だね」と言い合って歩くのは楽しかった。 帰ってからシャワーを浴びて洗濯機を回したが、すっかり溜めてしまっていたせいでキャパオーバーでなんどもエラーを起こして止まってしまう。「困った困った」と言いながらなんとか宥めて洗濯をおこな

          うろこ雲

          下弦の月が昇るのを見ていた。次の季節を感じる、いつもにまして涼しい夜である。 余した時間をベースにひたすら充てているうち、いままでならば訳もわからずやっていたことが、だんだん手の内に収まるようになった。弾かされているようにすら思えた楽器たちが、自分と一体化し、初めて自分らしい演奏になってきたようである。いつの間にか手がぼろぼろになっていたから、休ませてあげたい。 日昇とともに寝る生活が続くのは日々の不安が大きくなったからかもしれないが、思いのほか落ち着いている。これから景色は

          Happier Than Ever

          朝、いつも通り起きて仕事に取りかかる。昼過ぎ、恋人を連れて散歩がてら近所の定食屋へ行く。定食屋の庭の木漏れ日の中でおじいちゃんがノンアルコールビールをストローで吸っている不思議な光景を眺めながら食事。戻って仕事の続きをやり、息抜きに哲学の道を散歩する。知人とすれ違う。ここらは皆生活圏が被っているので出歩けば必ず誰かと出くわす。雨がやんで蝉が鳴いて、水の流れがとても綺麗で、風が気持ちよく、夏が少しの間戻ってきたのを感じて嬉しかった。 夕方、近所の学生が突然訪ねてくる。突然やっ

          秋雨前線

          雨がひととおりおさまると、コオロギやカエルたちが歌い始めた。涼しく穏やかな夜である。台風の前、やけにきれいな星空が見え、ペルセウス座流星群を見るかわりに夜が明けるまで眺めていたのだが、予報どおり、それから雨は続いて流星群どころではなかった。 仕事探しが一段落したところでお盆を迎え、地元へ帰った。かつては断ち切りたかった因縁は切れないままだが、それほど気にならなくもなっている。記憶の中にある町は大きく広く、恐ろしいものだったけれども、わたしの身体は大きくなって目線の高さや歩幅、

          最終回の再放送

          今日は嵐がやってきているから外へは出ず、寝室のカーテンを開けて、木が風でむちゃくちゃに撓んでいるのを眺めている。たくさん寝坊して、音楽を聴いて、本を読んでゴロゴロ過ごす祝日は悪くない。 奇妙なもので、私の人生にはたびたび最終回みたいな日々が突然訪れることがある。最近なんてまさにそうだ。6年ぶりに友達から手紙が届き、高校の同級生と3年ぶりに顔を合わせ、親友が院試のために東京から帰ってきて、大学時代のゼミの教授と食事をし、毎日賑やかな友人たちのゴタゴタに巻き込まれて、好きな人と

          一人称の留守番

          部屋やキッチンの掃除をする。しばらくの間に溜まった油汚れなどがきれいになくなっていくさまは爽快である。ひとり暮らしを始めてからは、掃除がいい気分転換となった。 植物園へ年間パスポートを買いに行く。ちかごろは遊ばずに根を詰めた結果ひどく落ち込んでしまったから、外に出る理由がほしくなったのだ。川沿いに歩けば、ときおり甘い香りに出くわす。すっかり春の匂いとなってしまった。 河川敷には灌木がおおく植えてある。この季節にはユキヤナギがそこらじゅうで見られ、ここにもいたのかと毎度思わされ

          蒼くて深い眠りの終わり

          びっくりした! 1ヶ月以上日記を書いていなかった……! 気づけば3月になっていて、疏水沿いの桜が少しずつ咲き始めている。毎日毎日、疏水を歩いて桜のつぼみの様子を観察していたから、昨日とうとう咲いたのを見つけて本当に嬉しかった。 さて、ここに日記を書かなかった間、どんなことがあったっけ? ざっと思い出せるだけ書いてみようと思う。お祭りのような日々だった。 書き初め大会をした。うちでシーシャパーティーをした。お酒を飲んでいろいろあったり、深夜の大文字山に登って綺麗な夜景を眺

          蒼くて深い眠りの終わり

          箱庭の町

          雲ひとつない晴れの日であった。この低く透明な光は、まもなく見られなくなるだろう。日差しが暖かく、久しぶりにスクーターで近場の池へ向かった。 適度に整えられた自然にはあまり国籍がない。植生や生きものに多少の違いはあるけれども、歩くうちに記憶の中へタイムスリップしてしまったような、不思議な感じがした。様々な土地で訪れた水辺をなんとなく思い出せる。そういえば以前ここへ訪れた際も同じようであった。 池や湖と親しくなったのは、ベルリンに暮らしていたころからだ。生まれた土地では海と山や田

          黄金時代のゆくえ

          気づいたら2月になっていた。ことしの1月はとんでもなく早くすぎていったような気もするし、3ヶ月くらいあったような気もする。 今日は朝から吉田神社に赴き、節分祭の雰囲気を味わった。例年とは異なって神事もないし屋台も出ていないけれど、なんとなくお祭りの雰囲気は伝わってきて楽しかった。何せお祭りが大好きなのでウキウキした。おみくじを引いたら大吉がでた。いろいろと良いことが書いてあって、最後には 其他:すべてよし とあったので笑ってしまった。ご機嫌である。 今までずっと人生の

          黄金時代のゆくえ

          透明なヴェール

          土手でスイセンの咲いているところを見た。カモの隊列飛行が横を通り、こんなぷりぷりした体で渡りをやるんだよなあとしみじみしていたら、もう四隊つづけて通り過ぎていった。 ちかごろあまり笑っていないことに気づき、思い出そうとしても、一ヶ月くらいは記憶になかった。待ち望むほど冬が好きなのに、今年は良き冬であったとは言い難いものの空疎でもなく、なんとも妙であった。 透明なヴェールがある。季節の変わり目などによく現れ、私と世界を隔てる膜のようなものである。これに覆われると、なにもかもがわ

          あるはずのなかった日々

          自分はほんらい7ヶ月前に死んでいたはずなのにどうしてだか生きているというので、なにごともあまり深く考えず、流れるように、良く言えば気楽に愉快に生きている。 家と仕事場を一緒にしてしまうと、いかにしてサードプレイスを待つかが精神衛生上きわめて重要になってくるはずで、今の自分はそれがとてもうまくいっていると思っている。友だちがたくさんできてうれしい。 今日は久しぶりに大好きなハンバーグ屋へ行った。 海老フライがとっても大きくて、驚いてしまった。 美味しい食事は楽しい。 (k

          あるはずのなかった日々