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妹が女装を引退する

その子はホントに天使でした。
みんなが「天使」「大天使」と呼んでいました。
見た目が天使なだけではありません。
一週間に一度くらい、時には朝まで、それを2、3年も、会い続けていたら、心もわかってきます。
その上で、みんな「天使だ」と思うのです。
そんな天使が年内で女装を引退するそうです。
なにか、すごい喪失感があります。私も年に一度しかしないし、すっかり引退気味ですが、ものすごく寂しさがあります。
なぜなら、その子は私の妹だからです。

当たり前ですが、女装同士が姉妹になるのに、手続きや認定機関があるわけではありません。

ただ、私たちは周囲からも「姉妹」と見なされていました。私自身が「妹」「妹」と口走っていたこともありますし、彼女も「お姉ちゃん」と呼んでくれたし、とある大阪のトラニーチェイサーさんがことあるごとに「やっぱり姉妹やなぁ」などと口走ってくれたことも、姉妹関係の既成事実化(笑)に大きかったのではないかと、実はすごく感謝してます。(実は三姉妹なのですが、その話はまたいずれ)

私たちが女装を始めた2015年ごろから、名古屋女装界は、カンブリア紀生物爆発に匹敵するとされる、大進化をはじめました。海から地上へ生物が進出したように、特定の女装スポット内だけで完結していた女装が外に出るようになっていったのです。
生まれたばかりの私たち姉妹は、最初、女装サロンの中で二人で隣同士で手を握り、ひたすら「ライオン」「トライアグラー」「脳漿炸裂ガール」をデュエットしていました。しかし、サロン外にも出るようになると、彼女は陽のあたる、大規模女装イベントや一般の人もいる日中のコスプレイベントなどに羽ばたいていき、大天使の名をとどろかせました。私は太陽の光と人の視線を浴びると溶けると固く信じていたこともあり、女装して一人で人里離れた山城に登り、一人でさわやかのハンバーグを食べる(静岡に遠征したときはね)という、のちの『ソロキャンプ』女装的な独自のハッテンの道を進みました。
なので、お互い週に2回は女装していたように思いますが、会う頻度は月に1、2度くらいになっていったと思います。
でも、その距離感がすごく良かった。いつも一緒だった幼少期姉妹から、自立する少年じゃないや、少女の姉妹の関係へ。
設定上(設定言うな)私は14さい、彼女は13さいのままであるように、彼女が女装を引退しても、姉妹であることは心の中でずっと変わらないと思ってます。
あと女装界では、「引退は撤回するもの」という黄金律もあります。私は、妹とまたどこかで、いつか、きっと会えると信じて、ジョイサウンドで「トライアングラー(fight on stage)」をひとりカラオケで練習しつづけるでしょう。

「バイバイ・シェリル」はマクロスフロンティア25話中の6話。バイバイじゃなかった。きっと今回も永遠のバイバイじゃない


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