パンデミック・ロックダウンと神経炎症に関する研究結果を誤記した投稿

【主張】

  • COVID-19によるロックダウンは、1億人以上のアメリカ人に「深刻なブレイン・フォグ」を引き起こした。

8月7日付のInstagramの投稿(直リンク<⇦削除済、アーカイブリンク)には、COVID-19の研究に関するボストンのテレビ局のニュース記事のクリップが掲載されています。

「ロックダウンは1億人以上のアメリカ人に深刻なブレイン・フォグを引き起こした」と動画の上部に記載されています。

この動画は2日間で2,000以上の「いいね!」を獲得しました。

【評定:誤り】

  • このクリップで言及されている研究では、自宅待機命令が発令される前と後の数十人のボランティアの脳の炎症を示すいくつかの化学的マーカーを追跡しています。

  • COVID-19による緩和措置が、全米の数百万人はおろか、研究参加者にブレイン・フォグを引き起こしたとはどこにも書かれていません。

我々の研究に対する馬鹿げた解釈

この投稿には、2022年2月にNBC10が放映したマサチューセッツ総合病院の研究者が主導した研究結果を説明する記事のクリップが含まれています。

この研究では、パンデミック関連のロックダウンが実施される前と後の脳の炎症の指標を追跡しました。この研究では、72人のボランティアの体内のいくつかの化学物質のレベルを測定しました。

その小さなサンプルの脳の炎症を示す可能性のある化学物質の変化が、パンデミック規制が何百万人ものアメリカ人にブレイン・フォッグを引き起こしたことを意味するとは、この研究のどこにも書かれていません。

投稿のキャプションには、読み手に、ブレイン・フォグと戦い、記憶力と精神的パフォーマンスを向上させると主張するサプリメントを販売するウェブサイトを紹介しています。

「率直に言って、我々の研究に対する荒唐無稽な解釈です」、と、この研究の上席著者であり、ハーバード大学医学部の放射線学准教授であるMarco Loggia博士は、USA TODAYへの電子メールで語っています。

他の研究では、特に長期のCOVID-19を患っている人の脳の炎症がブレイン・フォグに関係している可能性があることが判明しています。マサチューセッツ総合病院の研究では、ウイルスに感染していない人々の脳画像と血液サンプルから神経炎症の化学的マーカーを探索したものです。

自宅待機命令が出る前の57人と、出た後の15人を検査しました。研究者らは、脳内の2つの化学的マーカーが、自宅待機が開始される前よりも開始後の方が高いことを発見しました。また、血液中の2つのマーカーも上昇したが、その程度は低いものでした。

この研究では、ロックダウンのせいだとは断定していません。

「この炎症反応の具体的な原因はわかりません。また、ロックダウンそのものが主な原因であるとは言っていませんし、それを示唆する具体的な情報もありません」とLoggia氏は語っています。

この研究では、神経炎症とこの報告で観察された症状との関連について、「より大規模な研究で、追加の行動評価によって検証する必要がある」と述べています。

具体的な例としては、ブレイン・フォグや精神疲労の有無が挙げられています。

他の研究では、慢性的なストレスが神経炎症を引き起こす可能性があることが判明しています。

「我々は、パンデミックそのものに対するストレス反応ではないかと考えている」、と述べ、この結果は 「特に予期せぬ発見ではない」とのことでした。

「ロックダウンが人々のストレスレベルを高め、それが一部の人々の神経炎症に繋がったのかもしれない」、と彼は述べ、更に、「しかしながら、COVID-19感染によって引き起こされた炎症は、恐らくもっと深刻なものであっただろう」、と彼は述べています。

ロックダウンやその他の緩和措置は、「遥かに悪い結果から我々を守ってくれた可能性が高い」、とLoggia氏は述べました。

USA TODAYはこの投稿を共有したユーザーにコメントを求めましたが、返答はありませんでした。

【参考文献】

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