COVID-19ワクチン接種者は非接種者より死亡率が14.5%高いという研究は立証されていません

COVID-19のワクチン接種患者がワクチン未接種の患者よりも高い確率で死亡することを、研究論文で十分に証明出来たのでしょうか?いいえ、事実ではありません:問題となっている研究には、その結論の質に影響を与える限界があります。しかも、この研究はプレプリントジャーナルに掲載されており、この記事を書いている時点では、このテーマに詳しい科学専門家による批評は行われておりません(これは、新しい知見が有効かどうかを検証するための方法です)。感染症の専門家がLead Storiesに語ったところによりますと、問題の論文は「不信に傾いた人々や、事実と虚構を見分けることが出来ない人々に誤った情報を与えようとする偽科学的な試みである」ということです。

この主張は、プレプリントサーバー「Preprints.org」に掲載された論文に端を発しています。そして、この研究結果は、Lead Storiesが以前ファクトチェックしたことがあるCOVID-19の誤報拡散者、Steve Kirschが2023年2月13日にTwitterに投稿したスレッドにおいて共有されました。投稿には次のように書かれていました:

新しいSorliの論文:「得られた結果から、ワクチンを接種したコロナウイルス感染群の死亡率は、ワクチンを接種していないコロナウイルス感染群の死亡率よりも平均で14.5%高いことが確認された」

→ ワクチンはCOVID-19による死亡リスクを上昇させる。

https://twitter.com/stkirsch/status/1625160632629886976 

以下は、執筆時のTwitterでのスレッドの様子です:

(出典:2023/2/15 10:26:36 UTCに取得されたTwitterのスクリーンショットまとめ)

イリノイ大学・シカゴ医学校教授で感染症部門の責任者であるRichard Novak博士は、Lead Storiesが2023年2月17日に受領した電子メールにおいて、この論文は「不信に傾き、事実と虚構を見分けることが出来ない人々に誤解を与えるための似非科学的な取組みです」と述べています。

《プレプリント研究とは、科学的な専門家による審査、レビューがなされていないことを意味します》

まず、研究の最新版であるプレプリント論文は、その研究がその分野の科学的専門家による審査を受けておらず、信頼性の高い科学雑誌に掲載されていないことを意味します。 プレプリント・サーバーには誰でも公開することが出来ます。

査読プロセスの一環として、論文に見られる書式や誤字脱字、例えば要旨に「2021年」ではなく「2031年」と書かれていること等が修正されるのが一般的です。また、専門家は、研究方法、数学的分析、導き出された結論の論理性についても評価します。この研究は、厳格な査読プロセスを経ていないことから、このような誤りは捉えられておらず、この論文発表時点でも存在したままでした:

(出典:2023/2/17 金曜日 22:37:41 UTCに取得されたInstagramのスクリーンショット)

《著者らは、高齢者や免疫不全のグループについて調整していませんでした》

この論文の著者は、年齢やその他の健康上の変数を考慮に入れていません。このことは、COVID-19ワクチンを最初に接種した人は、一般的に高齢者か免疫不全者であり、全体として既に死亡リスクが高かったことを意味し、データに偏りがあることを示唆しています。 Kirsch自身も、このような対照群の欠如は「容認出来ない」と述べており、Novak氏もこれに同意しています。

論文の著者は、ライフスタイル、過去または現在の健康状態、年齢、民族、人種、性別、地域等の人口統計データといった分析対象者の外部変数をどのように補正したかについて、それ以上の情報は提供されていませんでした。

「研究者達が使っている数式は論理的に導かれたものではないようで、これらに基づく結論は疑わしいものです」と、Novak氏はLead Storiesに語っています。「研究者達は、死亡の原因が何であるかを判断することなく、部分集団の総死亡率を見ているのです。これは、どちらかと言えば、公衆衛生データの後ろ向きレビューであり、対照臨床試験 ではありません」

《レビューに利用不可能なデータで、英国特有のワクチンも含まれています》

以前にもお伝えしましたように、科学的に健全であると認められるためには、研究者は収集・研究したデータに対して透明性を持たなければなりません。問題の研究の一環として、著者は単に公式のデータソースとして「英国保健機関」と「英国健康安全局」を引用し、COVID-19ワクチンの効果と影響に関する英国のリアルタイムデータへの一般的なリンクを含んでいました。しかしながら、使用された具体的なデータセットは、この研究には含まれていませんでした。信憑性の高い研究では、データは専門家によって綿密に調べられ、計算が確認されます。

加えて、著者らは分析したワクチンの種類を区別しておらず、そうしたワクチンが初回投与なのか、その後のブースターなのかも明記していませんでした。

「彼らのデータの出所は、ChadOxというワクチンが主流であった英国のものであること以外は不明です」とNovak氏は述べています。

そのため、市販されている他のワクチンとの関連性は不明です。

Novak氏は、血栓塞栓症や 脳卒中といった論文で引用された健康上の有害事象の多くは、COVID-19の結果として知られているが、稀であると付け加えました。

《論文の結果が過度に一般化されています》

この論文の著者は、自らの知見をイングランド以外の集団に一般化していますが、年齢構成、全般的な健康状態、ワクチンの種類、公衆衛生対策が大きく異なる可能性のある他の集団に、自らの知見がどのように関連していると考えたかを統計的に示してはいません。

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