BMJの論文で、COVID-19ワクチンがウイルスより5倍多く心筋炎を引き起こし、青少年では10倍多いことは示されておりません。

BMJ Medicineに掲載された新しい論文は、COVID-19ワクチンがCOVID-19ウイルスの5倍、若年層では10倍もの心筋炎を引き起こすことを示しているのでしょうか?いいえ、そんなことはありません:この研究の著者の一人は、2023年2月6日付のLead Storiesの電子メールで、それは「我々の研究を誤解した解釈の仕方」であると述べています。この論文は、稀な心臓病について報告された生の数字を示しているだけで、より大きな人口と比較したそれぞれの割合を示していません。

この主張は、人工知能(AI)の専門家であるEli Davidが2023年2月6日に公開したTwitter上の投稿(アーカイブはこちら)に掲載されています。投稿には以下のように書かれています:

🚨 速報:BMJに掲載された新しい論文によると、COVID-19ワクチンはCOVID-19ウイルス自身よりも5倍多くの心筋炎を引き起こす(Vax:530 vs Covid:109)。若い人の場合、リスクは10倍高い(Vax:202 vs Covid:19)。

https://twitter.com/DrEliDavid/status/1622290909369962496 

執筆時のTwitterでの投稿は以下の通り:

(出典: 2023/02/06 月曜日 17:25:46 UTCに取得したTwitterのスクリーンショット)

《研究内容》

Davidのツイートは、2023年2月1日にBMJ Medicineに掲載された「北欧4カ国におけるSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の心筋炎の臨床転帰:人口ベース・コホート研究」 という論文を引用しています。この論文は、デンマークフィンランドノルウェースウェーデンの2300万人が対象です。4カ国とも、少なくとも73%が「完全なワクチン済」です。

ヴァンダービルト大学医療センターの感染症教授であるWilliam Schaffner博士(=基記事のリンクがおかしかったので正しいものに修正しています)は、2023年2月6日の電話インタビューでLead Storiesに対し、論文の数字に問題があるのではなく、Davidの解釈の間違いに問題があるのだと述べています:

彼は疫学的に初歩的な間違いを犯しており、症例数だけを見ても割合については何もわかりません。そのためには、分母が必要なのです。つまり、ワクチン接種者の間で発生した症例が多数あるということです。しかしながら、ワクチン接種者の分母は何だったのでしょうか?私達は、発病後に発生した症例が多数ありました。ワクチン未接種者の分母は何だったのでしょうか?
その情報は提供されていません。何故なら、それは全く調査の目的ではなかったからです。偶々心筋炎になった場合、ワクチン後か、病気後か、昔は通常型と呼ばれていたものかによって、その後の経過がどうだったかを知りたかっただけなのです。ですから、これは10万人あたりの頻度、レートを比較する研究ではないです。

https://leadstories.com/hoax-alert/2023/02/fact-check-new-paper-does-not-show-covid-vaccine-causes-5-times-more-myocarditis-than-covid-virus-or-10-times-more-in-young-people.html 

Lead Storiesへのメールでは、デンマークのStatens Serum Institutの共著者Anders Husby博士も、Davidは彼らの論文を正しく解釈出来ていないという意見に同意しています。Husby氏はLead Storiesに、この研究の「結論」の部分を指摘し、次のように述べています:

SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の心筋炎は、従来の心筋炎及びCOVID-19病後の心筋炎と比較して、入院後90日以内の心不全のリスクが低いことが分かりました。ワクチン接種後の心筋炎の転帰は,素因となる併存疾患のない若年患者を含む様々なサブグループと,男女の両方で,あまり重篤ではないことが明らかになりました。SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種に伴う心筋炎の転帰は,他のタイプの心筋炎に比べ軽微であることが推測されます。

https://leadstories.com/hoax-alert/2023/02/fact-check-new-paper-does-not-show-covid-vaccine-causes-5-times-more-myocarditis-than-covid-virus-or-10-times-more-in-young-people.html 

結論:ウイルスに感染して重症化するよりも、COVID-19ワクチン接種後に軽症の心筋炎になる方が良いということです。2023年2月6日、Twitterアカウントへの投稿で、CDCは次のように述べています:

《若年男性》

医師達は、心筋炎のリスクが、まだ稀ではありますが、Pfizer社とModerna社のCOVID-19注射をした若い男性(16-24歳)の間で高いことを以前より知っていました。Husbyの共著である先行研究でも同じく、以下のように述べられています:

このリスクは、重篤なCOVID-19疾患から身を守るメリットと釣り合うものであるべきです。

https://jamanetwork.com/journals/jamacardiology/article-abstract/2791253 

《Eli Davidについて》

DavidはAIの専門家ですが、医学的な知識はないようです。LinkedInのプロフィールには、博士号を含むコンピュータサイエンスの複数の学位が記載されています。Schaffner氏はLead Storiesに対し、素人がこのような研究を読むと誤解を招きやすく、必要な専門知識を持っていないと述べています:

コンセプトは誰にとっても同じで、医学博士であろうが、他の分野の博士号を持っていようが、高校に行って靴を売っただけの人であろうが、同じです。これらのデータを見るのです。疫学101を履修していなければ、よくある罠です。

https://leadstories.com/hoax-alert/2023/02/fact-check-new-paper-does-not-show-covid-vaccine-causes-5-times-more-myocarditis-than-covid-virus-or-10-times-more-in-young-people.html 

Husby氏は、TwitterでのDavidの論文解釈に対する批評では、以下のような皮肉を述べておられました:

残念ながら、ごく少数の人々は、自分達の物語に合うように現実を歪曲したがります。

https://leadstories.com/hoax-alert/2023/02/fact-check-new-paper-does-not-show-covid-vaccine-causes-5-times-more-myocarditis-than-covid-virus-or-10-times-more-in-young-people.html 

COVID-19ワクチンに関するLead Storiesのファクトチェックは、こちらでご覧になれます。

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