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「たまご-加湿修正ver.-」(掌と小吐#2)

-「傘がない」と言う素晴らしい名曲に愛とリスペクトを込めて。D.jouka-


今、僕はとても悲しい

悲しいと言う現象にも様々な種類がある

ニュースで流れた若者の自殺
我が国全土における出生率と死亡率の比率
だけども今日は曇りの空 
だけれども
この間いつぶりかに降った雨は土砂降り
なのにそれなのに傘がない だとか

だけども
だけども
いくらだけども
あの女は全然振り向いちゃくれない

だけども
だけども
いくらだけども
腰はふれども
あの女の心は全然
コチラを振り向いちゃくれない
だとか

だけども問題は今日の飯 おかずが無い

うどんでいいや 
釜玉でいいや
冷凍庫のうどん引っ張り出してさ
ちょうど卵も10個入りのパックを買ったところだ
出来上がった釜玉を想像し
掻き立てられた食欲で
パックの蓋を開けるのも煩わしく感じながら
少し横着して半分だけ開封されたそのパックの隙間から親指と人差し指の腹で卵を引き抜こうとした
その時だった

「パシャッ」


悲劇はそれだけじゃなかった
悲劇はそれだけに留まらなかった

慌てて冷蔵庫からパックを取り出し
他の卵を
そのパックをも 
もうこれ以上汚さぬ様にと
これ以上の犠牲を出してはいけない
と言う一心で救出を図る

片手で目線の高さまでパックを持ち上げ
汚れてしまった卵を救出する
と、同時に

「ドゥパシっ」
「ドゥパシっ」
「ドゥパシっ」

3つの生卵が食洗シンクに身を投げた。






救出した卵1つをかけた釜玉うどんを
麺汁をかけて有り難く頂く
何かを得るためには何かを捨てなければならない
しかしその代償は余りにも大きく感じた
「食」とはとても尊いものである
合掌。

手を合わせた後、僕は今、少し、寂しい



次回、掌と小吐「弔いの卵スープ」

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