ニューヨーク市保健精神衛生局のツイートが誤解を受けています:XBB.1.5がワクチン接種者に好発感染することを裏付ける証拠はありません。

【主張】

  • (保健)当局の発表によると、オミクロン亜型XBB.1.5がワクチン接種者に感染しやすい可能性があるとのこと。

【評定要旨】

文脈の欠落 :

  • オミクロン亜型XBB.1.5がワクチン接種者に感染する「可能性が高い」という記述は、XBB.1.5と他の亜型との比較を意図したものであり、ワクチン接種者と非接種者との比較ではありません。

裏付け不十分:

  • ワクチン接種者がXBB.1.5に感染しやすいという主張を支持する証拠はありません。

  • これまでのエビデンスでは、ワクチン未接種の人はワクチン接種者に比べてCOVID-19を発症して死亡する可能性が高いことが示されています。

【キーポイント】

  • オミクロンの変異型XBB.1.5は、より感染力が強く、免疫系を回避する能力を高めるいくつかの変異を含んでいます。

  • COVID-19のワクチン接種は、COVID-19の重症化や死亡を防ぐのに極めて有効であり、感染に対してもある程度は有効です。

  • これまでのデータでは、ワクチン未接種の人はワクチン接種者に比べてCOVID-19を発症し、死亡する可能性が高いことが分かっています。

【レビュー】

2023年1月13日に投稿されたニューヨーク市保健精神衛生局(@nychealthy)のツイートで、「オミクロン亜型のXBB.1.5は現在、ニューヨーク市の配列決定されたCOVID-19全症例の73%を占めている」という記述が混乱を招きました。 XBB.1.5は、現在までに判明しているCOVID-19の中で最も感染しやすい形態で、ワクチンを接種している人や 既にCOVID-19にかかっている人に感染しやすい可能性があります」と述べています。

このツイートへの返信を見ますと、一部のソーシャルメディアユーザーは、この発言を「ワクチン接種者はワクチン未接種者に比べてXBB.1.5に感染しやすい」という意味に解釈していました(こちらこちらの例をご参照下さい)。この印象は、同じツイートに関するFox Newsの記事のクリックベイトの「オミクロン亜種XBB.1.5がワクチン接種者に感染しやすい可能性がある、と当局が発表」という見出しによっても強化されました。

ソーシャルメディア分析ツールCrowdTangleによりますと、Fox Newsの記事はTwitter上で2,700以上のユーザーエンゲージメントを獲得しました。その殆どは、Twitterで39,000人以上のフォロワーを持つジャーナリスト、Henning RosenbuschがFox Newsの記事のスクリーンショットを共有し、「ワクチン接種者のパンデミック」と呼んだことに起因していると思われます。また、COVID-19ワクチンが安全でないと不正確な主張を繰り返してきた元科学者のRobert Maloneも、「誰がこれを予測し得ただろう !!!」という発言とサングラスの絵文字を添えて、Fox Newsの記事をTwitterで共有しました

しかしながら、ウィスコンシン大学マディソン校の疫学者で教授のAjay Sethi氏がHealth Feedbackに語ったように、この主張は誤りです。元の@nychealthyアカウントのツイートでは、文脈、具体的には、「より可能性が高い」という言葉が何に関して使われているのかが欠落していました。[Sethi氏のコメント全文はこちら]

「暗黙の了解ではあるが、明言はされていない。XBB.1.5は、以前の亜型に比べて、ワクチンによる免疫を持っている人や以前にCOVID-19に感染した人に感染しやすいということだ」と彼は説明しています。

実際、このツイートには、検査済みのCOVID-19症例に対する亜型の割合を示したグラフも掲載されており、XBB.1.5による症例が時間とともに徐々に増加し、他の亜型を追い越していることが示されていることからも、そのことが裏付けられています。以下は、ツイート全文のスクリーンショットです。

図1. NYCで検査したCOVID-19の症例について、その変異型の割合をグラフ化した
@nychealthyのツイートのスクリーンショット

NYC Healthのウェブサイトには、このツイートが意図した意味を明確にする追加の文脈も掲載されています。"以前の亜型と比較して、ワクチン接種を受けた人や以前にCOVID-19を発症した人に感染しやすいかもしれません。" というものです[強調]。

しかしながら、ツイートの文脈が不十分であったため、一部のユーザーは自分の見方に都合の良い枠を簡単に選んでしまったのです。「この場合、ワクチン接種者と非接種者の感染の可能性を誤って比較しているのです」とSethi氏は説明し、実際はそうではなく、異なる亜型間の比較であることを説明しました。

Health Feedbackは、ニューヨーク市保健精神衛生局にコメントを求めました。新たな情報が得られた場合は、このレビューを更新します。

XBB.1.5は、米国欧州の科学者と公衆衛生機関の間で懸念を引き起こしている一連の変異型の中で最新のものです。XBB.1.5が持つ特定の変異は、初期の変異型と比較して、より感染力が強く、免疫システムを回避することが可能であるため、他の変異型と競争することが可能になっています。米国CDCのデータが示すように、XBB.1.5による感染者は2023年1月初旬から着実に増加しています。

図2. 米国で検査されたCOVID-19症例において検出されたSARS-CoV-2亜型の割合
出典:
米国CDCにて2023年1月17日に取得したデータ

懸念の多くは、XBB.1.5の高い感染力と免疫防御を回避する能力によって、患者数や入院数が急増する可能性に起因しています。しかしながら、現時点では、XBB.1.5が重症化しやすいかどうかを判断するのに十分な証拠がありません。

一部の人が主張しているような、XBB.1.5がワクチン未接種者よりワクチン接種者に優先的に感染するという証拠もありません。そして、以下のグラフが示すように、これまでに得られた証拠は、ワクチン接種者と比較して、COVID-19に感染し死亡する可能性が高いのはワクチン未接種の人々であることを示しているのです。

図3. ワクチン接種状況に基づくCOVID-19の患者発生率。
出典:
米国CDC。データは2023年1月17日に取得。
図4. ワクチン接種状況に基づくCOVID-19の死亡率。
出典:
米国CDC。データは2023年1月17日に取得。

【SCIENTISTS’ FEEDBACK】

ワクチン接種者はワクチン未接種者よりもオミクロン変種XBB.1.5.に感染しやすい」という主張は誤りです。

新しいXBB.1.5. 変異型はBQ.1やBQ.1.1. 変異型よりも増殖に優れ、SARS-CoV-2の流行の新しい支配形態となりつつあります。 CDC COVID Data Trackerに示されるように、このXBB.1.5による他の変異型の置き換えは、ニューヨークや他の北東部で始まっています。

成長の優位性は、新しい変異型が以前のものより感染力が強いか、集団に既に存在する免疫の影響を受けにくいか、或いはその両方の組み合わせによるもので、XBB.1.5の場合はそのような可能性があります。

この@nychealthyによるオリジナルのツイート(下記)には、いくつかの重要な文脈、特に「...と比較して」という文が欠落しています。

つまり、XBB.1.5は以前の変異型と比較して、ワクチンによる免疫を持っている人や過去にCOVID-19に感染したことのある人に感染する可能性がより高いということを暗示しているのですが、明示されてはいません。

この文脈がないと、COVID-19ワクチンについて自信がない人、あるいは誤解を招く情報を流そうとする人は、意識的あるいは無意識的に、自分の誤った見解に合う言葉でその不足分を埋めてしまうのです。この場合、彼らはワクチン接種者と非接種者の感染の可能性を誤って比較しているのです。元のツイートは善意で書かれたものでしたが、誤報の拡散者と採用者は、欠落した文脈を利用したのです。

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