赤タマネギ(=紫タマネギ)をコカ・コーラと混ぜて飲むことにより、インフルエンザが治るというエビデンスはありません;コカ・コーラの(大量)飲用は健康への悪影響に繋がります。
【主張】
コカ・コーラにタマネギを混ぜれば、もう他の治療薬を使うことはないだろう。
毎晩寝る前に飲めば、素早く効果的にインフルエンザと闘うことが出来る。
コカ・コーラは記憶力と心臓の機能を向上させるという研究もある。
【詳細評定】
裏付け不十分:
赤タマネギとコカ・コーラとを混ぜて飲むとインフルエンザが治るという確たるエビデンスはありません。
それどころか、コカ・コーラのようなカフェイン入りの飲料を飲むと、インフルエンザによる脱水症状を悪化させる可能性があります。
事実に反します:
科学的エビデンスによりますと、炭酸飲料のような砂糖入りの飲料を(大量に)飲むことは、心臓血管系の病気や、認知症やアルツハイマー病のような記憶喪失を引き起こす疾患と関連していることが示されています。
【キーポイント】
コカ・コーラのような砂糖入り飲料を(大量に)飲むと、心血管疾患や2型糖尿病など、健康に悪影響を及ぼすことが科学的に証明されています。
タマネギには栄養学的な利点もありますが、タマネギとコカ・コーラを混ぜて飲むとインフルエンザやそれに付随する症状を改善することが出来るというエビデンスはありません。
【レビュー】
インフルエンザの「(医薬品を使わない)自然な」治療法はしばしばネット上で注目を集めることがありますが、その有効性を示す科学的根拠は乏しいかもしれません。その一例として、2024年8月下旬にシェアされたFacebookのリールは、コカ・コーラと赤タマネギを混ぜて飲めばインフルエンザの治療薬になると主張していました。この主張の亜種は以前、InstagramやTikTokにも登場し、投稿は何万ものインタラクションを記録していました。
このリールはまた、コカ・コーラが記憶力と心臓の健康を向上させるという研究結果も示しているとの主張も行なっていました。
以下で説明するように、これらの主張はどちらも科学的な裏付けがありません。
タマネギは、SNSで拡散される様々な病気の 「自然療法 」として喧伝されることが多々あります。
Science Feedbackは以前、タマネギを使った自然療法がインフルエンザの予防接種の代わりになるとか、生のタマネギを足に乗せると風邪や インフルエンザといった病気が治るといった、タマネギの健康効果に関する主張を検証したことがあります。
以前のクレームレビューで説明した通り、バランスの取れた食生活の一環としてタマネギを食べれば、健康上のメリットがあります。タマネギにはケルセチンという化合物が含まれており、抗酸化作用や抗炎症作用があります。また、健康な免疫システムをサポートするビタミンC等の栄養素も豊富に含まれています。リール自体が正確に指摘しているように、タマネギは健康な細胞機能の維持を助けるカリウムの供給源です。
しかしながら、先のレビューで取り上げたように、タマネギがインフルエンザ等の病気の治癒や症状の緩和に役立つことを証明する科学的な証拠はないことが判明しています。
コカ・コーラと赤タマネギを混ぜて飲むことに関する主張は、タマネギの健康効果に関するこのトレンドに沿ったものです。リールには、「毎晩寝る前に(この混合物を)飲めば、インフルエンザと素早く効果的に闘うことが出来る」と記載されていました。
この特定の飲用の有効性を示す証拠があるかどうかを調べるため、米国国立医学図書館が管理する出版物の保管庫であるPubMedで数種類の検索を実施しました。オニオン」、「ソーダ」、「コカ・コーラ」、「砂糖入り飲料」と「インフルエンザ」、「インフルエンザ」の組み合わせで検索を実施しました。これらの検索では何もヒットしませんでした。
更に、コカ・コーラのようなカフェイン入り飲料には脱水作用があることに注意することが重要です。インフルエンザに罹患した場合、脱水症状が懸念されるため、クリーブランド・クリニック等の医療センターでは、このような飲料は避け、水、スープ、ハーブティー、フルーツジュースで水分補給することを勧めています。
砂糖入り飲料の飲用は健康上の悪影響と関連性があります
コカ・コーラが「記憶力と心臓の機能を向上させる」という主張は誤りです。実際、科学的根拠により、ソーダのような砂糖入り飲料(SSB)を飲むことは逆効果であり、心臓病を含む数多くの健康上の悪影響に結びつくことが一般的に示されています。米国CDCによりますと、次の通りです:
このことは、多くの研究から得られた証拠によって更に裏付けられています。
2,200万人以上のSSB消費量を評価したある包括的レビューにおいて、Lane氏らは、心血管疾患、2型糖尿病、うつ病を含む「より多くの砂糖入り飲料の消費と、より高い健康上の有害な転帰のリスクとの間の直接的な関連」を明らかにしています[1]。
数万人を対象とした研究を評価した別の包括的レビューでは、SSBは心血管疾患の高いリスクと関連していることが判明しました[2]。
また、複数の研究のレビューでは、SSBの摂取と冠動脈性心疾患、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患との関連を示す「強い証拠」が見つかっています[3]。
また、科学的根拠から見ても、SSBは記憶力を向上させるものではなく、むしろその逆を行く可能性を持っています。
Pase氏らは、4,000人近くを対象としたある研究で、SSBの摂取量が多い人ほど、前臨床アルツハイマー病のマーカーである脳の総容積が小さいことを発見しました[4]。また、Pase氏らは、3,000人近くを対象とした別の研究で、人工甘味料入り飲料(ダイエットソーダ等)の摂取量が多いほど、脳卒中、全死因性認知症、アルツハイマー病のリスクが高いことを明らかにしました[5]。炭酸飲料と認知症の相関関係は因果関係を示すものではないものの、コカ・コーラに記憶力を向上させるという能力があるとは考えにくいことを示唆しています。
結論
タマネギにはいくつかの健康効果がありますが、赤タマネギだけ、あるいはコカ・コーラで割ったタマネギがインフルエンザに効くという主張を裏付けるエビデンスは見つかりませんでした。
既存の科学的証拠も、コカ・コーラのような砂糖入り飲料が心臓の健康や記憶力を改善するという主張と真っ向から矛盾しています。
引用文献
1 – Lane et al. (2024) Sugar-Sweetened Beverages and Adverse Human Health Outcomes: An Umbrella Review of Meta-Analyses of Observational Studies. Annual Review of Nutrition.
2 – Diaz et al. (2023) Artificially Sweetened Beverages and Health Outcomes: An Umbrella Review. Advances in Nutrition.
3 – Malik and Hu. (2022). The role of sugar-sweetened beverages in the global epidemics of obesity and chronic diseases. Nature Reviews Endocrinology.
4 – Pase et al. (2017) Sugary beverage intake and preclinical Alzheimer’s disease in the community. Alzheimer’s & Dementia.
5 – Pase et al. (2017) Sugar- and Artificially Sweetened Beverages and the Risks of Incident Stroke and Dementia: A Prospective Cohort Study. Stroke.
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