改めて、米国のVAERSって何なのかを見つめ直す。

【和訳】

1990年の設立以来、CDCのVAERS(ワクチン有害事象報告システム)は、ワクチン接種後に報告されたあらゆる有害反応のデータを一般に公開しています。

COVID-19の登場以来、ワクチンの安全性を疑問視する人達から、VAERSシステムに含まれる情報が頻繁に参照されるようになりました。

VAERSのウェブサイトには、報告書に「不完全、不正確、偶然、検証不可能」な情報が含まれている可能性があるという免責事項があり、ユーザーはこれらの制限を認識する必要があります。しかし、ロイターファクトチェックが遭遇したソーシャルメディアの投稿の多くは、VAERSの報告は誰でも入力出来ること、CDCが検証するまではワクチンとの因果関係を示すものとは見做されないことに触れていません。

沿革

1990年から2001年まで、VAERSのデータは情報公開法(FOIA, www.foia.gov/ )によってのみアクセス可能でした。2001年、データはVAERSウェブサイト(vaers.hhs.gov/data.html)で公開され、その後2006年にCDC Wonder (wonder.cdc.gov/vaers.html) に移動し、現在もそこでホストされています。VAERSレポートの提出は、引き続きvaers.hss.govを経由して行われます。

CDCの広報担当者であるMartha Sharan氏は、電子メールでロイターに対し、「VAERSでは常に透明性が重視されており、その精神に基づいて、VAERSデータを最も早い段階で一般公開することが決定された」と述べています。

検証プロセス

Sharan氏によりますと、有害事象の報告がVAERSに提出されると、認定コーダーによって処理・審査されます。報告された内容に基づいてコードが付けられ、CDCとFDAが利用出来るデータベースに登録され、毎日更新されます。

各報告書には、重篤な有害事象と非重篤な有害事象のラベルが貼られます。重篤な事象とは、連邦規則(こちら)により「死亡、生命を脅かす病気、入院または入院の延長、永久障害、先天性異常、または出生異常」と定義されています。

CDCは、「重篤」と表示された報告毎に、病院記録、診療記録、死亡診断書、検死報告書などの医療記録を要求し、検討します。

VAERSスタッフは、ワクチンが有害事象を引き起こしたかどうかを判断することはありません。ワクチンの安全性に関わる潜在的な問題信号があるかどうかを判断するためには、統計的手法が用いられます。

「VAERSで安全性の懸念が検出された場合、Vaccine Safety Datalinkのようなより強固な分析システムを用いて、より詳細で定量的な分析が行われます」とSharan氏は説明します。「このような分析により、ワクチンと問題の有害事象との間に統計的に意味のある関連性が存在するかどうかを判断することが出来ます。」

ワクチンの安全性の問題が認識された場合、FDAとワクチン製造業者は、安全性の懸念に応じて、特定のロットのワクチン、製造、または、ワクチン自体の問題であるかどうか、解決策を見つけるために協力します。

FDAの広報担当者は、CDCのワクチン安全性データリンク(VSD)や臨床免疫安全性評価(CISA)プロジェクトについて、電子メールでロイターに対し、次のように述べました。「これらのシステムは、VAERSのような制限を持たず、健康リスクや有害事象とワクチンとの関連性の可能性を評価するために使用されています。」

制限事項

VAERSの透明性は、誰でも報告出来ることが重要であり、同時に限界でもあります。ロイターは、ソーシャルメディア上で広く共有された、検証されていない情報の例を数多く検証しました。例えば、Pfizer-BioNTech社のCOVID-19ワクチンの小児試験中に死亡したとされる2歳児の話(こちら)です。

Pfizer社の臨床試験には、6カ月の子供も参加していましたが、バージニア州の2歳の子供が2月25日にファイザーのCOVID-19ワクチンを接種したとされる1カ月後まで開始されておらず、この子供が接種を受けることは不可能でした。CDCの広報担当者はロイターに対し、この報告は結果的にデータベースから削除されたと電話で語りました。

ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院ワクチン安全研究所所長のDan Salmon博士は、ロイターに対し、誰でもVAERSに報告出来ることの危険性について、電子メールで語ってくれました。

「もし私がインフルエンザワクチンを接種して、犬が車にはねられたとしたら、私はそれをVAERSに報告することが出来、それは一般に利用可能なデータベースに載ってしまうだろう」とサーモン氏は言う。

このデータが誤って解釈され、医療に関する誤った情報がネット上で広く共有されるようになりました。

例えば、Fox Newsの司会者Tucker Carlsonは、2021年5月5日の放送(こちら)で、2020年12月下旬から2021年4月の間にCOVID-19ワクチンで3362人以上のアメリカ人が死亡したと発言しました。しかし、彼が言及したのはVAERSレポートであり、CDCによって検証された死亡例ではありません。

ノースウェスタン大学グローバルヘルス研究所のエグゼクティブディレクターであるRobert Leo Murphy博士は、ロイターに対し、因果関係を判断するには調査が必要であるため、ユーザーは生データの解釈に注意しなければならないと電話で述べています。

利点

ハーバード大学T.H.Chan公衆衛生大学院免疫・感染症学部の研究員であるStephen Kissler博士は、メディアコール(こちら)で、一般の人々がデータにアクセス出来ることが非常に重要であると述べています。

「これらのデータをこれほどまでに一般に公開すべきではない、或いは、これほど詳細でないほうがいいという意見もあるかもしれません。しかしながら、私はその方向に進むことを躊躇します。何故なら、人々が自分の健康または地域の健康について、データに基づいた意思決定を行えるようにすることが重要だと考えるからです。データにアクセス出来るようにすることは、本当に重要なことです」とKissler氏は述べられました。

Kissler氏は、VAERSは医学界にとって非常に有益であり、データベースから示唆されるワクチンと有害事象との関連性について研究を進めることが出来ると考えていると述べられました。

Murphy氏によりますと、VAERSは、臨床試験中に表面化しなかったり、気づかなかったりする有害事象を報告するのに役立つということです。(臨床試験は、全国的なワクチン接種キャンペーンに比べると、必然的に対象者が少なくなります。VAERSのようなシステムは、その他の潜在的な副作用を拾い上げるのに役立つのです)。

改善点

グローバルヘルス科学者のChristin Gilmer博士によると、一般市民が全てのユーザーレポートを閲覧出来ることは、このシステムの長所であり、課題でもあります。データベースへの改善点としては、情報に電子透かしを入れる、誤った情報が広まる前にそれを否定する、データにアクセスする前にユーザーにトレーニングを受けさせる、等が考えられます。

「データを見るだけで、ワクチン接種と健康影響の因果関係を表していないかもしれないという、データ使用に関する注意事項を知らない人にとっては、非常に憂慮すべきことであり、ワクチンがこれら全ての異なる種類の健康影響を引き起こしているように見えるかもしれません」と、Kissler氏は述べました。

「現在、VAERSからそのデータをダウンロードし、ワクチン接種後の副反応を調べることは可能ですが、その副反応が一般集団でどれくらいの頻度で発生しているかという文脈にはなりません。」とKissler氏は述べています。 「私はそういうことが見たいのです。」

「我々は、透明性を保つことと、VAERSレポートが、誤った情報により人々がワクチンを避ける原因となることを防ぐために、積極的に行動することのバランスを見つけなければなりません。」とGilmer氏は述べられました。

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