乳幼児への定期的なワクチン接種は、SIDS(=乳幼児突然死症候群)の可能性を減らすことはあっても、増やすことはありません。

【主張】

  • ワクチン接種基準の変更により日本ではSIDSが「消滅した」。

  • SIDSの98%がワクチン接種後10日以内に死亡している。

5月20日のInstagramの投稿(直リンクアーカイブリンク)では、小児期の定期予防接種と乳幼児突然死症候群を関連付けようとするツイートのスクリーンショットが公開されています。

「信頼のおける情報源から、SIDSによる死亡の98%は予防接種後10日以内に起きていると聞いたところです」 、「この公衆衛生データを公表しないのは良いことだよね?そうでなければ、真実を知ることになるだろう。また、日本では予防接種のスケジュールを2年遅らせたところ、SIDSがなくなったそうだよ」とツイートされています。

この投稿は1ヶ月で400回以上「いいね!」されました。元のツイートは1ヶ月で6,000回以上リツイートされました。

【評定】:誤りです

  • 専門家によりますと、定期的な予防接種によって乳幼児がSIDSで死亡する可能性が高くなることはなく、予防接種は乳幼児突然死の可能性を実際に減少させるとのことです。

  • 複数の専門家は、日本でSIDSがなくなったという証拠はないという意見で一致しています。

【レビュー】

《データが裏付ける予防接種の利点》

技術系企業家であるSteve Kirschのツイートでは、推奨される小児用ワクチンのリスクについて2つの主張がなされています。Kirschは頻繁にワクチンに関する誤った情報を発信していますが、その投稿の中で、自分の主張を裏付けるデータがないことを認め、フォロワーにこう問いかけています。「どなたか、このうちのいずれかについての参考文献をご存じありませんか?」

専門家によりますと、ワクチン接種とSIDSの間に因果関係はないことを示す証拠があるとのことです。メタ解析によりますと、ワクチン接種によってSIDSの発生率は半減する可能性があるとのことです。著者は、ワクチンは少なくともSIDSの原因にはならないと述べています。

「ワクチンについては何度か調査されていますが、関連性は示されていません」と、コロラド小児科病院コロラド小児科実践ベース研究ネットワークのディレクターであるSean O'Leary博士は述べています。

O'Leary博士によりますと、SIDSの危険因子としては、うつぶせ寝、寝具の緩み、母親の飲酒、乳児の周囲での喫煙などがあるとのことです。

フィラデルフィア小児病院のワクチン教育センター長であるPaul Offit博士によりますと、ワクチン接種のスケジュールは生後4ヶ月から6ヶ月の間に有効ですが、SIDSの多くはワクチン接種の有無に関わらず生後6ヶ月までに起こります。

Substackの投稿で、彼はツイートへの返信で、 Kirsch氏はワクチン接種とSIDSの因果関係を示すと主張するワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System)のデータを指摘したことに言及しました。Offit 氏は、VAERS報告は検証されておらず、誰でも作成することの出来る逸話的な主張であるため、因果関係を証明するために使用することは出来ないと指摘しました。

同データベースのウェブサイトには、一般市民を含む誰でも報告書を提出出来ると書かれており、免責事項として次のような記載があります:

  • VAERS報告書には、不完全、不正確、偶然、または検証不可能な情報が含まれている可能性があります。

  • VAERSへの報告には偏りがある可能性もあります。

  • その結果、データを科学的に利用するには限界があります。

Offit博士, O'Leary博士、そしてバージニア大学ヘルスシステム国際家庭医療クリニック院長のFern Hauck博士は、それぞれ日本小児科学会が発表した予防接種の推奨スケジュールを見て、それが米国のスケジュールと大きく異なるものではないことに同意しました。日本が予防接種を後退させたという証拠も、投稿が主張するようにSIDSをなくしたという証拠も見つかりませんでした。

SIDS死亡率の比較を難しくしている問題の一つは、各国間(或いは各国内)において、死亡の追跡方法に一貫性がないことである、というのが医師達の一致した意見でした。2015年の研究では、乳幼児の原因不明の突然死を追跡するために使用可能な国際疾病分類コード(International Classification of Diseases-10)が3つあり、その使用方法は国によって異なることを指摘しています。例えば、日本では2002年から2010年の間に起きた死亡の32.6%がSIDS(R95)として分類されています。しかしながら、原因不明の乳幼児突然死(R96)のコードを定期的に使用しているのは日本だけであり、そのような死亡の44.8%にこのコードが付けられていました。

SIDSに使われる可能性のある全てのコードを合計すると、米国と日本の死亡率はかなり近くなる、とHauck博士は述べています。

「そのため、医師や国によってコードの解釈が異なったり、コードの使い方が異なったりするのです」とHauck博士は述べ、コードの定義を改訂し、標準化する努力がなされていると付け加えています。

USA TODAYはKirchとこの投稿をシェアしたソーシャルメディア・ユーザーにコメントを求めましたが、回答は得られませんでした。

【参考とした情報源】

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