Pfizer社のワクチン成分の安全性について誤解を与える記事が流布されています。

米国の化学会社のデータシートを引用して、Pfizer 社製のCOVID-19ワクチンの成分が人体に安全でないとする記事やソーシャル・メディアへの投稿があります。これは誤解を招くものです;同社はワクチンに含まれる化合物を製造していないと述べており、また、医療の専門家によりますと、この文書は研究用化学物質に関するものであり、(医薬品として使用される物と)同様の厳しい規制認可プロセスを経ることはないとのことです。

「Pfizer社のmRNAワクチンの添付文書には、『米国労働安全衛生局(OSHA)の技術データシートは、ヒトまたは動物用の診断・治療用ではない』と記載された成分が含まれていることが明らかにされています」と、2023年2月7日の記事には書かれています。

記事は更に、このワクチン成分と、アメリカのバイオテクノロジー企業であるCayman Chemical社が研究用に生産している化合物を混同しています。

2023年2月15日に取得した記事のスクリーンショット

この報道は、米カリフォルニア州の牧師であるPhil Hotsenpillerが設立したウェブサイト《American Faith》からのものです。 彼のサイトは以前にも、COVID-19治療ワクチンに関する論破された主張を喧伝したことがあります。

記事の主張は、少なくとも2022年まで遡る例があり、InstagramTwitterといったソーシャルメディア上で瞬く間に拡散されました。しかしながら、Pfizer社のワクチン成分は、Cayman Chemical社の化合物と同じではありません。

「我々は、医薬品用のALC-0315を製造していません」と、Cayman Chemical社の広報担当者であるRyan Foster氏は、2月15日の電子メールで述べています。

【この成分は何ですか?】

ALC-0315は、Pfizer社製のCOVID-19ワクチンが細胞に送達する壊れやすいmRNA分子を遮蔽するのに役立つ脂質ナノ粒子の一部です。

「RNAワクチンは、体内に注入するだけではすぐに壊れてしまいます。 カバーで保護しなければならない」と、独ライプチヒ大学のAnnette Beck-Sickinger教授(生化学・生物有機化学)は以前、AFPに語っています。「この殻は、異なる脂質(脂肪分子)の混合物であり、その後、一種の『シャボン玉』のような小さな球を形成します。」

FDAカナダ公衆衛生庁欧州医薬品庁(EMA)のファクトシートには、ALC-0315がPfizer-BioNTech Comirnatyワクチンの成分として記載されています。

2023年2月24日撮影のスクリーンショットで、FDAのウェブサイトに掲載されている
Pfizer製COVID-19ワクチンの成分表

FDAは2月21日の電子メールでAFPに対し、次のように述べています:

  • Comirnatyの製造工程と管理は十分に特徴づけられ適格です

  • この分析手順には、ワクチンの安全性、同一性、純度、品質、効能を確認するためのテストが含まれています

Pfizer社の広報担当者はAFPに対し、特定の成分の安全性について尋ねられた際、EMAのファクトシートを指し示し、Pfizer社以外の文書についてはコメントしないと回答しました。

【Cayman Chemical社の化合物】

Cayman Chemical社の安全性データシートには、同社のALC-0315は「研究用」であり、「ヒトまたは動物用の診断または治療用ではない」と記載されています。

2023年2月16日に取得されたCayman Chemicalの安全性データシートのスクリーンショット

これに対して、カナダのマギル大学ヘルスセンターの微生物学者であるRaymond Tellier氏は、この化合物に記載されている他の成分にも注目することが重要であると述べています。

ALC-0315に加え、Cayman Chemical社の製品は、揮発性、可燃性、毒性のある化合物である95%のエタノールで構成されていることが文書に記載されています。

2023年2月23日に取得したCayman Chemical社の安全データシートの画面

Tellier氏によりますと、脂質は水溶性でない場合があるため、企業は「有機溶媒に溶かす」のだそうです。

彼は2月16日の電子メールで次のように述べています:

  • Cayman Chemical社の場合、エタノールを選択しています。

  • 一方、ワクチンの最終製剤では、エタノールはありません。

2021年、Cayman Chemical社は、学者や科学者が治療法の研究に使用する別の化合物に関する同様の誤報対処しました

「同じ名称の化学物質は、製造プロトコルや使用目的によって定義されるグレードや製剤などの指定が異なる場合があります」と同社はプレスリリースで述べています。

Tellier氏は、これは重要な違いであると述べています。

  • 同社が言っているのは、その製品が『ヒトや動物用の診断・治療用ではない』ということです。

  • その理由は、Cayman Chemical社が研究所用の試薬を製造し、研究所にのみ販売しているからに他なりません。

  • もし、診断用や治療用など他の用途に販売しようとすれば、もっと多くの規制や安全性の手続きを踏まなければなりません。

米国で医薬品有効成分を製造する企業は、ヒトや動物用としての安全性を確保するために、連邦政府の厳しいガイドラインに従わなければなりません。ドイツでワクチンを規制しているPaul-Ehrlich研究所も、実験室用と医薬品用の成分の違いをウェブサイトで取り上げています

ワクチンの誤報に関するAFPの全記録はこちらでご覧頂けます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?