【あたおか】人間は『生物学的に』肉を消化する能力がないなんてことはありません。
人間の身体は菜食向けに「設計」されており、肉を摂取して分解することは不可能なのでしょうか?いいえ、そんなことはありません: 栄養学の専門家2人が「Lead Stories」にそう証言しています。ソーシャルメディアに投稿されたこの主張は、「雑食」という言葉の間違った定義に基づいています。「雑食」とは、ソーシャルメディア上の動画が主張していることとは異なり、植物だけでなく、様々な食物を食べることが出来る種であることを指す言葉です。
この話は、2023年9月にFacebook上で公開された以下のタイトルのリール(アーカイブはこちら)に掲載されました:
ドクター・セビの孫が真実を明かす
動画には次のようなやりとりがありました:
女性: 我々のシステム全体は雑食になるように構築されているの。植物性の食事ってことよ。肉を摂取し、胃の中でこれを分解しようとしているのに、それが出来ないのって変よね。それはね、そのための適切な身体機能がないからなの。
男性: 我々は(肉食)動物ではない
記事執筆時点で、Facebook上では以下のように表示されていました:
![](https://assets.st-note.com/img/1695173862063-K5AYiOVKf5.png?width=800)
スタンフォード大医学部教授で、様々な食事療法のエビデンスに基づく研究を専門とするChristopher Gardner氏は2023年9月18日付けの電子メールでLead Storiesに語っています:
完全に間違っています。
このクリップには、その主張を裏付ける証拠が何一つ示されていないのです。それを正当化するために使われた重要な論拠は、「雑食」という言葉の間違った定義でした。リールとは逆に、雑食とは植物だけを食べる生き物を意味するものではありません ー 植物だけを食べるのは草食動物(=雑食の説明の中に記載されています。herbivoresでリンク先でページ内検索して下さい)です。
Merriam-Websterにある定義では、《omnivore》は「雑食性」の生き物を指す名詞であり、この形容詞は次のような意味を表します:
動物性と植物性の両方を食べる
ブリタニカは「雑食」を次のように定義しています:
食物の好みが広く、植物と動物の両方を食べることが出来る動物
ナショナル・ジオグラフィックの解説者は、人間が生物学的に摂取可能な食品の種類を詳しく説明し、主張とは逆に、動物も雑食になりうることを付け加えています:
人間は野菜や果物といった植物を食べます。人は野菜や果物などの植物を食べ、肉として調理されたり、牛乳や 卵といった製品に使われたりする動物を食べます。キノコのような菌類も食べます。また、巻き寿司を包む海苔やサラダで食べるシーレタスといった食用海藻の形で、藻類も食べます。クマも雑食です。ベリーのような植物だけでなく、キノコやサケやシカのような動物も食べます。
肉は約260万年前に人類以前の食生活に入り込み、2016年にネイチャー誌に発表された研究では、進化の過程で重要な役割を果たし、先住人類を現生人類へと変化させた可能性があると論じています:
ホモ・エレクトゥスはそれ以前のヒトとは異なり、歯が比較的小さく、咀嚼筋が減少し、最大咬合力が弱く、腸が比較的小さい特徴を有しています。エネルギー需要の増大と咀嚼・消化能力の低下というこの逆説的な組み合せが、食物に肉を加えることによって可能になったという仮説があります。
人類が非常に長い間、様々な食べ物を食べてきたという事実は、考古学的知見によって裏付けられています、とアーカンソー大学の教授であり、著書『咀嚼の進化:歯、食事、そして人類の起源の物語』の著者であるPeter Ungar氏は、2017年にScientific American誌に寄稿した文章の中で次のように書いています:
人間には、他の動物を殺して食べるために進化した哺乳類の歯や爪はありませんが、だからといって肉を食べない「ことになっている」わけではありません。初期の人類の祖先は、肉食動物のような鋭い歯の代わりに武器や刃物を発明したのです。化石の遺跡にある石器で切った跡だらけの動物の骨の化石は、肉食をしていたという事実以外に説明がつきません。
Ungar 氏はヒトについて、-- ヒトの内臓は、肉食動物に比べればまだ長い-- ので、生き残るためには、特定の土地や季節に適応する方法を学ばなければならず、それ故、食生活は歴史的に場所によって大きく異なってきました、と指摘しています:
食物の選択とは、何を食べることが出来るかだけでなく、その種が何を食べることが出来るように進化してきたかということでもあります。そして、果物が熟し、葉が紅葉し、花が咲く時期が予測可能であるように、 我々の祖先は、温暖で湿潤な世界から冷涼で乾燥した世界へ、そしてまたその逆へと環境が変化しても、長い時間をかけて様々な食料を食べることが出来るようになったのです。
ロナルド・レーガンUCLAメディカルセンターの上級臨床栄養士であるDana Hunnes氏は、2023年9月18日、Lead Storiesのコメント募集に答える中で、自身がヴィーガンであることを明らかにしました。しかしながら、彼女は問題のリールの内容、よりに具体的には、動画中のセリフである、「我々は動物ではない」には同意していません。Hunnes氏の返答は次の通りです:
私達は動物です。
続けて次のようにも述べました:
私達は様々な食べ物を食べることが出来ますが、 道徳的、倫理的、生物学的、健康的、環境的な観点から、食べるべきかどうかは別の問題です。
Facebookの動画のタイトルにあるドクター・セビは実在の医師ではなく、Alfredo Darrington Bowmanの商業的な偽名でした。彼は正式な医学教育を受けておらず、後年医師としての活動を禁じられたにも関わらず、物議を醸すアルカリ性ダイエットを宣伝し、ハーブで万病を治すと約束してサプリメントを販売していました。
Bowmanは2016年にホンジュラスで亡くなっていますが、彼の名前を使った主張がソーシャルメディアで流れ続けています。
ドクター・セビに関する他のLead Storiesのファクトチェックはこちらをご覧下さい。
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