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【Zatsu】自動車教習所の思い出

このたびパソコンを買い替えました。以前のマシンからデータを移し替えていたとき、古い日記が出てきて懐かしかったので転載します。


もう3ヶ月近く前になりますが、免許証の更新に行ってきました。無事故無違反だったから、優良者講習30分でビデオとか見るだけでよかったんだけど。

お約束の「衝突事故20連発」みたいなのでさんざん鬱にさせられたあと、チャイルドシートに関するビデオも見た。
最初はチャイルドシートなしの場合。急ブレーキとともにダミー人形のこどもが前方へ投げ出されて画面から消えていくんだ。
「このように、身体の小さなお子さんは非常に危険です」と女性のアナウンスが入る。
「しかし、チャイルドシートをつければ――」ふたたび急ブレーキ! 「このように完全に固定され、投げ出されることもありません」って言ってんだけど、首とか完全にぐんにゃりイッちゃってんだよ。どう考えても無事ではないんだが、製作スタッフも少し考えてほしいもんです。

つづいて人工呼吸の映像。むかし教習所でやらされたなぁ。気道確保! 人形に向かって「おーい、おーい」って話しかけるやつ。「だめだ、返事がありません!」って、あたりまえなんだけどさ、やらなくちゃいけないんだよね。そんな映像を見ていたら、初めて免許を取った時のことを思い出しました。

まだ学生のころ。
大学生協においてあった教習所のパンフレットを友だちと眺めていたら、免許合宿という文字が目に飛び込んできたんです。通いだと数か月かかる自動車免許が、たった3週間で取れるという夢のようなプログラム。泊まり込みなので費用はそれなりだが、ちょっとしたお楽しみ旅行だと思えばなんてことはない。

バイトで溜めたカネを注ぎ込み、さっそく申し込んだ。でもそこがホントいい加減でさ。友人とふたりで行ったんだけどね、北関東の某教習所。敷地内に宿舎があって、入所初日、職員の人からいろいろと説明があるんだ。

「ここは1階が教習所になっていまして、2階以上は皆さんの泊まるホテルです」ホテル名はそれっぽい横文字なんだけれど、案内されたのは完全に名前負けしている悲惨な居住スペースなのよ。床のじゅうたんはタバコの跡でボロボロ。パイプ製の2段ベッドが2つ。ダイヤル式のスチールロッカー。とにかく部屋の中で鉄素材の割合が異様に高い

入所初日。まず、みんなに個人ファイルが配られた。部屋の壁一面が巨大な本棚になっている。毎日の講習がおわったあと、じぶんの個人ファイルをその本棚にしまって帰るルールらしいんだ。棚には受講生たちの個人ファイルがずらりと格納されている。
「みなさん、この膨大なファイルから自分のものを見つけるのは大変だと思っているでしょう。でも、心配いりません」そういうと、職員のおっちゃんは近くの電卓みたいな数字キーを指差して、鼻高々に説明する。「これはハイテクを使っているので、皆さんの個人番号を押せば、たちどころにぃ~!」番号を押した瞬間、ファイルが5つも6つもボーンボーン! ものすごい勢いでとびだしてきた。全員苦笑。床を這いずり回りながら、ファイルを回収する。「普段はちゃんとでるんですけどね」とのこと。
その夜、台風にあおられて教習所の電源喪失。停電パニック発生。わけがわからず、混乱のなか初日は終了しました。

この教習所は周囲には遊べる場所がありません。ていうか、何もありません。なにしろ、このホテルがここらへんでいちばん高い建物です。見晴らし抜群の4階建て。近くのコンビニが唯一の価値ある場所だったから、1日に5、6回は通った。だって、やることないし。周囲はダンプカーが頻繁に走る大通りが一本あるだけ。路上教習するにも、ルートがひとつしかないので、いつもそこに教習車がズラリとならんで右折待ちしているんだ。

友人はハイテクコンピュータが教官のブッキングミスを引き起こして、隣りに座る教官がいなくなる始末。そうしたら、奥から事務員のおじさんが出てきて、1時間おじさんを乗せて教習所のなかをぐるぐる廻っていた。となりでずっと文庫本読んでる。それでも「じゃ、がんばって」ってハンコもらえるんだから、合宿免許っていうのは緩いよね。

ただ、つらいこともあって、最初におれの隣に座ってくれた教官はなまりがきつくて、何を言っているのかわからなかった。すっげー注意されているのは表情と雰囲気でわかるんだけど、かんじんの内容が「○×★?@@だがら%$・¥-☆じゃろがぁ」なので、おれも「ハア」って答えつつ、同じ間違いを何度も繰り返していたと思う。それでもハンコはくれるんだ。合宿免許は後続の予約が詰まっているので、ところてん方式でどんどん押し出していかないと成立しない。検定失格とかじゃない限り、注意指導はするけれど単位は取らせてくれるんだよね。

いまはわからないけれど、当時この教習所はベンツとBMWしか置いていないことをウリにしていた。もちろん、入所初日からベンツですよ。車はベンツ以外に知りません。高速教習では、隣りのクレイジーな教官が「抜かせ! 前の車抜かせ!」ってうるさかったな。そんな教習所でした。

それ以外にも、ペーパーテスト用にゲーム感覚で勉強できるコンピュータもあったんだけど、同じ問題でもマシンごとに正解が違ったり、クリア直前で必ずフリーズしたり。
食堂もあるんだけれど、メニューがAセット、Bセットの2種類しかなかったり、まあ度肝を抜かれる教習所でしたよ。

ふだん都市部で運転していると、道路が混んでいるからイライラが募る。だから、免許を取る前に教習所で教官に厳しくしごかれて忍耐力をつけるんだっていわれれば、確かにそうかなとも思うけどさ、この教習所は別の意味でイライラが募ったね。それでも、結局いままで大きな事故も起こしていないから、結果的にこの教習所はよかったのかな。


なんだか、当時の自分はものすごい苦労をして自動車免許を取ったんだなと、いまあらためて感心しきりです。
じつは後年、うっかり免許更新を忘れていたためとっくの昔に失効しており、ふたたび教習所で学科からやり直すという憂き目にあいました。いい歳した男が、チャラい大学生や、金髪のお兄ちゃんたちに交じって交通ルールの勉強、免許センターで試験、合格発表、そして原付講習まで……。
その件はまた別の機会に書こうと思います。

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