ウクライナにおいてPfizer社による致死的臨床試験が実施された形跡はありません。

出典:Logically Factsよりデマである旨を知らせる画像が付加修正されたスクリーンショット

【Fact Check結果の評定:デマです】

  • Anna SakhnoがPfizer社で働いていたという証拠がありません。

  • Pfizer社は現在、ウクライナで臨床試験は実施しておりません。

【Claim ID 9003b8de】

SNS上に出回った投稿では、Pfizer社のワクチン実験で40人の子供が死亡したと虚偽の主張をしています。その主張は、「実験と子供の死亡の事実を確認したとされる録画映像と文書が、Pfizer社キエフ事務所の従業員であるAnna Sakhnoによって公開された」というものです。

この投稿は、《Chicago Chronicle紙》に同日掲載された記事にリンクしており、キエフのPfizer社員Anna Sakhnoが最近、Pfizer社員と保健省関係者しか知らない、同社が実施中の極秘臨床試験を暴露したと主張しています。この疑惑の臨床試験は、医学的・倫理的基準に対する重大な違反があり、40人以上のウクライナの子供が死亡し、数人の入院患者が発生しました。Pfizer社は保健省のデータに直接アクセスすることが出来、キエフの複数の病院の使用も許可されたと言われており、同社とウクライナの医療制度との間に深く入り込んだ関係を示しています。Sakhnoは自身のTikTokチャンネルでこの実験を暴露したと言われています。

しかしながら、現在《Chicago Chronicle紙》という新聞はなく、ウェブサイトは現在ダウンしてしまっています。Pfizer社によりますと、Anna Sakhnoという人物が同社で働いていたことはないとのことです。

【真相は…】

Logically FactsはAnna SakhnoのTikTokアカウントを見つけることが出来ませんでした。《Chicago Chronicle紙》の記事にリンクされているYouTubeの動画も、もはや有効ではありません。動画の冒頭のスクリーンショットを使って、別のYouTubeアカウントにてその動画のコピーと思われるものが公開されているのを見つけ出しました。

映像の中で、Anna Sakhnoと名乗る人物は、キエフにあるPfizer社の研究所の上級科学助手であると主張しています。彼女は、Pfizer社は通常厳格な国際基準に従っていますが、現在進行中の臨床試験は2023年12月に開始され、キエフの病院で患者や看護師に知られることなくインフルエンザワクチンと言われるものが投与されました、と述べています。Sakhnoは、それがC6160bと呼ばれる小児用の実験的なCOVID-19ワクチンであったと主張しています。何人かの患者が胸痛と発熱を経験し、死亡率は4%、入院率は2%であったにも関わらず、Pfizer社は2回目の実験を行い、現在3回目の実験中だということです。この疑惑の実験は、ゼレンスキー大統領の知るところで実施されました。最後にSakhnoは、ウクライナが違法な医療実験の実験場になるのを見るのは耐えられないと語って締めくくられています。

Pfizer社の担当者はLogically Factsの取材に対し、映像に登場する人物はPfizer社の従業員ではないこと、映像に登場する「子供用ワクチン」は虚偽であることを明らかにしました。

担当者はまた、Pfizer社はキエフで研究活動を行なっていないことを述べ、次のように補足しました: 「ウクライナにおける当社の臨床試験についてですが、患者の安全のため、紛争が始まった時点で、臨床試験プログラムへの新規参加者の募集を一時停止するという必要な決定を下しました。同時に、現在進行中の複数年にわたる臨床試験に積極的に参加している患者については、治療の継続性を維持することに重点を置いています」

ウクライナのファクトチェッカーであるStop FakeはPfizer社のヨーロッパ支社にも問い合わせを行ないましたが、同社はAnna Sakhnoという人物が同社で働いていることを否定し、キエフ支社では現在いかなる研究も行なわれていないことを再確認しました。また、世界中の臨床試験の検索可能なライブラリーがある米国国立医学図書館には、ウクライナで進行中の研究への言及はないと補足しています。

Logically Factsは、C6160bと呼ばれるワクチンの証拠を他のどこにも見つけられませんでした。

《Chicago Chronicle紙》は1895年に創刊された新聞で、財政難のため1907年5月に休刊しています。そのウェブサイトは現在停止されています。Logically Factsがアーカイブ検索を行なったところ、2024年1月と2月のみ活動していたことが判明しました。アーカイブ版には編集者の名前はなく、「会社概要」のセクションは空欄となっています。

同様の主張は、最近ロシアのウクライナ侵攻を正当化するための大規模なロシアの偽情報キャンペーンの一環として名指しされたPravda-enでもなされています。Computing によりますと、このウェブサイトはロシアのサーバーでホスティングされています。

この主張は、ウクライナのバイオ研究所に関するロシアの偽情報記事にリンクしています。これらには、米軍がウクライナで人体実験を実施しているという主張や、医療企業のPfizer社とModernaが米国の「軍事生物学プログラム」に関与しているという主張が含まれています。

しかしながら、ウクライナに他国の研究所はありません。研究所は、生物兵器の開発に使用される可能性のある技術、病原体、知識の拡散を防ぐために、2005年にウクライナとアメリカの間で結ばれた条約に基づいて設立されました。Vox Ukraineによりますと、公開されている協定には「軍事生物プログラム」については触れられていません。研究所はウクライナの資金で運営されており、ウクライナ保健省の管轄下にあります。

更に、この主張は、Pfizer社のCOVID-19ワクチンの死亡率が高いという虚偽のシナリオにリンクしています。Logically Factsは以前、ワクチン死亡に関するいくつかの同様の主張をファクトチェックし、虚偽であることを明らかにしています。

【評定】

  • この主張の唯一の情報源は、Anna Sakhnoと名乗る人物による映像のみです。

  • この名前の人物がPfizer社で働いたことがあるという事実はありません。

  • Pfizer社はウクライナで研究活動を行なっておりません。

  • 従って、この主張をデマだと見做しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?